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安寧を夢見て眠ろう 【MODE MOOD MODE SENTENCE】

MODE MOOD MODE SENTENCE」4日目を担当させていただく栗花落(つゆり)と申します。普段は絵を描いたり変にキモオタク的だったり思想的だったりするツイートをしたりなど。

素敵な企画に参加させていただき光栄です。

参加を快諾してくださった主催者のナツさん、そして記事を読んでくださる皆さまに最大級の賛辞を。

他の参加者様の記事はこちらから。


あなたの夢はなんですか。

将来の夢はなんですか。

今やっていることは夢を叶えるためですか。


夢を持っていますか。

それは輝いているでしょうか。

誰のための夢でしょうか。






夢を夢として認識するには、現実へ戻ってきてからでないと出来ない。

辛く厳しい現実があるからこそ甘くて優しい夢というものが存在することが出来る。



では、どちらかが欠けている状態は「夢」と「現実」のどちらであるだろうか。





【静謐】せい・ひつ
静かで安らかなこと。世の中が穏やかに治まること。





穏やかでありながら仰々しくも見えるその8文字_静謐甘美秋暮抒情_は、その名前のインパクトとは裏腹にひねくれた曲のように聴こえた。




幕間日を挟んだ #MMM_SENTENCE 4日目の曲は「静謐甘美秋暮抒情」。

1日目の記事でも書かれていた通り、この曲はシングル曲との間に挟まれている、いわば口直しのような存在としてそこにある。

曲中で度々語られるように、シングル曲という夢から覚めて一旦現実へと私達を引き戻す役割があるように思える。そしてまたシングル曲という夢へと落ちていく。





言うなればこの曲は「現実」だ。

シングル曲という世間から脚光を浴びてきらめいている夢から、そんなに甘いものではないと嫌でも目を覚まさせてくる。

それなのに穏やかなギターの音色と揺らめくようなベースの単音、それに呼応するように普段の彼らの曲よりも小さく細かく、そして優しく刻まれるドラムの音は、まるで夢の中のようにあやふやで地に足がついていないような感覚になる。



夢に囚われているのか。

それとも甘い夢だと思っていた方こそが現実で、自分を厳しく律する方が夢なのか。








清濁併せ呑む


昼、東京の清濁に不安を左右されては
「満たされないんです」

「清濁」という言葉を使った慣用句で、「清濁併せ吞む」というものがある。


心が広く、善でも悪でも分け隔てなく受け入れる度量の大きいことの例えであり、東京という大きな街を表すのに十分すぎる意味だと私は捉える。

人口が多く、その中には善人も悪人も大勢いるのにそれを是とも非ともせず暮らしていけるような場所だと、しかしそんな曖昧な場所では満たされないんだと、そう歌っているように感じた。








秋の日は釣瓶落とし


「秋の日は釣瓶落とし」、「秋の夜長」など、秋は何かと夜にフォーカスを当てられることが多い。


確かに秋の昼間は夏と同じ気分で過ごしていても急に夕方から暗く寒くなっていったり、やたらと夜空の黒が濃いような気がする。

中秋の名月も秋であるから、かの有名な枕草子では「秋は夕暮れ」と謳われていてもやはり秋は夜のイメージを持たれることが多いのだろう。

この曲にも夜を彷彿とさせるフレーズがある。

静謐甘美な目覚めのその後で

秋の夜長をまさに堪能して、穏やかで耽美な目覚めを迎えるべく眠りにつこうとしているこのフレーズがサビの最後に置かれているのも夜の始まりを思わせる。


この曲の前半で語られた、世界に対しての穿った見方を眠ることで取り除こうとしているように聴こえた。

「満たされない心」も、「笑っているように見えたタクシーのヘッドライト」も、どれもが他の人は感じていることのないもので、過敏になってしまった自分が明日こそは人の波に溶け込めるよう願って眠りにつくのか。それとも清濁でぐちゃぐちゃになった世界が平和になっていることを祈って眠りにつくのか。








秋は果たして色鮮やかだろうか


秋は何かと色鮮やかに語られるイメージがある。

それは木々が赤や黄色に色づいたり、夕暮れの赤がやけに映えたり、高く広がる空が澄んだ青であったりと視覚情報が多いからだろうけれど、この曲で聴く秋はほとんど鮮やかなイメージがない。

むしろモノクロ写真やセピア色に褪せた写真と言ってもいいくらい。



とても鮮やかとは言えない秋を過ごしているこの曲が少しでも色づいた景色を見るために眠るのだとすれば、「静謐甘美」な夢を見て目覚めるまでがひとときの安息なのかもしれない。

夢で心を落ち着かせられる、と言えばコストパフォーマンスが良いように聞こえてしまうけれど、裏を返せば夢の中でしか心安らぐ場所がないということになってしまう。



変わりやすい天気のせいで雨に降られて憂鬱になったり、それを表に出せば何かの真似のように見えてしまう気がしたり、自分だけ取り残されてしまったような気持ちになったり。

それでも、最後に起こることを予想できてしまう人生ならば価値などないと強がりを言い張って、それも意味がないと知ってまた眠りにつく。








静謐甘美な目覚めのその後で


夢の中であれば好きなように振る舞えることを心の拠り所としているこの曲も、目を背けてばかりだった現実へと歩を進めていく。



今まで目を伏せて取りこぼしていた景色を探すためにちゃんと地に足をつけて歩き出した。

秋特有の少し冷たい風が頬を撫でたとき、その目に映した景色は何色だっただろうか。きっとそれは、夢で見ていたのと同じ景色のはず。




ではそれを確かめるには?


今夜も「静謐甘美な目覚め」を期待して、夢の中で答え合わせをしよう。

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