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チェルシーは補強するほど弱くなる

チェルシーが金満大補強を重ねているにも関わらず勝ち点が伸びず、先日のウエストハム戦も合計200mを超える金額で補強したエンソとカイセドがやらかして敗北したことで煽られまくっている。

さて、そのウエストハム戦に出場した選手の 年齢[在籍歴] は以下の通りである。在籍歴は今シーズン開幕前までの延べである。

19[1]→22[½]
20[½]→20[1]
20[1]
22[0]
22[½]
23[1]→21[½]
25[0]
25[1]
26[3]→21[0]
28[1]
38[3]

在籍歴だけ抜き出すと、いずれも非常に短い。これでは連携しろと言うのが無理だろう。もっとも在籍歴が長くとも監督が頻繁に変わっているのでやはり連携は怪しげなところだが……
0: 3名
½:4名
1:6名
3:1名

年齢構成だけ抜き出すと以下の通りで、中堅が極端に少なく、DFのベテラン(チアゴシウバ)は38歳とベテランと言うにもちょっと年齢が高い。
O-30:1名
23-29:4名
U-23:10名

経験の浅い選手ばかりなので、連携が不十分な中でアドリブで何とかしようとしても無理だろう。ここまでぶっ壊れた年齢構成のチームは、育成特化で成績を無視している弱小クラブか、私が記憶している限りだと身売り寸前の時期のマルセイユくらいしかない。

素材としてはいいのかもしれないが、U23の選手にちらほらOAが混ざった程度の五輪チームのような年齢構成にしてしまったら、そりゃ弱くなるに決まっている。

もちろん、若手が活躍できないわけではなく、例えば同じ週のレアルマドリードでは20歳のベリンガムが全3得点に関与する大活躍をしている。しかしレアルマドリードは比較的ベテランが多く、U23でもヴィニシウスやロドリゴのように計画的に育成され在籍歴が5年ほどの選手など、比較的安定している。リバプールに加入した遠藤が初日にいきなり緊急出場しても多少の粗があった程度で済んだのは、本人がベテランなのと、周りに余裕があって合わせてくれた部分も大きいだろう。

チェルシーの問題は、在籍歴の浅い若手が多数派だという所である。

なぜチェルシーはこんな補強をするのか

長期で価値が出る若手

近年の移籍市場では若手ほど金額が高い。若手であれば契約が切れそうになった時にも高値で転売できる、リセールバリューが高いのでそれが獲得金額に累積するからである。このため近年の高額移籍の大半はU23の若手であり、有望な若手を取ったところが勝ち組で、30歳過ぎの選手に移籍金を払うのは無駄ということになっている。

だが、その移籍金相場はリセールバリューを織り込み済みの価格でしかないので、移籍金がそのまま実力に比例するというわけではない。例えば遠藤の記事でも書いたが、30歳の遠藤と同程度の評価の選手は、中堅なら3倍、若手なら5倍の値が付く――言い換えると5倍もの価格差があるが今現在の実力・評価はさほど変わらない(とはいえ人は値札に比例した実力があると錯覚しやすいものでもある)。

若手がその値段でペイするのは、在籍歴の長い選手にサポートされながら戦術を浸透させ成長して契約延長するなりリセールするなりという長期計画が達成されてこそであり、短期的、この1年の成績を何とかするならばむしろコスパは悪い。

短期の成績のために補強するチェルシー

一方で、チェルシーはビッグクラブであるため、勝ち点が伸びなければ補強して短期間に成績を上げろというプレッシャーがかかり、これが大量補強につながっている。

短期間に成績を上げるという目的に対して、短期ではコスパが悪いが長期保有で価値が出る若手を偏重して集めている、というのがチグハグであり、補強しても成績が伸びないのでさらに補強するが、さらなる補強も短期間では結果が出にくい若手偏重であり、アドリブが効かない若手で、在籍歴も浅く連携ができず、交代したばかりの監督は戦術進行が不十分……というディスシナジーが発生してさらに成績が上がりにくくなるというスパイラルができてしまっている。これがチェルシーがここまで成績が悪化した原因とみていいだろう。

チェルシーは今から何ができるのか

今の選手層を見る限り、チェルシーが短期的に成績を上げる方法はない。ここまで書いた通り長期的投資のための若手株ばかりを買いあさってメンバーが偏り過ぎているからである。

アーセナルがやったように、例え8位くらいで欧州を逃し続けても、信じられる監督にじっくり戦術を浸透させて、若手が高いり理由である「これから成長する」というプロセスをしっかりこなさないと、どうにもならないだろう。

ゆえに、今チェルシーができることは、信じてくれとファンを説得しつづけることくらいしかないだろう。





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