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HAKEN / Fauna 【音楽レビュー】

  1. Taurus

  2. Nightingale

  3. The Alphabet of Me

  4. Sempiternal Beings

  5. Beneath the White Rainbow

  6. Island in the Clouds

  7. Lovebite

  8. Elephants Never Forget

  9. Eyes of Ebony


UK産プログレッシヴメタル、2023年リリースの7thアルバム。

 本作で初めて聴いたバンド。2007年から活動しているようで、存在自体はぼんやり知っていけど、プログレッシヴメタルというジャンル自体が自分にはそこまで刺さらないジャンルなので、YouTubeでたまたまMVを見ることがなければ、本作もたぶんスルーしていたと思う。
 印象としてはLEPROUSに近いかな?と思ったけど、HAKENのほうが歌メロが圧倒的にキャッチーで、最近のLEPROUSよりもヘヴィなところはしっかりヘヴィでメリハリが効いているのと、全体的により明るい雰囲気に包まれているように感じた。
Vo.は完全にクリーンオンリーでデス声は皆無、演奏もエクストリームメタル系の要素はほぼ無いので、個人的な好みからすると静動の落差的な面で物足りなさがあるというのが正直なところだったが、メロの良さと爽やかさ、ソリッドかつヘヴィなリフ、モダンでスタイリッシュな感じ、プログレッシヴ系にしては比較的コンパクトにまとまった楽曲、これらが相まって、全曲さらりと聴けただけでなく、聴くほどに気に入ってきた!
曲ごとに、自分が好きな他のバンドを彷彿とさせるところがあったことも、馴染みやすかった要因だと思う。

メンバーは、
Ross Jennings … Vo.
Richard Henshall … Gt.
Charles Griffiths … Gt.
Conner Green … Ba.
Ray Hearne … Ds.
Peter Jones … Key.

RossRichardRayの3人はバンド創設時(2007年)からのメンバーで、Charlesも1stアルバム時には在籍していたということでほぼそれに近い。Peterは創設メンバーであったもののすぐに脱退し2022年に復帰してアルバムとしては初参加。Connerは2014年に加入して4thアルバム以降ベーシストを務めている。
総じて、メンバーの入れ替わりが少ないバンドで、そのあたりも好印象。

左)Peter、Conner、Ross、Richard、Charles、Ray

1.Taurus
異常を知らせる警報音のようにも聞こえるギターによって混沌とした印象を与えるイントロ、しかしRossの歌が始まると緊迫感は掻き消えて、穏やかな雰囲気に一変!サビの歌メロは、大空を舞っているかのような伸びやかさと爽やかさに満ちて、非常に心地が良い。ヘヴィでダークな2:30頃~からの間奏部分とのギャップもまた良い!

2. Nightingale
本作の1年近くも前にリリースされた最初のシングル曲。場面ごとに異なった情景を見せる変幻自在で色とりどりなキーボードの鮮やかさ、そしてHAKENのアグレッシヴな面がもっとも効果的に発揮されている曲だと感じた。

3. The Alphabet of Me
1:40頃まではメタル感ゼロで、普通にポップチャートにランクインしてそうなオシャレさとキャッチーさ。その後も、ヘヴィな要素はサビで顔を出す程度で、「ウォーオーオー」みたいなコーラスがあったり、終盤はゲスト奏者によるトランペットを入れてきたりと、ゆったりと落ち着いた雰囲気が支配的。MVの白い衣装が最終的に血塗れになるようなデスメタル的な演出は、もちろん無い。

4. Sempiternal Beings
オシャレなドラムに、祈っているようにも許しを乞うているようにも聞こえる、切なげなVo.が乗る。約8分と長めの曲で、静と動が交互にやってくる構成。一聴するだけでもしっかり耳に残る歌メロのセンスの良さはさすが!ヘヴィなパートはどことなくTHE OCEANぽいと感じた。

5. Beneath the White Rainbow
こちらも、特徴的なリズムのイントロを始め、ヘヴィパートはTHE OCEAN、他の部分ではDREAM THEATERを想起することが多かった。爽やかかつ情感のこもったサビの歌メロは感動的でかなり良い。いかにもプログレっぽいフレーズから成る凝った展開の中盤を挟んで、ラストのサビから特徴的なイントロフレーズに戻って締めるのもガチッと決まった感じがして気持ち良い!

6. Island in the Clouds
どことなく、昔よく聴いていたヘヴィロックDARWIN'S WAITING ROOMの名曲”Feel So Stupid"ぽさがあって(さすがにラップは無いけど)、懐かしさを覚えた。序盤は全体的には地味めだが、サビは相変わらず伸びやかで綺麗なメロ。Djentチックなヘヴィな側面が顔を出し徐々に盛り上がりを見せ、ラストの締め方はプログレッシヴメタル然としたソリッドなフレーズでかっこええ~。

7. Lovebite
バレンタインデーに発表されたシングル曲。まず、イントロのフレーズがLANTLOSのアルバム『Wildhund』の曲かと思った。サビのちょっと夢見心地な気持ち良い感じも似ている。やはりメロが最高で、終盤のギターソロからラストサビへの流れは特に、大きな愛に包まれるかのような幸福感と同時に胸を締め付けられる切なさがあって、本作中で一番好きかもしれない。
しかし歌詞はCANNIBAL CORPSEにインスパイアされたものということで、MVはまさかのデスメタル風!

8. Elephants Never Forget
本作中、最長の11分超え。ジャケアートと曲名からしても、ハイライト的な曲であることは間違いないであろう。ちょっと陽気な雰囲気の冒頭に続いて、舞台の幕開けのような仰々しさのある重厚なイントロ、そしておどけたような奇抜さのある歌い出しもミュージカルのよう。長尺曲なりに展開も歌い方も豊富で、ヘヴィになったり落ち着いたり。突如また舞台感の強い展開が始まる8:00頃の前後は特にBETWEEN THE BURIED AND MEを彷彿とさせる。サビのメロは安定のHAKEN節。

9. Eyes of Ebony
ゆったりとした日曜日の朝にオシャレな人が聴いていそうな雰囲気で始まり、Rossが優しく歌いかける本作のラスト曲は、ギターのRichardの亡くなった父に捧げる曲だそう。しかし悲しみ一辺倒といった趣ではなく、サビなどはむしろどこか前向きな力強さを感じさせ、要所にヘヴィなパートも配置している。本作は全曲、なにがしかの生物をテーマに据えているらしいが、この曲は絶滅の危機に瀕するシロサイ。言われてみれば、ギターがサイの鳴き声のように聞こえる部分がある。



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