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法務のナレマネ実践と効果


感銘を受けた本

本は、できれば幅広く読みたいです。特に好きなのは白難解ですが、英文学も、仕事に必要な法律関係の本も、excelのテキストも、お借りした流行小説も、『失われた時を求めて』も、原発の事故調査委員会報告書も読みます。ただ、これまでに一番感銘を受けた一冊は、間違いなくこれです。

『企業法務におけるナレッジ・マネジメント』

読んで、急に視野が広くなって、生き方が変わりました、ということではなく、本書に書いてあることを7割方、実践して、効果がありました。あと3割は、現職では需要も機会もないため、未実施です。法務界隈では、よく本書が「実践的」と言われているようです。実際にやって、どんな効果があったのか、レポートが必要では、と思いました。私は、具体的な施策をカテゴリ分けし、やるべきことを転記の上、実施したこと、難易度及び効果をexcelに管理しています。ポイントをレポートします。

数字で見る法務

契約書等の管理 950

写真は内容と無関係です

締結済み契約書の管理は、多くの企業にとって課題と推測します。車内広告で契約書管理ツールが宣伝されていることも多いです。法務担当としては、やっぱりね、という感想です。

発足10年未満の会社の初期の段階から法務担当を務めています。カイシャが締結した9割以上の契約書のPDFをデータベース化し、管理しています。合わせて、問合わせたこと、議事録、決裁文書、見積書等の関連資料も保管し、単純な資料提供要請であれば、10分以内に対応します。

今年、契約ライフサイクルマネジメント・システム(Contract Lifecycle Management System, CLM)を導入しました。共有フォルダとExcelで管理していた契約書データ全件をシステムに移行しました。非常に整然と管理されていて驚いた、とも言われたのですが、約1,000件の契約書のアップロードとメタデータの取り込みはそれなりに大変でした。担当者(私)は、発狂しかけていたようです。ただ、親会社によると、親会社の事業部や他の子会社では、そもそも契約書データをシステムに移行しようとする話にならないか、諦めざるを得なかったそうです。

CLMに契約書を移行したことで契約書間の紐づけが容易になり、検索性が向上し、全文検索も可能になりました。これは、「締結済みの全部の契約書の所定の条項の有無を調べて」のような指示であっても、すぐに対応できることを意味します。法務担当は感涙にむせんでいました。
つい、システムを導入すれば色々なことがうまく行くかに錯覚してしまいますが、システムさえ導入すれば万事解決、ではないと思います。導入前に体系的に管理されていることがシステム導入の前提だと思いました。整理不十分なものを、システム移行を機に整理し直すのはほとんど不可能ではないか、と。

関連資料の管理 700+

契約書の関連資料も多数、あります。個々の契約書に関連するものや、検討の記録の他、当局見解等、調べたこと、リーガルテックの会社が発行しているレポートやホワイトペーパー、社内セミナーの資料等々を一元管理しています。分類すると、こうもり問題が発生するので、分類せず連番で、Excelのデータベースにタグ付けで管理しています。問合せ回答の作成に当たっては、過去の資料を確認し、整合性を取るようにしています。「ここに保管すれば安心」と思われているのか、全然関係ない資料の保管依頼を受けることもありますが、ルールに従って保管するだけなので、来るもの拒まずです。

雛型 300+

ダウンロードしたものや、使ったことのないものも多いですが、雛型は契約書、社内規則、取締役会等議事録等々、300以上あります。よく使う雛型は、前掲テキストを参照し、関連する法令や資料のリンク、交渉上の注意事項などを書き込んでいます。当社の営業は、法務に対する理解が深く、ヒアリングシートをいつもきちんと書いてくれるので、ヒアリングシートと雛型で、例えば7割方のドラフトを準備します。その後依頼元と30分ほど打合せすると、第一ドラフトは、ほぼ完成です。

FAQ集 80問

社内から受けた問合せや使えそうと思った事例などは、FAQ集にまとめて、社内に公開しています。個別事例の細かいことを書いてしまうと差し障りがあるので、匙加減が難しいですが、その点を指摘されたことはありません。

用語集 250用語

やや特殊なビジネスで、業界用語、略語、社内用語などが多いため、用語集を作成しています。契約書に専門用語の定義が必要な時は自分でも見に行きます。新出用語は随時、掲載します。

マニュアル 10冊

契約締結のフロー、社内手続きに関するもの、雛型の使い方、電子署名、文書の保管方法、Microsoft Officeの使い方などのマニュアルを作成し、定型的な問い合わせにはマニュアルを案内するようにしています。Microsoft Officeの使い方は、なぜ、という感じですが
私「なんでアタシにWordの操作方法とか聞いてくるんでしょうね!調べればいいんですよ!」
夫「ええ加減なことを書いとるウェブサイトもあるで。マニュアル作って案内し」
と言ったからでした。このマニュアルは人気があり、アクセス数も多いです。法務担当としては、法務関連のマニュアルが人気がある方が嬉しいのですが。

対応の迅速化

業務フローを明確にして周知し、雛型や資料を管理して参照しているので、対応は遅くはないと思います。CLM導入により、一層の迅速化を進めたいです。なお、「スゴイ速さで走ってくやん。そのスピードに着いて行ける人おらんわ」と言われるので、そこまで頑張らなくて良いかもしれません。

社内教育 年間10回

一人法務なので、毎月1,2回の社内教育の実施はそこそこ負担です。資料作成時に参照できるものが複数あり、事例の蓄積も多いため、取捨選択して紹介できるのは、便利と思いました。今年は一方的な講義形式のセミナー中心だったので、来年は、もう少し参加型のセミナーを開催し、法務の認知を上げたいと画策しています。

反応

色々頑張っても、結局、独り相撲になっているのでは、ムダなことをしているだけでは、と思うこともあります。でも、見ていて下さる方はいるのでした。

現場の契約書に対する感度が上がりました。契約締結前の着手や、契約書に従って処理しないなどの課題があったのですが、まずは契約書を確認した上での質問が増えました。

PM

薄明さんが当部に入ってくれて、本当に良かったです。

天才

お祝いには、お寿司を食べることが多いのかもしれません。この程度であれば、回転寿司で十分です。私は生魚は食べないので、回転すれば良い、ということになり、回転ブランコに乗ってお祝いしました(400円)。

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