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『日向坂で会いましょう』が営むサークルコミュニケーション

悩みの多くは「人間関係」が原因なんだって。占い師が云うには、恋愛でも仕事でも悩みの根本を探ってっていくと、結局ここにたどり着くそうだ。

個々の価値観や目的の相違などで引き起こされる軋轢が不利益をもたらす事を分かっているからこそ人々は日々思案する。悩むという行為は、人が人である限り変わらない、バベルの塔が神の怒りを買うよりも遥か太古から変わらない人間という生物の営みなのだろう

さてそんな悩める人々がここ『日向坂で会いましょう』【真剣10代なやみ場】企画で膝をつきあわせて悩みについて考えていた。以前視聴者数が少ないと指摘された10代視聴者からの人気を獲得するためモニター調査として日向坂46の10代メンバーを知ることで、世間の10代への理解を深めようとした当企画。これがすっごくおもしろかった

「わたしの取扱説明書」「ただ聞いてほしい!10代の悩み」の2テーマで打ち明けられた悩みの数々はこの企画の狙い通りに、日向坂46のメンバー、アイドルという存在としての悩みではなく、ただ懸命に仕事に取り組んでいる10代のありのままを浮き彫りにしていた

わたしはこのように扱われたい、オードリーにこう呼ばれたい、わたしの理想こそ理想的であると主張する小娘たちは、社会とは何たるかを理解している人々からみれば未成熟にみえるし、わたしも彼女たちの気持ちに共感すれど同調できないと思ってしまった

しかし、それはあくまでわたしが感じるリアルな感触であって、彼女たちがリアルタイムで感じていることもまたリアルな感触である。この企画は齟齬を輪の中心に据え、これらをどう扱っていくのか、という現在進行形の対話とそこに現れる人物像を推測しながら見届けられたところに見応えを感じた。(見たことはないが元ネタの番組もそうなのだろう)

今回見てて思ったのは、今回登壇した10代メンバーが行われた自己主張というのは一方的な押し付けではなく、ある意味ビジネスライク、取引のような感覚なのだろうと推察した。ここからは大きく間違えてることも承知の上でわたしの考えを述べていこう。

彼女たちにとってオードリーの2人は、尊敬はすれど人として対等であるという認識がありそうだ。これはオードリーに限らず「人というのは平等で対等である」という、大雑把に括ってしまえば10代をはじめとする若者の基本的通念なのだろう。テクノロジーによって解消された情報格差や伸長した高い共感能力学校教育などによって、人間とはそれぞれがそれぞれに凸凹していてみんな違ってみんな良い、というのをみんなが認知してる状態からくる人間観なんだとおもう。情報があふれかえっているおかげで相手の事を理解するとき、わかったつもりになれるし、わかるし、わかりすぎてしまうのだろう。わかりやすく言い換えれば、空気を読む力に長けているのだ。

この環境下で彼女たちが行うコミュニケーションというのは、相手の情状を酌量してお互いの利益が成り立つように上手く主張を提案するという手法が理想として自然と目指すようになるのだろうと、「昔の考え方は一回忘れていただいて、」と念を押す石塚瑶季をみて思った

彼女は相手を推し量った内容すべて口に出していたが、他メンバーの「わたしはこう呼ばれたい」「わたしを褒めてほしい」にもこういった「わたしはあなたの事情をわかってるよ」と理解を示しながら自己主張しているように感じ、以上によりわたしは彼女たちの主張とは取引であると結論付けたわけである。個人的にこのコミュニケーション方法はわたしの理想とする形であるので好きだ。

呼び名について悶着合った場面で清水理央が印象に残っている。石塚瑶季は「瑶季」と呼ばれているのに自分は「清水」と呼ばれていることに対して、ごく短い躊躇いのあと「嫌です」と態度を表明したのが実に彼女らしかった。すこしずつ彼女の事を知ってきたが、清水理央は戦うべきところでちゃんと戦える人なのだ

一旦関係ない話をするけど、宮地すみれが可愛い。雰囲気が到底10代には思えないんだけど、あの大人びた佇まいは何がそうさせるのだろうか。「ここに来ただけで偉いね~」で脳が溶けるかと思った。「○○できてえらいね~」系構文には若干の苦手意識があったのだが、もろとも溶解してどろどろになったココロに宮地すみれが流れ込んできた。宮地すみれが占い師になって「がんばって偉いね~」とうんうん言いながら話を聞いてくれたら悩みまで溶かしてくれそうだ。宮地すみれさん、宮地すみれさんが気になって仕方がないです。どうしたらいいでしょうか?全然大丈夫でしょうか?

話を企画に戻すが、こういう企画の時に若林正恭という存在はとても大きく頼もしい。悩みに悩みつづけてきた彼は悩みを悩みのまま受け止めてくれるし、解決策を尋ねられてた時も「実は俺もこう思ってて…」と一緒に悩んでくれる彼の存在があったからこそこの企画は成立するだけでなく大きな成功を収められたとおもう

余談だが、若林が「生肉のままボンと出した方がいい」という話をしてるとき脳裏に加藤史帆がよぎった。加藤史帆は番組初期からいまだに生肉である

今回は2024年ベスト回のひとつになった。アイドルやMCといった肩書をおろしたひとりひとりの人間が対話で生み出した人間関係が紡ぐ風味がとても興味深かった。もう一度見たい気もするし、2回目は見たくないような、そんな気持ちにさせてくれるとても興味深い回だった。

おしまい。

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