見出し画像

麻雀の流行戦術の移り変わり

人間同士が戦い、相手を負かそうと考える以上、どんなゲームにも戦術というものが生まれる。日本人にとって一番なじみ深いのは将棋だろうか。角換わり、相掛かり、矢倉…将棋をよく知らない方には聞き慣れない言葉かもしれないが、将棋に多くの戦術があることは皆様ご存じのことと思う。

そして当然のことながら麻雀にも戦術はある。麻雀が世に広まると共に、戦術も発展してきた。過去の戦術の流行を振り返りながら、将来的にどのような戦術に移り変わっていくのかを考察してみたい。

麻雀黎明期

日本に麻雀が伝わってきたのは明治時代の終わり頃。そこから全国的に広まるようになったのは関東大震災以後だったという。昭和の時代は麻雀と共にあった。

とはいえ昭和初期はそれほど記録が残っていない。麻雀が流行を見せ始めるのは戦後、阿佐田哲也の『麻雀放浪記』が連載されて以後であろう。このころはまだツキや流れというものが一般的なものとして流通しており、麻雀をゲーム的に解明しようという気はさらさら見られず、ツキや流れの中でいかに手役を作るか…ということに重きが置かれていたように思う。

いわゆる現代では「オカルト」と言われている戦術…というか戦術の前の話であり、まだ麻雀は抽象的な世界から抜け出せていなかった。

昭和後期~平成初期

その後1990年代に入ると、ようやく麻雀に科学的な態度を取り入れ始める動きが出てくる。天野春夫という人物はツキや流れは抽象的なものに過ぎず、それらを取り入れることで判断を鈍らせてしまっている、と主張した。これが現代でいわゆる「デジタル」と言われていることの先駆けである。

ここから完全にデジタルというものが世の中に出てくるには待つ越野時を要する。2004年、とつげき東北の『科学する麻雀』が刊行。これが現在のデジタル麻雀の第一歩となる書だと言えよう。このころインターネットが徐々に普及するようになり、その結果インターネットを介して麻雀が打たれるようになった。ネット麻雀の黎明期である。

ネット麻雀が通常の麻雀と比較して優れている点、それは「データを残せる」という点。それまではオカルト的な主張をされたとしても、実際にデータを出すことが出来なかったので、結局のところ話し合いは平行線となって終わってしまう。

しかしネット麻雀で多くのデータを集めることによって、ようやく「オカルト」的な事象が実際には起こっておらず、人間の勝手な思い込みであることが証明されてきたわけである。

こういったデータがようやく出てきたころ、麻雀界では「速度」を重視した戦術が流行し始めた。データを集めた結果、麻雀におけるリーチの価値・テンパイの価値というものがどれだけ高いか?ということが分かり始めたのだ。その結果、とにかく相手より一巡でも早くリーチ/テンパイができるように手牌を目一杯に持ち、守備意識は最小限にする…という打ち方が流行していった。一時は先切りする奴は弱いとまで言われるほどであった。

麻雀の統計的解析

しかし、より麻雀のデータが集まり統計的に解析がなされていく中で、速度一辺倒の麻雀には問題があるのでは、ということが分かり始めてきた。速度を第一にしてテンパイを組むということは、手役を追わないことを意味する。すなわち打点を落としてでも先にアガる、という戦術だ。

だが、あまりにも速度に偏った麻雀は打点機会を喪失している、と考えられ始めてきた。麻雀において速度というのはもちろん重要なファクターの一つではあるが、あくまでも重要なのは相手との相対的な速度。相手よりメチャクチャに早く手を作る必要はない。少しだけ相手に先んじれば良いのである。

つまり相手がアガるギリギリのところまで打点を追って、それからアガるようにすれば、単純に速度を追うよりも点数が稼げるようになり、ひいてはそれが勝ちにつながりやすくなる…という寸法である。

速度を追い求める時代から打点の価値も見直されるようになり、それらのバランスを取ることが現在では求められるようになってきている。

麻雀AIの登場

ここから先は

2,276字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?