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江戸時代から伝わる「天心流兵法」。SNSでは秘伝の技を大公開。第十一世師家 井手柳雪さんにインタビュー!

江戸時代から伝わる古武術「天心流兵法」。その第十一世師家である井手柳雪さんに、SNSとの関係や天心流兵法への熱い思いをお伺いしてきました。

江戸時代から伝わる古武術


・TikTokで使われているお名前を教えてください。
古武術天心流兵法です。私は十一世師家(いわゆる宗家のこと)の井手柳雪と申します。

・天心流兵法との出会いについて教えてください。
天心流というのは、徳川将軍家の剣術指南役であった柳生宗矩という有名な方がいるのですが、その方に仕えた時沢弥平が創ったものなんです。そういった流派に自然と出会うことというのは今でもそう多くないと思います。それでも現在はインターネットなどである意味見つけやすいのですが、私が出会ったのは今から17年前のことで、当時はインターネットには何の情報もありませんでした。
武道武術が好きだった友人に誘われて、一緒に雑誌などで調べた結果比較的近くにあった天心流を発見し連絡を入れました。後に私の師匠になる第九世師家中村天心先生にお会いした時に「ああ!」と衝撃を覚えました。私はゲームやアニメ、漫画が好きで、そんな私の頭の中にイメージしている「古武術の人」そのものがそこにいたんです。すぐに入門をお願いしたのですが、実は当時は新規の門人を募集しておらず断られてしまい、そこから天心先生の勧めで他の道場をいくつか見学しましたがやはり天心流以外にはないと感じたので改めてお手紙を書いて、初めてお会いしてから6か月くらいでどうにか入門を許可されました。
そもそも弟子を取っていなかったのに天心先生が私とあってくれたのは、たまたま私の苗字に似た友人がいて、電話をした時に聞き違えて、その方と私を勘違いして約束をしたからで幸運でした(笑)。

約束の前日に確認のために電話をして勘違いが発覚したのですが「武士に二言はない」ということでお会いすることが出来たのです。友人に誘われたり、雑誌から天心流を見つけたり、名前の似ているご友人がたまたまいらっしゃったりと、ほんの少し何かが違っていたら入門できなかったと思います。

古武術とSNS

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・TikTokを始めた理由についてお聞かせください。
昔、天心流兵法は門人が本当に少なかったんです。私が入門した時は2,3名しかおらず、今にも途絶えてしまいそうな状況でした。そんな時に、後に第十世師家になる鍬海先生という方が入門され、広報やインターネットに強い拒否感のあった中村先生を鍬海先生が説得してホームページを作り、そこからYouTube、Twitter、InstagramなどSNSを活用した広報活動を始めました。TikTokを利用したのもその流れで、特に短い時間で多くの人々に強い印象を与えられるSNSとして期待していました。

・TikTokについてどのような印象をお持ちでしたか?
TikTokで天心流を知った若い方が入門されてきてはいましたが、そこまで効果があるのかな?と少し疑問もあったのが正直なところでした。しかし他の方々の投稿に触れてみると、TikTokの短い動画の中にも「メッセージ性」が十分にあると気づきました。また流行の曲や素材を使って連鎖的にバズるという同時代性により、ただの技の動画が話題を生むのがTikTokなんですね。今では動画が繋がりを生むツールであり、また世界中に利用者がいることから全世界に向けて情報発信できる意味でも非常に有効なものだと感じています。

・普段は天心流の長としてどのような活動をされていますか?

主に天心流の指導と組織運営です。
我々は横浜に本部を置いているのですがそこの本部道場や、他にも新百合ヶ丘、新宿や世田谷、川越、川崎に支部を持っており、そこに行って指導をしています。
その他に国外にも支部や稽古場を持っており、私は英語など外国語をいくつか話すことが出来るので、国外の彼らの指導を現在はオンラインを通じて行っています。コロナ以前には海外セミナーなども行っており、コロナが収束したときには、また国外での直接的な指導を行うつもりです。
組織的な話では天心流兵法は一般社団法人の法人格を持つのでその代表理事として様々な組織運営を束ねていますし、流儀の国際組織としても管理運営を行っています。
また、TikTokの話に戻りますが他のSNSも含めて動画での情報発信が今はメインになっていますので、私自ら編集ソフトを使っての編集作業を行っています。

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・天心流兵法の普段の稽古内容はどのようなもの?
天心流兵法では「兵法」、つまり「戦い方」について、大刀小刀、いわゆる長い刀と脇差を中心に抜刀の技法や、刀を抜いた後の剣術であったり、他にも槍や薙刀、少し変わったところですと十文字槍や鎖鎌、手裏剣や柔術など様々な技法指導をしています。
コロナ禍もあり、オンライン指導も2019年から始めています。「天心流オンライン指南所」というコンテンツを作成しており、FacebookやYouTube、独自サイトを通じて、家に居ながら天心流を一から学べるシステムを構築しています。

技法の動画だけでなく面白い動画にも力を入れる


・TikTokの動画で一番バズったものを教えてください。
ペットボトルを二つ持ってもらって、その隙間に刀を通すという動画です。すでに700万再生していただきました。

@tenshinryu

天心流兵法 本部稽古より、抜刀から隙間を貫く稽古法。

♬ オリジナル楽曲 - 古武術 天心流兵法 - 古武術 天心流兵法

「武道集団のアカウントの動画」というと、単純に技法だけが並んでいたり、神妙な顔で技を出している、というイメージがあると思います。もちろん私たちの動画にもかっこいい、映えのあるものもありますが、それだけでなくネタ的な動画や、また一列に並んで次々に抜刀していくような芸術性を取り入れた動画も投稿しており、バズっています。滝沢洞風先生という代範、いわゆる師範代の先生がいるのですが、この方がメイド服を着て技を披露するという動画も人気がありましたね。
正直始める前は、あまり武術の動画なんかは受け入れられないと思っていたんです。中高生の若者が多いので生活感のあるものやダンス動画が受けていると思っていたのですが、狙ってもない普通の技の動画であったり、稽古風景なども伸びています。視聴者を飽きさせないようにいろいろな観点からの動画を投稿するようにしていますが、理由は分かりませんが不思議とバズるという感じなので、これからも工夫しつつ続けていきたいと思っています。

・TikTokの今後の投稿についてお聞かせください。
TikTokはまず確実に継続していかなければいけないと思っています。TikTokにはトレンドというものがあるのですが、そこをキャッチしながらうまく現代の情報に合わせた動画を投稿していきたいです。TikTokは若者中心に流行っているところなので、そこから未来の天心流を習う人たちが国内外を通じて出てきたらいいな、と。
我々はSNSというツールを使って世界にこういったものがあるんだということを伝えていかなければならない。それが未来に繋がっていく。天心流を末永く伝えていくことが私たちの使命ですが、それには天心流を1000年先まで伝えていく意気込みが大事だと思っています。
発信を続けて、国内外に門人が増え、そしていろいろな人が天心流に入ってくることによって一門の武術としてのレベルを向上させ、結果的に動画を作れるという正のスパイラルで物事を進めていきたいと考えています。

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研究者から武道家へ天心流を未来に繋げるために


・強みや人には負けないポイントを教えてください。
私は元々明治大学大学院で微生物学をやっていて研究者になりました。その後東京で外資の営業の仕事を始めたのですが、一番鍛えられたのは営業スキル。そして言語です。グローバルという言葉が少し前に流行りましたが、日本の武道武術を学ぶ際に一番の壁になるのは言語です。しかし今の天心流では私が英語を話せるので指導することができます。
また個人的にアラブ諸国に友人が多いので、アラビア語も日常会話程度はできますし、他にも中国語やロシア語も少し出来ますので、そういった言語という強みを使ってより天心流というものを様々な地域に伝えていきたいと思っています。

・井手さんにとって「天心流兵法」を一言で表すと何になりますか?
月並みですが「人生」ですね。いろいろなもの、第十一世師家としての重み、責任感や使命感は大きく、ストレスを感じることもありますが、それら全てを背負ってもあまりある価値が天心流にはあります。
私は天心流と一心同体だと思っていて、辛い時もありますが天心流が好きですし、これからももっともっと良くしたいという気持ちで頑張ることが出来ています。最近はこの重みを含めて楽しむことが出来ているのではないかなと感じていますね。

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