マガジン

  • スカラベテーブル

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  • こちらの窓からは、

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    ところどこかに変わっても、窓は必ず、あると思うのです。物理的な窓じゃなくても、映画も本も音楽も、自分の小窓であると思うのです。 ささやくように、つぶやくように、手紙を書くように、こちらの景色を、書こうと思います。 そちらの窓からは、何がみえますか。何が聞こえますか。どんな匂いが、するんでしょう。 ささやくように、つぶやくように、そうして手紙を書くように、風が向いたら教えてください。 拝啓 こちらの窓からは、

最近の記事

0502 歯医者さんが嫌すぎる

好きな場所はたくさんあるが、 苦手な場所の断トツ1位は歯医者である。 最近、ふと甘いものがしみることに気づいてしまい、実に2年ぶりに重い腰をあげて歯医者に行った。複数の虫歯が発見された。ショック。通わねばならない。 なすすべなく診察台に寝転がり、永遠にも思われる治療の気を紛らわすべく、なぜそんなに歯医者が嫌なのか、これを機に言語化してみることにした。 ①歯医者さんに対する恐怖 治療の際、まっさきに想像するのは、 “このドリル、喉にささったらどうしよう”ということだ。大小

    • 0425

      仕事をやめて、古民家に住み始めた。 築100年の母屋に、日本式の庭園。 小さな紅葉の木と、大きな八重桜が隣り合う。 人が歩けば、ぎしぎしときしむ。 家の裏には、柑橘系の果物がある。名前は知らない。キッチンの窓から覗く、ふくらんだオレンジ色。酸味が強すぎて誰にも食べられることのないまま、ぽたり、ぼたりと重たげに実を落とす。 雨の日は、心地よい雨音をきく。 窓をしめきった部屋できく。雨粒が屋根をたたいて、くぐもったような、柔らかな音がする。 そういえば、ここ数年雨音をきいて

      • タンタンと 【最後のお別れの日のこと】

        5年ぶりに会ったおばあちゃんは 小さくて冷たくて柔らかかった 「お化粧好きな方でしたか」 葬儀場のお姉さんはタンタンと、眉毛をかいた 曲がったまま固まった膝の つま先の親指の 生えかかった爪 生きてる途中で死んだのだ 母と私はタンタンと、白い足袋を履かせた ストレッチャーにのせられて 冷たかったおばあちゃんは 骨だけのおばあちゃんになった 「熱いので私が集めさせていただきます」 火葬場のおじさんはタンタンと、骨を拾った 帰ってきたおばあちゃんは 実家の片隅に置かれた 白

        • はなみず

          はなみずがでる。 風邪をひいているわけではない。 同じ症状の方がいても、 おそらく状況はことなる。 ことなる、という音はかわいい。 さえずることり、とも似ているし、 静寂のなかでおかれる積み木の音 も、ことり。と響きそうだ。 どちらでもよいようなことを書きながら、 はなみずをすする。 ずびり。 この症状がでるのは、きまって 書いている時である。 ずびり。 何だかよいものが書けそうな予感がする時、 鼻の奥がツンとする。 そのままおさまる時もあるし、 ずびずびとはなみずかとま

        0502 歯医者さんが嫌すぎる

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        記事

          生まれなおすように、

          “これ、”と言えるようになる “2こ”がわかるようになる “話せるの”ってきかれたから “少しね”って応える 生まれなおすように、 新しい言葉を食んでみる 耳が少しずつ、 土地の音をひろいあげる 足はひとりでに、 市場への道をおぼえる 慣れるから馴染むへ ハイハイとすすむ 寝がえりをうつように ただよう色々をまきつける ときどき、どきどき、 頭の天地をぐるりとまわして 知らないような 知ってるような わたしに生まれる、をみている

          生まれなおすように、

          ふわり、とはじまる朝がある。

          ようやくベッドからぬけだしたら、朝がバタバタと始まる。 着替えて、顔を洗って、 朝ごはんを食べて、歯磨きをして、 化粧して、コートを羽織って、かばんをつかんで、 バスに乗り遅れないように、飛び出して。 そんな風に日々に流されているとき、ふと、思いだす景色がある。 卒業旅行でトルコに行った。 朝に飛ぶ気球が美しいときいて、カッパドキアを最初の目的地に選んだ。 まだ夜も明けきらないうちから、のそのそと起きだす。 ホテルのスタッフさんたちはすでに朝食の準備をしていた。 ナンと、チ

          ふわり、とはじまる朝がある。

          チャンスに真剣に。#企画メシ第5回

          チームの企画。 誰かと何かをすることにずっと苦手意識があって、少々後ろ向きな気持ちもあった。 自分がいる意味って何かあるんだっけ、でも何か貢献したい、憧れと嫉妬と焦りを内側にぐるぐるさせては押しこめて、気づいたら終わっていたような感覚だった。 もやもやしたまま迎えた講義でもらった阿部さんの言葉はやさしく、 でも確実に今も、私の中に、ささっている。 講義でメモした言葉をベースに、学びと反省の記録を残そうと思う。 最初の企画から、私は真剣だったんだっけ。 あれが自分の120%

          チャンスに真剣に。#企画メシ第5回

          記憶の海と水玉のワンピース

          町田その子さんの、『星を掬う』を読んだ。 あらすじはこちら。 大いにネタバレを含むのだけれど、この母・聖子が若年性認知症を患っている。 千鶴と過ごす中でも、聖子の記憶はどんどんと曖昧になっていく。 そして時々、記憶の海から星を掬いあげるように、ぽつりと思い出を話す。 千鶴の母の話を読みながら、私はずっと、祖母のことを思い出していた。 母方の祖母は、認知症である。 一時期一緒に住んでいたのだが、その時から何度も、幼いころの、中国で過ごした記憶を語っていた。 「中国ではね、

          記憶の海と水玉のワンピース

          ほね

          小さなねずみの気持ちになる プテラノドンを見あげている あんなにおっきい羽の下で 影に入りゆくわたし ばりばりぽりぽりかりかりと とけてなくなる、ほねとほね 小さなねずみを見おろしている ぴちぱちとくちばしを鳴らす おなかがすいた、と思っている プテラノドンになった、わたし

          言葉で彫りこむ。#企画メシ第三回

          はじまりのてさぐり 「日々もやもやすること」 「変えていきたいこと」 「変える余地があると思うこと」 「未来に残したくないこと」 そんなフィルターをかけて自分のなかをてさぐりすれば、 「なんとかしたい」は、どくどくとあふれてきた。 このきもちを、どう、企画にしよう。 たしかに動機はあるはずなのに、 企画にしようとした途端、筆がとまってしまう。 これでいいのかな、と毎度の不安を抱えて、えいや、と提出した。 彫りこむ 講義の中の阿部さんのことばに、はっとする。 自分の内側

          言葉で彫りこむ。#企画メシ第三回

          「すきま」から。#企画メシ第二回

          「ドッキリ」を考える そんなお題をもらった瞬間から、投げ出したくなっていた。 テレビはみない。youtubeもみない。寝起きドッキリ、とか、穴に落ちるやつ?という程度の、ぼんやりとしたイメージ。 「大井洋一さん」という人を自分なりに調べて、それでも出ない「こたえ」に頭を抱え、締め切りギリギリまで悩んで、どうにか絞り出した企画書一枚。不安とわくわくを行ったり来たりしながら、当日を待つ。 以下、その時提出したドッキリ企画書。 「すきま」に思う 当日。「ドッキリ」に対する阿

          「すきま」から。#企画メシ第二回

          背景を、拝啓に。#企画メシ第1回

          「企画メシ2022」という講座に参加している。 6月25日、第1回。1分1秒がこぼれてしまわないうちに、書き留める。 事前課題は「自分の広告」を作ること。 「自分は何をもっているか」ポケット中を探して、絨毯の上に広げて、 ああでもない、こうでもない、と、ころころころがして、 最終的に全部が始まって全部が還るような、私の名前を広告にした。 講座のメモを見返している。 Story, なぜ、理由、人間味。 私が怖くてだせないものに、ぐりぐりとオレンジのペン。 企画書にもっと、乗

          背景を、拝啓に。#企画メシ第1回

          雨、 が、 ふっ、  ていま、 す、 く、 もが、 おちて、 き、 ます、 ビル、 はもう、 み、 えま、 せん、 しかい、 が、 しろ、 くけ、 ぶり、 雨、 のま、 えで、 みな、 おな、 じく、 かさ、 もな、 いま、 まに、 ただ、 おと、 なし、 くし、 てい、 ます、 句読点、の雨らしさ、に惹かれて、

          平行線は、たかく。

          平行線が、かさなり、 だれかの寝息と だれかのささやき声と だれかのアラームと だれかの足音と だれかのすすり泣きと だれかの吸いこんだ驚きと だれかの、 だれかが見ているテレビと だれかが聞いているラジオと だれかがつくっている目玉焼きと だれかが歌う鼻歌と だれかが干している洗濯物と だれかが口にしたおはよう、と だれかが、 平行線はまじわらぬまま にょきりにょきりと かさなって、 そうして都会が、 できているみたい 夜、香港の夜景をみあげて、ふと。

          平行線は、たかく。

          春を散らして

          大きな木陰の下にいた あとからあとから 人がきて とどまりたければとどまって あるきたければあるきだす 互いの色を分けあえば、 思いがけない絵になった 互いの時間を交換すれば、 それを”たいせつ”と呼びたくなった ある人はポケットに、 ある人はかばんに、 ある人は眼鏡入れに、 ある人は木の葉の裏に、 ある人はコーヒーカップの底に、 ある人は罫線の上に、 ある人は本の隙間に、 なくさないようにそっと、 “たいせつ”をしまって、 いつかは木陰をはなれてゆく あるきだす日は

          春を散らして

          ふわり、おわり、の音。

          羽がふわりと、落ちるようだと思う。 何かが終わっていくときの、静かで、もどらずに、そうしていつか風に流されてしまうような、時間のこと。 旅立つ側に立つ。 1日1日と、何ものでもない、しかしそこにある何かが、 確実にひとつ、抜け落ちて、なくなっていく。 羽をぬいて、機をおるような痛みは、じわりじわりと、 実感のないままに、皮膚の下に広がって、鼻の奥を抜けて、 そうしてどこに、いくのだろうか。 羽がおちる。 ふわり、とさえずる、沈黙の音。 一枚、一枚、ふわり、

          ふわり、おわり、の音。