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Twitterが開く道具の可能性 「低反射シート」が開発者の想像もつかないところで使われ始めた話

「それはスキャナの方がいいんじゃないですか?」

自分の商品をすすめるのではなく、そんな言葉を発してしまったのにはわけがある。
スマホを使ってレシートをスキャンするために作ったうちのオリジナル商品「レシートスキャンボード」。
それを使って「チェキ」をデジタル化できないか……とご来店いただいたお客様に尋ねられたからだ。

確定申告の時期も終わりに近づき、レシートスキャンボード用に交換部品として販売している「低反射シート」のことについてつぶやいたのがお客様のご来店のきっかけだった。

交換用に作ったはずの低反射シートが、400円という価格も相まって単独で売れ始め、どうやら漫画家さんに使われ始めているという情報を知ったのは今年に入ってからのことだった。
でも、誰かがTwitterで紹介したとか、Youtubeで紹介されたとか、そんな情報は全然入ってこない。一体どこからこの使用方法は広まってるの??という疑問からなんとなくつぶやいた。

結果として、漫画家さんやイラストレーターさんがアナログで描いた絵を、デジタルに取り込むのに便利……というのはある程度予測がついていた使い方だったのだけど、「カードゲームのカードを撮影するのに良さそう」だったり、「免許証の撮影にも使えそう」という意見、そして更に「チェキの撮影にも使えるのでは?」という様々なご意見が寄せられた。

そして話は冒頭に戻る。
実際にお店に来店されたお客様に店頭サンプルでチェキ撮影にどう便利なのかをお話していると、予想外の答えが返ってきたのだ。
今回はそんなものづくりの上での予想外だったエピソードと共に、低反射シートと同様の用途で昔から使われてきている無反射ガラスとの比較等も行ったのでご紹介させていただきたい。

スキャンしたあと、原本をどうするのか?

そもそも、チェキをデジタル化する時になぜ低反射シートがいるのだろう。
ふだんチェキに触れていない私にはすぐにピンと来なかったけれど、ネット上のご意見をきいてすぐに理解することが出来た。
チェキの表面には光沢があり、照明などを反射してしまう性質がある。
そこに照明だけでなく、垂直にして撮影すると自分自身の姿が映り込んでしまうというのが、チェキをデジタル化する上での障害になっていたそうなのだ。

折れていたり、ポケットの中でぐしゃっとなっていたレシートを、上からシートを載せてキレイに伸ばして撮影する時、オフィスに必ずと言っていいほどある「クリアホルダー」を使うと、上の動画のように天井照明が映り込んでしまうことがある。
電子帳簿保存法が改正されてルールに則ってレシートをスマホカメラでデジタル化すると、レシート原本を捨てて良くなったのだけれど、その際に反射によってレシートの文字が見えなくなっていたりしてはいけない。
そのために採用した低反射シートだったけれど、これがチェキの反射を防ぐことができないか……と注目されたわけだ。

実際上の画像は、手元にあったチェキをレシートスキャンボードを使い、低反射シートに挟んで撮影してみたもの。
低反射シートはもともと、オフィスで使われる透明なデスクマットが天井照明を反射してしまうことから開発されたものだけあって、反射や映り込みはしっかりと抑えられている。
ただ、どうしても反射を押さえるために低反射シートの表面がでこぼことした加工をされているために原本よりも白っぽく撮影されてしまう。

そもそも、チェキをキレイに電子化するなら、スキャナーの方がいいのではないのか。
そう思ったのにはもちろん理由がある。
自分自身、ScanSnapというスキャナーシリーズを昔から愛用していてその性能を信頼しているからだ。

そんなお話を率直にお店に来られてチェキに使えないか検証されていたお客様にきいてみると、自分も想像しない答えが返ってきた。

「チェキをスキャナで取り込むと、取り込みのローラーの小傷がついたり、チェキ自体を痛めてしまう可能性がある」

そう言われて、「た、確かに……!」と納得してしまった。
スキャナのタイプにもよるけれど、この頃のスキャナはセットした紙を次から次にスキャンできるように1枚ずつローラーで紙を送ってスキャンしてくれる。
その際に少なからずスキャンされる紙やチェキには、ローラーで挟まれるというダメージが加わる。

もちろん、スキャナーのメーカーもそれを見越した上で写真キャリアシートなるアイテムをオプションとして用意している。
ただ、それでもこのタイプのスキャナには「詰まってぐちゃぐちゃになるかもしれない」という不安も少なからず残る。
かくいう自分自身が、性能の良いスキャナを所有しているにも関わらず、レシートスキャンボードを開発したのも、レシートがスキャナの中でぐちゃぐちゃになった経験があるからだったりもする。

更に、チェキをスキャンしたい人はレシートをスキャンしたい人と決定的に違うことがある。
それは、デジタル化したあとにレシートを廃棄するのか、それとも大切に保管するのかといった差だ。
例えば大切なアイドルと撮影した1つしかないチェキを危険にさらせるだろうか……と考えれば、リスクは確実に低いほうがいい。

また、この原本の方がデータよりも大切という考え方は、カードゲームのカードにも当てはまる。
しかもカードゲームのカードは、傷から守るために透明で反射しやすい「スリーブ」と呼ばれる袋に入れられて保護されていることもあって、これまた反射しやすい。
さらにはレアカードはキラキラとした加工が施されているものもあって、メルカリなどのサイトに出品しようとした際にも自分が映り込んでしまったり、キラキラ部分を撮影しようとした時にきれいに撮影できなかったりといった悩みもあるそうで、自分が作った道具の使い方なのに、ツイッター上でたくさんの声を頂いて勉強になるばかりだった。

無反射ガラスと比べたらどうなのか?

「無反射ガラスやアクリルと比べたらどうなんだろう?」

そんな声もTwitter上でコメントとして多く頂いた。
実は、本やプリントをデータ化するために低反射シート同様に加工を施された無反射タイプのガラスやアクリルが世の中には既にある。

それはもちろんレシートスキャンボードを作る上で把握していたけれど、改めてどれぐらい使い勝手が違うのか気になったので、気軽に購入できるヨドバシカメラの無反射ガラスを試して見るべく購入してみた。

左が低反射シート・右が無反射ガラス

はっきりいって、透明度においては低反射シートと比べても無反射ガラスの方が高い。これは想像していたとおりだった。カラーの資料やプリントなんかを撮影するのであれば、無反射ガラスの方が原本の色味をしっかりと表現することができる。

一方で、白黒のレシートのような紙ものであれば、そこまで大きな違いは感じられない。スマホのアプリが明るさなどを修正するため、レシートのスキャンにおいては十分低反射シートが役に立つことが再確認できた。

一方で低反射シートのメリットが感じられたのは、天井照明の反射を試した時だった。
実はうちのお店は建物の中心部に位置しているため、植物に効きそうな太陽光の代わりになるLEDをガッツリ天井に設置していて、その光が当たっているのだけど、照明の形がしっかり映り込む右の無反射ガラスに対して、左の低反射シートはほとんど映り込みを感じさせない。
これは、元々天井照明の反射対策を施されてできあがったデスクマットの素材特性が大きく出た結果なのではないかと思う。

また、天井照明や自分自身の影が写り込まない様に撮影することを想定して、垂直にして使用してみたところ、無反射ガラスはある程度撮影者の姿(赤いパーカーを着た私)を映してしまうこともわかった。

この点についても、低反射シートであれば無反射ガラスに比べて映り込みを押さえることができる。
これは、カードを出品するために撮影する際、自分の姿や部屋の様子が映り込まないというメリットにもつながると思う。

その他に考えられるのは、持ち歩きやすさや取り扱いやすさの違いだろうか。
無反射ガラスはどうしても割れるリスクがあるため、気軽に持ち歩いたりすることは難しいし、保管にも注意を払う必要がある。その点、低反射シートは薄くてかつもともとデスクマットだったこともあって丈夫にできている。
また、価格面でも低反射シートは400円(約223mm✕高さ320mm)に対して、同じくらいのサイズの無反射ガラスが1,210円 (四切 254mm×305mm)と3倍近く変わることも比較のポイントになるかと思う。

このように、無反射ガラスと低反射シートは同ジャンルのものではあるのだけど、性能面や価格面で大きな違いがあることが、実際に使用してわかった。
どちらが優れているかというよりは、使うロケーションによって使い分けるものだと思える。

使う人が開く道具の可能性

レシートを効率的にスキャンしたいという思いから生まれた道具が、まさかツイッターでたくさんのご意見をいただくことで、新しい使い方を与えてもらえるだなんて、作った当初は全く考えてもいなかった。

もしかしたらまだまだ他にも、面白い使い方が見つかるかもしれないので、見つけた方はぜひコメントやツイッター上で教えて頂ければ嬉しい。

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