星のゆくえ

人と人とは分かり合えないという分断や対立があっても、それでも関わろうとする、その狭間に優しさは息づいている。
あなたの体験はあなたのもので私に共感は出来ても体感は出来ない。あなたの心で見聞きしたものはとてもかけがえのないものであなただけの大切な記憶だ。


もうすぐ夜が最も長くなる日。冬の夜が冷たく寂しい色を湛えていても、それを照らす星の光や暖かな灯火がすぐそばにあるかもしれない。あたたかさで、冬の成分が溶け出して広がっていく。
後悔する夜はありますか。ああしておけばよかった、伝えておけばよかった、そんな祈りのような想いを抱えている?いつ消えゆくかわからないこの宇宙に存在する矮小な身体。消えてしまいたいと願うときがあっても、彼ら、もしくは私たちはその後の世界について考えない。残るのはきっと今以上の孤独と静寂だ。であれば、痛みや苦しみに囚われていたとしても、生きてほしい、と個人的には思う。お前になにがわかるのか、と言われるかもしれないが、個人の与える影響……暖かさや優しさの記憶の交換…それによる救済の結果、というものは果てしなく、当人が思っているよりも大きいのだ。


真夜中の海に光の粒が粒立って反射している。星の光が落下してなだらかな波に泳いでいる。光は掴もうとしても指の間から水と一緒にするすると溢れていく。星は遥か遠くにいる、神様がばら撒くものだから人間のものにはなり得ない。流れ星になって地上に落ちる途中でただの石礫になる。空に散りばめられている間だけ宝石でいることが出来る。真実に美しいものは人間の手には入らない。星を標本にして、窓辺に飾ろうとしてもそれは叶わない。

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