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【詩の森】627 亡国の思想

亡国の思想
 
権威主義の社会とは
見上げ・見下す縦型の社会のことです
ですから総理大臣と庶民は
普通は友達にはなれません
それは先生と生徒が友達でないのと
同じことです
総理大臣と友達になれるのは
見下げる側の人たちです
それが嵩じると
権力の私物化といって
友達や近親者のために政治が行われたり
明らかに嘘だと分かっているのに
「総理の私が嘘を吐くはずがない」
なとど宣わったりします
 
これを文字通り権威的に記せば
「こともあろうに、日本国内閣総理大臣たる
重責を担うわたくしが、嘘を吐くことなど
あろう筈もございません」とでもなるでしょう
これらの言葉は
それでも尚権威を信じる人たちに向かって
発せられているのです
権威を信奉する人々が権威主義社会を支えています
彼らを未来永劫信じさせておくために
先生は間違ってはいけないのです
政府が間違ってはいけないのです
間違いを認めない――それが権威主義の掟です
だから政府は国策を反省することも
ましてや責任をとることも殆どないのです
 
福島第一原発事故の責任を
東電も政府未だにとってはいません
それどころか
子供達の甲状腺癌は原発事故が原因ではないと
言い張って憚らないのです
それなら何が原因か調査すべきではないでしょうか
日本国の子供達が
あれ程苦しんでいるのですから-――
見下げる側にいる人は
自分を過大評価し尊大になります
いっぽう見上げる側の人は
自分を過小評価し自己卑下してしまうのです
単なる学力という
学校が貼ったレッテルだけで―――
 
権威主義社会は
『はずだ』で動く社会です
現実と噛み合わないのは賃金でしょう
大卒より高卒は仕事ができないはずだ
正規より非正規は仕事ができないはずだ
だから大卒や正規より
賃金が低くて当然のはずだ
その当然を肯っているのは
過小評価し自己卑下し価値がないと思い込んだ
(思い込まされた)大勢の人々です
エリートはたった数%―――
人を評価しているのは権威の物差しです
この日本で開花することなく葬られた才能が
どれほどあることでしょう
 
事実を認めず
現実逃避しているだけでは
有効な対応策が生まれる道理がありません
2011年3月11日16時36分に出された
原子力緊急事態宣言の収束こそ
日本が何をおいても取り組むべき
最重要課題ではないでしょうか
過ちを認めそれに対処するのでなければ
賢くなりようがありません
武力増強と騒いでいる間に
頭脳で他国に侵略され敗北するかもしれません
権威主義は
人々の能力を殺ぎ落とす
亡国の思想ではないでしょうか
 
2024.4.20

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