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Implicit learning(暗黙的学習)とSocial Motor Synchronization

前回の記事の続きを書いていきます。

前回のはこちらから↓↓

言語・社会性の評価/療育支援を「運動」というツールから考えることも良いアイデアですよね。思考の変換は大事です。

今読んでいる論文です。

Evaluating the Importance of Social Motor Synchronization and Motor Skill for Understanding Autism
Paula Fitzpatrick, Veronica Romero, Joseph L. Amaral, Amie Duncan, Holly Barnard, Michael J. Richardson, and R. C. Schmidt, Autism Res. 2017 Oct; 10(10): 1687–1699.

この研究では、Social motor synchronization tasksとして以下の3つのを課題を行っています。 

・Synchrony battery(検査者と対象児が運動を一緒に行う同期課題)
・Imitation battery(検査者の動きを対象児が見て真似をする模倣課題)
・Interpersonal hand-clapping(検査者と対象児がpat-a-cake gameを一緒に行う同期課題)

運動スキルの課題としては、

Drumming taskを実施し、リズムよく片手or両手で叩くことが求められました。

アウトカム指標は、それぞれの課題における動きの「同期性」として、「dynamical measure coherence」が用いられました。

で、結果を要約すると…

同期性の強い課題は、順にinterpersonal hand-clapping → synchrony battery → imitation batteryでした。まぁ課題の特性的にそんな感じかなぁと思います。

同期性の2群比較では、定型発達(TD)児と比較し、ASD児はSocial motor synchronization tasksの全ての項目で有意に同期性が低いことがわかりました。

また運動スキルの特徴として、ASD児はTD児と比較して、ドラムの動きが遅く、間隔やタイミングの変化が大きいことがわかりました。さらにSocial motor synchronization tasksとの相関関係を見ていくと、Interpersonal hand-clapping(pat-a-cake game)と運動スキル(Drumming task)や言語評価であるThe Clinical Evaluation of Language Fundamentals-4 (CELF 4) の下位項目のformulated sentences subscale (FS):文章形成と相関していましたが、Synchrony/Imitation batteryとは相関していませんでした。

これらの結果から、

運動のリズムや一貫性を他者と構築していく過程が難しいと推測され、他者との対人同期、社会的相互作用の困難さの一要因になっていると思われます。
文章形成との相関関係については、CELF 4の結果にASD児とTD児で有意差はあるものの、scoreは両群共に平均値内に収まっていることから根本的な原因ではないと判断しているようです。文章形成と発話プロソディの関連性や同期性への影響等についてさらなる検討が必要…とのこと。

個人的には、「pat-a-cake game」が慣れ親しんだゲームで且つ対面で行われる課題特性もあり、リズム生成や対人同期が働きやすいことから、上手くペア遊び的な課題を取り入れていけば、療育支援プログラムの一つになりうるのかなと。単純に模倣や同期を促すような課題の中には生まれない「何か」があるのでしょうね。歌やリズムがある方が、次の情報や動きを予測しやすいとか…。

しかしながら、まだまだ開拓の余地がある領域かと思いますので、更なる研究の進展が期待されます。

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