見出し画像

「聖闘士星矢」再燃したら国立国会図書館にたどりついた話

東京のど真ん中で過ごした文学部生時代にはただの一度も利用しなかった国立国会図書館。まさか「聖闘士星矢」のために訪れることになろうとは…まさか…まさか夢にも思わなかったぞ…(滝涙)
 
※ネタバレを含む記事です。

求めよ、さらば与えられん:事の発端

小学生のころハマっていた「聖闘士星矢」、大人になって読んだらおもしろいんじゃね?と思い立つ
→文庫版全15巻を買いそろえ、ツッコミを入れながらおおいに楽しむ(そして水瓶座のカミュにハマる)
→ジャンプコミックス(以下JC)からの修正・変更が多々あるらしいことに気づく
→JC28巻を入手。文庫版と読み比べて一人悦にいる日々
 
このへんの話は過去の記事に書き散らした。

……しかし、「JCも実はジャンプ連載時とかなり違う」とのネット上の情報を得てしまった。いわく、カミュは連載時に筋肉線が描かれていた、ミロとカミュの小宇宙通信はジャンプでは会話が成立していなかった……当時のジャンプ本誌をどうしても確かめたくなった。病膏肓に入るとはこのことだ。
 
「昔のジャンプ読みたい! でも中古はプレミア価格だし無理っぽい……」とnoteでぼやいたら、コメントにて「国立国会図書館で読めますよ」と神の啓示があった。前の記事でも御礼申し上げましたが、重ねて謝意を示します。教えてくださり感謝です、ぶいさん →ぶい|note 
 
以下は、初めて国立国会図書館を利用して少年ジャンプを閲覧した記録である。
 

事前準備編

【①国立国会図書館へのアクセス・利用方法を調べる】
永田町駅から歩いてすぐ。正直、私の場合、定期券からちょっと足を伸ばせばいいだけだった。
PCが持ち込める。
6階「食堂」は食事の提供は現状ないが、飲食可能スペースとして機能。同じ階に売店がありお弁当が買える。
入館・資料閲覧は無料。つまり、交通費とお昼代だけで一日たっぷり楽しめる……!!
 
【②荷物を準備する】
●PC、マウス、電源コード
●文庫版「聖闘士星矢」5、6、9、11、12巻(本当はJCを持っていきたいが、冊数を減らすため)
●水筒(閲覧室は飲食不可。庭や食堂、水分補給スペースで飲める)
●本人確認書類(利用者登録時に必要)
●ノート、筆記具(万一PCが使えなかった時のため)

PCが入るカバンがこれしかなかった 2泊3日の旅行か

 【③借りる資料を特定する】
お目当ての話が載っている少年ジャンプを特定する。文庫版とJCを見ればだいたい何年・何号かわかる。今回はわが師カミュはじめ黄金聖闘士が活躍する「十二宮編」を最優先。できたら「ハーデス十二宮編」も見たいし「ポセイドン編」の女神なカミュ(偽)も拝みたいので、一応調べておく。
 
国会図書館の蔵書は自宅からでも検索ができる。
「少年ジャンプ」で検索、「雑誌」で絞り込むとすぐ見つかった。「週刊少年ジャンプ」ではヒットしなかった。
 

訪問編

【いざ、入館】
有給休暇の平日。勤め人たちとともに地下鉄に揺られて永田町駅に到着。国会議事堂を右手に見ながら歩くとすぐに入り口につく。朝10時前。人はまだ少ない。
まず新館で利用者登録。平日のためか数人しか利用登録待ちの人がおらず、スムーズにカードを発行してもらえた。
 
荷物の整理。すぐそばのロッカーにて、持ち込めない荷物をロッカーに入れる。100円硬貨1枚が必要(返却される)。備え付けの半透明バッグ(A4ファイルが入る大きさ。マチあり)に持ち込み可の物品を入れる。サイドポケットには水筒を入れた。
 
発行したばかりのカードを使ってゲートを通る。ゲートのところでPC用のソフトキャリーケース(取っ手はない)が無料で借りられた。
 
館内のPCにカード・パスワードを使ってログイン。貸出申し込みはPCからする。持ち込みのPCでも可。館内フリーwifiあり。
ついに少年ジャンプ閲覧申し込みである。雑誌は一度に10冊まで。とりあえず、1987年の23号~32号を注文。自分で書庫に行って探すことは不可。資料が用意されたかどうかはPCで確認できる。
 
【全体の雰囲気】
利用者は老若男女さまざま、としか言えない。学生から社会人、お年寄りまでまんべんなくいらした。共通点は、静かに本を読んでいる、その1点のみ。2人組?みたいな方々もいたが、とにかくみんな静かだった。そうだ、ここの利用資格はただ一つ、「満18歳以上」。子どもがいないのだ。
 
「マンガを読みに来る人はいるのか…?」とちょっと思っていたが、実際私だけではなかった。私がカウンターに寄ったタイミングだけでも、月間マンガ雑誌らしきものを返却している人がいたし、マンガの単行本を借りている人もいた。マンガが「研究」対象になることは当然おおいにありえることなのだから、なんの不思議もない。私のコレも、きれいにまとめて学会に発表する日は永遠に来ないにしても、私的研究と言える。言っておこう。言うだけならタダである。
 
PCの電源がある席は、それなりに数が用意されている。朝10時台は1割くらいしか埋まっていなかった。カメラで資料を撮影するなどのアウトな動きがしづらいようにか、部屋はガラス張りでどの席も外からよく見える。
 

ジャンプ受け取り、調査開始

資料は申し込みから30分ほどで用意できる、とされているが、朝で利用者が少ないためか、10分も待たずに10冊そろった。雑誌カウンターに取りに行く。カードを提示するとジャンプが10冊渡された。おおおおマジで昔のジャンプ読める!!! 興奮しすぎて不審者にならないよう気をつけながら、ブックトラックに載せて席に運ぶ。
 
そこからはひたすら読んだ。持ってきていた文庫版を開きつつ、1冊1冊のジャンプから「星矢」を探しては読んだ。「十二宮編」はめちゃくちゃ人気だったと聞くが、確かにこの日借りた全てのジャンプにおいて星矢は前の方に載っていた。表紙を飾っている号も何冊かあった。巻頭カラー、2色刷り……かなり高い地位にあったことがダイレクトに伝わってきた。そりゃそうだよな、マジ激熱でおもしろいもんな!!
 
JCではわからなくなっていた1週1週の切れ目も、ジャンプ本誌を見てはっきり認識できた。まあここで区切るよな! 次週への引きが強い強い! と改めて感心しまくった。読者の興味を引きつける技術があまりに高すぎる。同時に、JC・文庫版は極めて巧みに編集されているな、と感じた。なるほどーそこのモノローグを次の週の見開き扉に移植しましたかー!みたいな。いずれにしろ、「元」を知ることができたのは大きな収穫だった。
 
当時の空気を知るため、他のページもめくった。同時連載はドラゴンボール、シティハンター、北斗の拳、気まぐれオレンジロード、ついでにとんちんかん、奇面組など。綺羅星のごときラインナップだ。ドラゴンボールでは天津飯と戦っていた。絵がまだかわいい感じ。
 

ランチ、そして午後の探索

最初の10冊を返却するころには、13時近くなっていた。お昼だ。
6階に「食堂」があり、かつては学食的な場所だったのだろうが、今(2022年12月)は調理はしていない。隣の売店で買った弁当を「食堂」で食べた。売店はスイカ使用可。
 
午後になると人が増えていたが、元の席に戻ることができた。次の10冊、1987年の33号~42号を借りる。
 
ジャンプ連載の修羅場かげんが紙面から伝わってくる。キャラの衣服の汚れ、背景の質感、キラキラのエフェクトはJCで加筆していたんだ。アシさんフル稼働でも週刊連載では描ききれなかったんだろうなあ。
ミロやシュラの腕に筋肉線がないのも驚いた。逆に、宝瓶宮戦でのカミュにはある。(ツイッターでその情報を得たのが、この探索のはじまりだった。マジであったので驚いた。私の目がバグってんのかな?ってなった)
初見の扉絵、JCで追加されたページ……発見は尽きない。アオリ文からも当時のノリ、空気感がにじむ。
あとおもしろいのが、作者名の近くにある近況報告的な一言。「締切という邪悪と死闘中!!」とかリアルで笑える。
お便り募集のキャッチコピー「ふきでる闘志が迫力をつくる!!」にも痺れた。すさまじい説得力。しゃかりき感が半端ない。「♪にっじゅーよっじっかん たったかーえますかっ!?」の世界が広がっていた。
 

心に突き刺さった嘘予告

ジャンプ名物・嘘次回予告も楽しんだ。次回サブタイトルはもちろんだいたい採用されない。ぶっちゃけ適当である。しかし中には端倪すべからざる佳品も存在する。
 
宝瓶宮戦の予告サブタイトルは『恩と報酬』だったんですよ……? 
「恩と報酬」。切なさが限界突破している。一瞬でもこのサブタイトルが作者サイドに存在した(少なくとも一度読者の目にふれるレベルで提出された)という事実をかみしめてしまう。
かみしめすぎた記事がこちら↓https://note.com/tyabudou/n/nc64724e5722c

 【夕方~初入館日の成果】
16時頃には電源席の約8割が埋まった。18時過ぎには出るつもりだったので、あと10冊。ハーデス編なんて夢のまた夢だったな……
結局、この日読めたのは1987年の49号(宝瓶宮戦の決着)まで。朝10時半から18時過ぎまでに27話分を読んだことになる。ふつうに読むだけならもっと行けたはずだが、文庫版と見比べながら(とはいえそんな細かく見られてはいない……)なので、進まない進まない。
 
【する余裕がなかった複写サービス申し込み】
国立国会図書館ではコピー申し込みもできる。自分でコピーすることはできない。スタッフにしてもらうのだ。料金など調べてはあったが、この日は全然そこまでする余裕がなかった。
ただ、48号の見開き扉絵(カミュ横顔、氷河全身、飛んでゆく白鳥たち、の縦長見開き扉)はすんごいよかったので次回来たらコピーしたい。
 

今回の収穫と今後の展望

第一の目的である「十二宮編」のカミュは見られた。ジャンプ本誌のサイズでわが師のご尊顔を拝めたのでだいぶ満足している。そして、JCとの違いは色々あったけれども、カミュ周辺の異同はけっこう重要なものがあった。カミュが何を考えてあの戦いに臨んだのかは、実は車田の御大もつかみきれないまま連載が進んでいたのではないか。そう感じた。この話は後日ぜひとも書きたい……ってずっと言ってるよねいつになるんだよ。メモばかり増殖してるんですよ。年内にはとにかく一回書く。
 
もちろん、「ハーデス編」の美少女なカミュや「ポセイドン編」の女神で聖母なカミュも絶対にこの目に焼きつけなければならない。あと初恋の人・ムウ様の初登場シーンおよびハーデス編でのご活躍も外せない。
 
ジャンプだけじゃない。今やプレミア価格の記念画集、ファンロードのシュミ特、島村春奈のパロディ漫画……
 
次に国会図書館に行ける日はいつだろうか。また有給を取らなければ。
 
 


この記事が参加している募集

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?