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台湾発翻訳コミックス『用九商店』第3巻 発売記念 | 訳者・沢井メグ特別コラム


皆さんこんにちは! 
2022年1月に発売し、ご好評いただいている台湾翻訳コミック『用九商店』。今回は3月9日(水)発売の3巻について、日本語訳担当の沢井メグが翻訳作業を通して感じた見どころ、翻訳の裏話などをお届けしたいと思います。

ますますドラマティックに展開する3巻。
翻訳するなかで「これはぜひ読者の皆さんにお伝えしたい……!」と思ったことがありました。気づくと気づかないとでは物語の重みが全く変わってしまうかも!? 今回はそのヒントも少〜しお伝えしたいと思います。


用九商店とは

『用九商店』を一言で言うなら、台北に住む青年・俊龍(ジュンロン)が、よろず屋を営む祖父が倒れたことをきっかけに地元に戻り、店に集う人たちとの交流の中で「大切なこと」に気づいていくという物語です。

書影


作品の軸をなす「人と人との繋がり」というテーマは、国や文化関係なく私たちにとって永遠のテーマです。『用九商店』の人物やエピソードにどこか共感を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

その一方で、作品には台湾の文化や社会が垣間見える描写も。
たとえば、台湾人にとっての廟の存在、台湾の食べ物、日本とは少し違う気候……また勇(ヨン)さんのヘルパー・宝珠(バオジュ)がベトナム人であることにも意味があります。脇役の一人と思われていた宝珠にも、近年、台湾の介護業界で東南アジアからの人材を受け入れているというリアルな世相が反映されていました。

用九から知る台湾のこと、たくさんあります。

ちょっとした背景や雑談のようなセリフの中にもさりげない意味がある、それがルアン・グアンミン先生の作風でもあります。少しでも「これなんだろう?」と思うシーンがあれば、調べてみるときっとおもしろい発見がありますよ!

(1〜2巻のあらすじ、各賞受賞歴などはコチラのnoteをご参照ください!)



3巻の見どころ

さて3巻では、俊龍が好意を持っている女性・昭君(チャオジュン)の元恋人・恩沛(エンペイ)が村の再開発責任者として登場します。俊龍が守ろうとする伝統と恩沛が推し進める改革は対立するしかないのでしょうか?
そして昭君をめぐる三角関係が勃発!?


1.俊龍_s1

俊龍(ジュンロン)……主人公。祖父が倒れたことをきっかけに、よろず屋・用九商店を受け継ぐ。



2.昭君_s1

昭君(チャオジュン)……夜市で屋台を営む。俊龍とは友人以上恋人未満の関係性…?



4.恩沛_s1

恩沛(エンペイ)……再開発責任者として故郷の村を訪れる。昭君とは10年前に交際していた。


3人を中心に物語が急展開していく中で、ぜひ注目していただきたいのが「カレンダー」です。
カレンダー自体は1&2巻から登場していました。3巻ではある事件が起こるのですが、ここでカレンダーの意味に気づくと気づかないとでは物語の重さが変わってくるのです。翻訳の際には思わず二度見。あまりの衝撃に編集担当の佐藤さんとも何度もストーリーとカレンダーの日付を確認したほどです。


1巻の例のタクシーに続きもう一度言います。

「グアンミン先生、さりげなさすぎ!(笑)」

日付_比較

3巻の冒頭、道路工事が行われているのが2017年2月。それが3巻の最後では……。



3巻までがドラマ化 4巻から新章へ!


『用九商店』は実写ドラマ化されており、日本では『いつでも君を待っている(以下、いつ君)』
というタイトルで放送されています。ちなみに台湾版のドラマタイトルは『用九柑仔店』。台湾版の漫画と同タイトルです。
ドラマの邦題と全然ちがう……?

いつ君-日本版KV-Final

ドラマ『いつでも君を待っている』メインビジュアル。豪華俳優陣が作品を彩ります…!


個人的にドラマの邦題が『いつ君』になったことは気になっていました。なんとなく「あのシーンかなぁ」くらいは思っていたのですが、なんと3巻に『いつ君』のタイトルを想起させるページがあったのです! つながった! 気づいたとき体中にビリビリっと衝撃が走りました。

実は、漫画の翻訳にあたっては、グアンミン先生のセリフ回しをできるだけダイレクトにお伝えしようと、人物名の表記や昭君のあだ名「強面(こわもて)ヴィーナス」のような独特な言葉を除いて、ドラマ版の字幕翻訳は見ないようにしていました。

しかし、このタイトルにまつわる衝撃だけは、読者のみなさんとドラマのファンの方にお伝えしたい……! 
そう思い、3巻の翻訳ではドラマ版の邦題をかなり意識した場所があります。(ぜひどのエピソードが探してみてください)

ちなみにドラマ版の配給会社であるコミックリズさんに伺ったところ、『いつでも君を待っている』の邦題は「よろず屋がみんなの憩いの場であるということを表現できれば」ということで劇中セリフから取ったのだそうです。邦題に、そんな思いが込められていたとは……熱いものが込み上げてきますね!


いつでも君を待っている。
「君」とは誰なのか、誰がどこで君を待っているのでしょうか? ドラマとあわせて考えてみると面白い気づきがあるかもしれません。(私と担当の佐藤さんと語り合ったとき、ちょっと意見が分かれました。いろんな解釈がありそうです)

ちなみに実写化されたのは、だいたい3巻までの内容です。ドラマと一緒にまとめ読みするなら今かも!? ぜひ原作の用九商店の世界を楽しんでください。4巻は新章に突入します。どうぞお楽しみに!



文:沢井メグ


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『用九商店』は弊社WEBコミックサイト「路草(みちくさ)」にて試し読み配信中!ぜひ覗いてみてください◯



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■書誌情報

用九商店3巻_表1

作者:ルアン・グアンミン
訳者:沢井メグ
仕様:A5/並製/200ページ
本体価格:900円(+税)
発売日:2022年3月9日(水)
発行:株式会社トゥーヴァージンズ
ISBN:978-4-910352-20-6


あらすじ:
「オレ達はここに戻ってきた、待っている人がいるこの場所に」

ついに、用九商店の向かいに巨大ショッピングモールが建てられた。

目に見えて売り上げが下がるなか、 モノとお金のやりとりだけではない商売を続けるため 俊龍(ジュンロン)はある打開策を練る。

一方、 母親の借金の取り立てに追われる昭君(チャオジュン)の元に 再開発責任者として帰郷した 元恋人・恩沛(エンペイ)が訪れー。

それぞれの大切なモノを守るため、 「過去」と「今」が交錯し、物語は大きく動き出す!


■作者/訳者プロフィール

◯ルアン・グアンミン
漫画家。スッキリした作風と、ユーモアある感性豊かな筆致が特徴。台湾社会に根ざす温かみあるストーリーを得意とし、登場人物の思い、人間関係、心の機微をきめ細やかに描く。また彼の描く台湾の風景には定評があり、レンガ一つ、草木一本に至るまで伝えたい優しさが込められている。漫画への思いは十年一日のごとし、いつまでも変わらない情熱をもって作品を描き続けている。数多くの漫画賞を授賞、国際舞台でも活躍。
代表作:『刺客列傳』『東華春理髮廳』『幸福調味料』『天國餐廳』等
【Twitter】@guangminruan
【Instagram】@Ruanguangmin1

◯沢井メグ
中国語翻訳者、ライター。上海万博での勤務、通訳・翻訳業を経て、2011年よりWebメディアでライター/エディターとして活動。中国や台湾をはじめとする中国語圏のニュースの翻訳のほか、現地の漫画やアニメ等ポップカルチャーの紹介や取材を行う。2020年に独立。現在は多数の媒体で台湾経済誌や著名人のコラムを翻訳、オリジナル記事の取材・執筆。主な訳書に毎日青菜『DAY OFF』、『TAIWAN EYES GUIDE FOR台湾文創』翻訳パート(共にトゥーヴァージンズ刊)。
【Twitter】@Megmi381
【Instagram】@megmi381


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出版社トゥーヴァージンズが運営するWEBコミックメディア「路草」は毎週水曜日に更新しています。目的地への旅の途中に、ぜひお立ち寄りください。

◯Twitter:@michikusa_comic


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ドラマ『いつでも君を待っている』ドラマ放送&配信情報はこちら

◯Twitter:@pr_ritz


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