第二十二回 筒香選手はメジャーに戻れるか(2021年7月11日)

前回記事から時間経っているので、筒香選手の近況ついてどの様に考えるかを簡単に「捻りモデル」の立場から述べてみます。

当初私が予想したよりも相当苦しんでいるようです。しかしオクラホマシティでの、ここ数試合の様子を見ていると状態は良くなっているように見えます。
動く球を見極めてストライクを打つという意識が強く、フォアボールを選ぶことが多いのは筒香選手の特徴でしょう。球を見極めるためストレートに振り遅れることがありますが、最近はエネルギーを溜めてリリースするという動作が時々見えるので、昨日のチワワズ戦第二打席で見せた大ファールや豪快な空振りなど、時折十分な「パワー」を持っていることが垣間見えます。3Aのレベルはメジャーよりもかなり落ちるように思えるので、何とか調整してメジャーに上がって欲しいところです。

ここまでの様子を見ていると、可哀想に筒香選手はかなり日本のバッティング指導法の意識から抜け出せずにいたように見えました。どのような意識のために筒香選手が苦しんでいたかというと、恐らく

1「体を開かない様にする」という意識
上体を横に向けたところからバットを振り出すのが良いという意識に囚われていたため、速球への対応が遅くなっていました。(なぜ「体を開かないようにする」動作が問題なのかわからない方は、「捻りモデル」のメカニクスについて、初期の投稿をお読みください)
最近は、「体を開かない様にする」という動作ではなくなってきたように見え、メジャーの打ち方に近づいてきたように見えます。

2「体重移動」が十分でない事
以前は、体重が後ろ足に残っていたために打球が伸びずに、会心の当たりが外野フライで終わるケースが多かったようにに思えます。あえて流し打ちする場合を除き、最近は体重移動をしっかりする方向で調整してきたように見えます。(体重移動については、Stay Backに関する投稿をご覧ください。)

3「バットのスイング速度」を上げる意識
構えた位置からミートポイントまで、バットのスイング速度を上げなければという意識が強かったように見えます。バットのスイング速度を上げれば上げるだけボールを押し込む「力」は弱くなるため、弱い打球しか打てない状態が続いていました。
未だこの「回転モデルの罠」から、完全に抜け出たはいない様に見えますが、前述の通り、時折良い状態で強い打球が飛んでいるように見えます。

4「バットのヘッドが下がってはいけない」という意識
バットの軌道については以前にも書いていますが、バットのヘッドが下がらない様に打つ軌道は構えた位置よりも高いボールに対してだけで、構えた位置から下のボールは、すくいあげる軌道が最も直線的で「力」が伝わる軌道であるのですが、すくい上げるにはバットのヘッドを下げなければなりません。
筒香選手の様子を見ていると、この「バットのヘッドが下がらない様に」という意識を常に持っているようです。低めのボールに対してすくい上げる軌道でスイングしようとしているようですが、同時にヘッドが下がらない様にと気をつけている為、良い動作でボールにアプローチできても、特にライト方向の打球については、ボールの上を叩いてライト側の打球がゴロになりセカンドのシフトにかかってしまうという事が続いているようです。
要は低めのボールに対して、高めのボールを打つ打ち方をしているということです。
低めのボールに対しては、バットのヘッドを幾分下げてすくい上げるようになれば、セカンドの頭を越す強い打球が見られるでしょう。

ヘソベクトルと打球方向をもう少し合わせて、最後4のバットのヘッドについての意識を調整できれば、今後調子は上向いてくると予想します。
しかしその前にこうして見てみると、筒香選手はとことん日本のバッティング指導法から抜け出せずにもがいてきたようで実に気の毒です。

多くの人は既に忘れつつありますが、大谷選手であっても、昨年は「回転モデルの罠」から抜け出せずにもがいているようでした。去年の打ち方を継続していたら、今年は悲惨な事になっていた事でしょう。大谷選手は、よくぞ柔軟に打ち方を変えてきたと思います。個人差はあれど、何年も馴染んできた打撃動作を根本から変えるには、時間がかかるのだと思います。

筒香選手がマイナー残留を選び、ドジャースも忍耐強く筒香選手がメジャーに上がってくるのを待とうというのですから、少なくとも筒香選手は、打撃のメカニクスを変える事に意義を見出したという事でしょう。
練習中の画像が見られれば、現在の状態は判断がつくので、そのうちにフリーバッティングの映像がどこかで見つかればと思っています。

例え筒香選手が今後メジャーに戻れなかったとしても、日本球界に貴重な体験を伝えてくれることでしょう。辛抱強く応援していこうと思います。

(2021/7/22追記)
筒香選手は、昨日のReno Acesとの試合で第6号を放ち猛打賞でした。
第4号あたりから、体重移動、スイング軌道、ヘソベクトルと打球方向、体幹に溜めたエネルギーを押し出すようなスイングが見えてきたので大丈夫かと思っていましたが、変化球に対してのものが多かったので、しばらく様子を見ていました。昨日の直球に対する2安打においても、全て捻りモデルのメカニクスに合う形になっている事が確認できたので、恐らくこれからは、順調にホームラン数と打率を上げていけると思います。

本来なら写真と解説を上げたいところですが、時間がとれないので急ぎコメントまで。頑張れ、筒香。

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