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じゃない方芸人のような人生 #3

 私は高校時代、野球部に所属していた。しかし、私が進学した高校は野球部の部員数が試合成立人数に満たないいわゆる「弱小校」だった。私の学年も例に漏れず、私を含めて二人しか入らないという悲惨な状態だった。

 しかし、憧れの高校生活の始まり。私は青春を謳歌しようと意気込んでいた。私は自身のあったコミュニケーション力を活用し、クラスメイトと仲良くなった。入学して一ヶ月くらいだったろうか。その中で、一人趣味の合う女の子と意気投合し、映画鑑賞の約束をこぎつけたのだ。このままもしかしたら・・・なんて淡い期待を少しだけ抱きながら私はその日を迎えた。

学校帰り、二人で隣町の映画館に向かう。映画を見て帰りのバス。会話や雰囲気は順調だ。バスで私は会話の流れである話題を出した。
「入学してそれなりに経つけど気になる人とかいるの?」
何気なく聞いてみたがまあまだ入学して一ヶ月程度。そんな簡単に恋心なんて芽生えるわけがない。その子は答える。
「野球部って二人だよね?もう一人の子すごいかっこいいなと思ってて・・・」
彼女は恥ずかしそうな顔でそう言った。確かにチームメイトはイケメンだった。それも国宝級の。入学前から噂されるほどの。
恥ずかしいのはこっちだ。僅かながらも期待した自分がバカじゃないか。なんともいえない感情に陥いりながら、あの頃のことを思い出した。
「これって中学の時と同じじゃないか?」
カミングアウトをしたその子はどこか吹っ切れたような表情で私に頼み事をしてきた。
「なんか、彼と話せないかなとか思うんだけど・・・」
本当に俺でごめん。今日映画に行くべき相手は俺ではなかった。しかし、そんな展開も慣れたもんで私はすぐにその子に協力体制を示した。

私を通して会食の機会を設けたり、LINEやInstagramのアカウントを教えたりと最善を尽くした。その結果、一ヶ月後にその二人は付き合っていた。少しいい感じだと思っていた子を一瞬でチームメイトに取られてしまうというなんとも酷な話だが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。その二人の幸せを願い、私はクラスメイトに、「お前が最初に仲良くなったのになあ笑」といじられる日々が始まるのだった。

#4(最終話)に続く。


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