Lomokie Diary #44🇬🇭「財布に紐を、財布の紐を」
1978年にリリースされた、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのSeptember。ディスコソングとして有名で、テレビのCMや野球応援にも使われています。どこかで聴いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。イントロ部分の、喨々たるラッパの響きがたまりません。
さて、"Do you remember?"からはじまる歌詞に耳を傾けると、"Now December,"というフレーズが出てきます。どうやらこの曲の主人公は、12月のクリスマス時期に9月の某日を回想しているようです。
まさに今聴くべき一曲。
というわけで私も、彼に倣ってここでひとつ、9月の思い出を振り返りたいと思います。
はじめてのガーナ国内旅行
今年の9月下旬、学校のバケーション期間を利用して、セントラル州ケープコースト以西に住む隊員仲間を訪ね歩きました。Lomokieにとってはじめてのガーナ国内旅行です。
セントラル州(ケープコースト・エルミナ)
カクムナショナルパークでは森の中をハイキングし、世界遺産であるケープコースト城やエルミナ城では奴隷貿易の歴史を学び、それはそれは健康で文化的な最高の旅でした。思い出の数々はこちら↓
そのなかで、振り返っては頭を抱えざるを得ないできごとがいくつかあります。本記事の本題はここからです。
Case1 動揺した土曜日
旅行2日目、土曜日の午前中。
この日の行先は、セントラル州よりもさらに西にあるウェスタン州。目的地に到着し、トロトロ(乗合バス)を降りて朝ごはんを買おうとしたところ…
(あれ、財布がない?)
あるはずの財布があるはずの場所にありません。
頭が真っ白になりました。
何度探しても歩いてきた道を辿っても見当たらないし、先程まで乗っていたバスは既に走り去っています。
その場で持ち物すべてを取り出したい衝動に駆られましたが、そこは人通りの多いロードサイド。そのため、とりあえずは一縷の望み(きっとどこかにあるはず…)を抱いたまま隊員仲間の自宅に移動し、落ち着いてから確認することに。
そして運命の瞬間。
仲間たちに見守られながらリュックサックをひっくり返すも…
うーん、やっぱりどこにもない!
再び頭が真っ白になりました。
おそらくトロトロ(乗合バス)内でお金を払おうとした際に、椅子の隙間に落としてしまったのだと思います。状況的に、前後にも乗客はいましたが、彼らによる盗難の可能性は限りなくゼロに近い。
なお、その時財布の中に入っていたのは、現金200セディ(約2,400円)、ガーナカード(日本のマイナンバーカードみたいなやつ)、外務省IDカードです。お金は小分けにしてリュックサックのあちこちに入れていたので、財布を落としたからといって全財産を失うことはありませんでした。そこは不幸中の幸いです。問題は、ガーナカードと外務省IDカードの紛失。
急いでJICAガーナ事務所のボランティア調整員さんに電話で報告をしました。
そしてその4日後、任地へ戻るやいなや警察署に行って紛失届を作成してもらい、首都アクラでガーナカードと外務省IDカードの再発行手続きをおこないました。
ガーナにきてから警察のお世話になったのは、今回がはじめてです。
「ガーナカードなくしました」と言うと、「このブレフォノ(外国人に対する呼称)ガーナカード持ってるらしいよ!」というところでまず一旦盛り上がりました。いやまぁ私が持ってるのはNon-Citizenタイプですが。
そして本題から逸れて現地名の話になり、「Lomokieの意味ちゃんと分かってる?」といつもの口頭試問。「ロモビアウェ氏族の長女につけられる名前ですよね。私の名付け親がロモビアウェの人で、私は日本からここにやってきたはじめてのFemaleです。それでこの名前をもらいました。」といつもの回答。すると、「おお、この地へようこそ!キミのことは俺たちが守るから、なにかあったらいつでも言ってくれ!」と署長さん(っぽい偉い人)。握手を交わしました。Lomokieの由来を知っていることは、時として我が身の安全を保証してくれるようです。何はともあれ、あと1年4ヶ月間お世話になります。
警察署でのやり取りを経てガーナレベルがまたひとつ上がったような気がしますが、首都でのガーナカード再発行代705セディ(約8,460円)はかなり痛い出費でした。
反省し、現在は財布をショルダーバッグに紐で括りつけて肌身離さず持ち歩いています。
なお、この紐付きの財布は隊員仲間が予備として持っていたもので、譲ってもらいました。感謝。
Case closed.
Case2 ドネーションどないしよう
財布をなくした次の日、世界遺産であるエルミナ城に行った時のこと。
見学を終えて帰ろうとしたところ、「ガーナの子どもたちの教育支援のためにこの貝殻を買ってくれない?」とお兄さんふたりがこちらに近づいてきました。
貝殻と一緒に渡された名簿には、寄付した人の名前とその人たちが寄付した金額がずらっと並んでいます。
(わぉ、みんな200セディとか150セディとか払ってるのか…そこまでの大金は出せないけど、100セディ(約1200円)なら…)
Lomokieは100セディを払う事に決めました。そしてこの貝殻をゲット。
ところがしかしその後聞いた話によると、彼らが教育支援をしているという話は事実と異なり、渡された名簿はそれを事実と認識させるためのツールであるとのこと。
そうだとしたら、名簿を見て"みんなが払っているから私も払おう!"と思ってしまったLomokieはまんまとそれに引っかかったことになります。なんてこった。
とはいえ、もしかしたら本当に教育支援をしている人たちかもしれません。そうだとしたら疑ってしまって申し訳なく思います。真実はわかりませんが、私のおこないが彼らのハッピーを生み出したのであればもうそれでよいです。
なんなら、日付(24-09-2023)と名前の入った貝殻を貰えたことで私もハッピーになりました。いい記念品として今も大事に部屋に飾ってあります。
これはもうWIN-WINでしょう。
彼らもハッピー私もハッピー。
ただ、次また同じ機会があるならば、今度は少しだけ財布の紐を締め、30セディ(約360円)くらいにしておこうかなと思います。
Case closed.
Do you remember?
ここまで9月のLomokieにふりかかった案件を振り返ってきましたが、どうやらこれからの時期(クリスマス休暇から年末年始にかけて)は、犯罪事案をはじめとするさまざまな被害のリスクが普段よりも高まるそうです。"人の移動が多く発生する時期であり、人々の心の隙が生まれやすい時期でもある"とのこと。JICA本部やガーナ事務所からは、繰り返し注意喚起がなされています。
たしかに言われてみれば私も、クリスマスツリーを見れば思わずカメラを向けてしまうし、電話の呼出音がジングルベルだと相手に好印象を持ってしまうし、暇さえあればマライア・キャリーをリピートしています。
そういう時期ですよね、クリスマス。
この浮かれた心につけこむ輩がいるのも納得です。
そんな今こそ、冒頭の曲の主人公のように問いかけることが大事なのではなかろうか。"Do you remember? 9月のことを覚えているかい?"と。
財布に紐を付け、財布の紐を締め、あの時と同じ過ちを繰り返さぬように…
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これからも気の向くままにちょbitずつ投稿していきますので、ガーナでの暮らしについて、一緒に知っていってもらえたら嬉しいです。
JICA海外協力隊 2022年度4次隊 まこし
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