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対等であること


その関係は、対等ですか?

 角田光代さんの「坂の途中の家」をようやく読み終えた。自分の子どもを虐待死させてしまった母親の裁判の様子が、幼い子どもを育てる女性の視点から描かれたこの話。読み進めていくうちにだんだんと自分の周りの酸素が薄くなっていくような、なんとも言えない息苦しさを感じてページをめくることを思わず躊躇してしまった。「他人事には思えない」きっと、この本を手にする人は、誰もがそんな風に思うのではないだろうか。

 裁判を通じて、一人の女性の人生を垣間見た時、主人公はある疑問にとらわれる。彼女と夫の関係は、彼女と母親の関係は対等だったのかと。自分は対等に扱われてきたのか、自分は相手と対等に向き合ってきたのか、それとも相手に迎合することで、問題を起こさない代わりに、自分で考えることを放棄してこなかったかと…。

 彼女が自分自身に問うたこれらの質問は、私のこれまでを否応なく思い起こさせた。私は対等な人間関係を築くことができていたのだろうか?

チャンスは下手に出ないと受け取れないもの?

 昨年、ある男性ジャーナリストの性暴力事件が報道された。そのジャーナリストが自分の地位や権力を用いて被害者の女性をねじ伏せたという非常に残酷で許しがたいものだった。

「この人に嫌われたらチャンスを失ってしまうかもしれない。」
「この人に気に入られたら、道が開けるかもしれない。」

 そんな思いを持って、レイプとまではいかなくても、セクハラや卑猥な冗談をぐっと我慢してきた女性は少なくないのではないだろうか。そうした体験をした時に、いつも年上の女性達が諦めきった顔をして伝えてきたのは「上手にあしらうことも、女性の嗜み」という言葉。波風を立てず、うまく立ち回っていくには我慢も大切…業務連絡のように代々伝えられてきたこの言葉に、きっと悪気はないだろう。でもこうした考え方こそが、女性達に「対等な立場に立つこと」を無意識のうちに諦めさせてきたのではないだろうか?

 私も仕事上、話をうまく進めるために、セクハラに笑って対応したことが何度となくある。セクハラをしてきた男性達は、きっと私以外の女性にも同じようなことをしてきて、咎められたことがなかったのだろう。私も、それを止めなかった。めんどくさかったからだ。私は自分自身を貶めていたのかもしれない。そして、他の女性を危険にさらしていたのかもしれない。

Let's say "FUCK OFF!"

 チャンスや憧れのキャリアは、我慢しないと手に入れられないものなのだろうか?男性の顔色を伺って、媚びへつらって、時には体を差し出さないと手に入れられないものなのだろうか?欲しいものを手に入れるために、嫌な思いをするのは当たり前のことなのだろうか?今までは、そうだったかもしれない。けれど、そろそろそんな悪習には”Fuck Off""と中指を突き立ててやりたい。

立場や年齢が違っても対等な関係は築ける

日本では、目上の人を敬うよう教えられる。だからと言って、歳が上だったり、立場が上の人が傍若無人に振舞っていいということでも、下にいる人が萎縮し、我慢しなければいけないということでもないはずだ。一人一人の尊厳が大切にされ、それぞれの権利が尊重されるなら、立場や年齢が違っても、私たちは対等な関係を築くことができるだろう。

 とは言っても、何の力もコネもない若い人たちにとって、地位ある人からの圧力や暴力を避けるのは容易ではないはず。だから彼らの側に立ち、一緒に声をあげ、サポートしてくれる存在が必要だ。

 若い女の子たちの夢を応援し、サポートする女性たちの存在も、これからもっと重要になってくるだろう。発展途上国の女性の支援を行っている人にこんなことを言われたことがある。「女性の敵は女性だ。」と。確かにそういう場合もあるかもしれない。でも、私は、ほかの女性達のために愛情を持って、手を差し伸べる女性をたくさん知っている。私たち女性は、お互いに助け合うことで、もっと高みを目指せるはずだ。もちろん、女性以外の人たちとも。

理不尽に慣れたりしない

 少し前に、ある高校生の女の子がこんな話をしてくれた。「学校の先生に、”校則は理不尽だと思うかもしれないけれど、世の中は理不尽なことだらけ。だから校則は社会に出た時に困らないために、理不尽なことを我慢できるようになるための訓練なんだ”って言われた。」

 確かに世の中は理不尽なことだらけだ。だからって、そんな理不尽に慣れたりしたくない。そして、子どもたちにそんな理不尽を押し付けたくない。新しい時代が始まろうとしている今、そんな理不尽を未来に持ち込むわけにはいかない。理不尽があるなら、それを変えていこう。無駄な我慢も、もうしないし、させない。

男も女も、その他の性の人達も、大人も子どもも、みんな対等になれる。
だから、諦めない、諦めない、諦めない。







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