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遊び尽くしてやろうか、人生 / DIALOGUE+LIVE 2024「LIFE is EASY?」感想

「そうじゃないことくらいわかってる、」

正月休みが明けて日常へ引き戻される直前、1月7日、パシフィコ横浜 国立大ホールで開催されたDIALOGUE+LIVE 2024「LIFE is EASY?」に参加してきた。座席数は5000席超、DIALOGUE+史上最大キャパシティでのワンマンライブである

DIALOGUE+のライブはとにかく楽しいこの一言に尽きる。このライブもまず最初に思ったのは「楽しかった」だった。

2023年はジャンルや形態問わずたくさんのアーティスト、ライブ、フェスに参加したのだが、DIALOGUE+は単独とフェス合わせて5回見に行けた。そして、見る毎に最高点を叩き出しつづけている。人を楽しませるのにい必要なモノ以外すべてそぎ落とし過密を極めたライブはほぼ歌って踊りっぱなし。先日ついに約1時間30分で19曲を披露する領域に達した

DIALOGUE+公式Xより

声優やアニメ界隈に限定すれば、トップクラスに楽曲、ダンス、演出を誇る声優ユニットのひとつであることは間違いない。本稿ではわたしが感じたその理由や要素など書き置いていく。ぜひお付き合いください。

今回のライブでは楽曲面での演出が強く印象に残っている。沢口かなみ先生が手掛けるコミカルで数学的なフォーメーションダンスを見ることは座席の都合により難しかったが、そんな不運を不運にさせないのも彼女たちのライブ最大級のおもてなしである

DIALOGUE+公式Xより

演出のひとつに”鬼繋ぎ”と呼ばれる、1小節の余談もはさまず曲同士を接続する必殺技がある。つくりあげた熱気を即座にバトンパスするこの連撃は持ち時間が限られたフェスでは時短テクになったり、様々な場面でここぞとばかりに繰り出される。

それは『MAHOROBA-Deli』→『うしみつあっパレイド』の鬼繋ぎで起こった。「終わらない山積みのタスクに圧殺されかけても不出来でもいいからやっていこうぜ」という曲と「夜が明けるまでキミと輪廻の上で踊り明かしたい」という曲を鬼繋ぎする。

ノルマだらけのスケジュール帳そっと閉じて月夜に集いし私たち

DIALOGUE+『MAHOROBA-Deli』

本来の歌詞はこうである。それがこう、

ノルマだらけのスケジュール帳そっと閉じてうしみつに集いし私たち

うろ覚えなので不確かです


シャレてる~~~~~~~~!!!!!!!!

接続詞であり、イントロデュースになる天才的なアレンジ。これまでは間髪いれずに接続するだけだった鬼繋ぎにこんな可能性があったとは。ちょっともう、言葉が出ないくらい見事だった。

もうひとつ忘れられない演出がある。それはアンコール2曲目『ぼくらのユニバース』の導入

アンコールに応え、新曲『イージー?ハード?しかして進めっ!』を披露したあと、内山悠里菜が活動の振り返りと未来の展望を語り、ステージは全編終了の雰囲気が流れていた。「本日はありがとうございました」と〆の挨拶をすませ、順々にステージ袖へとはけはじめるメンバーたち。

と、その刹那、バンドが大音量で唸りをあげて『ぼくらのユニバース』が演奏され、メンバーは踊りはじめる

おもしれ~~~~~~~~!!!!!!!!
「終わると思った?残念、まだやります」ってか。こんなの見たことない。

なにがスゴいってメンバーとバンドの阿吽の呼吸である。バンドが鳴ると同時にメンバーはダンスに入っていた。ダンスが出とちったら台無しになるし、バンドだけが鳴っただけではおもしろくない。この演出はタイミング命であるはずだ。でおそらく内山悠里菜が語った内容は台本ではなくその場で感じて吐露した本音でしょ?とことんまでライブ感を追求している。

他にも照明や映像や音響、楽曲アレンジなどDIALOGUE+史上最大キャパに臨むために万全の準備をしていたことが演出からビンビンに伝わってきた。

何回もライブに足を運べば当然何回も聞く曲が出てくる。それを飽きさせないために変化を加えるのが演出の役割であるのだが、演出が生み出すのは興奮と熱狂だけではない。『おもいでしりとり』でそれを強く感じた。直前のMCで語られた村上まなつの「LIFE is EASY?」の問いかけに対する前向きなアンサーも良かった。

この曲は順番によって表情がすごく変化すると思っていて、アップテンポ的に使われたりもするし、今回は村上まなつのMCも相まって、しっとりとしたバラードのような色味を見せた。曲のアレンジを大胆に加えてはいないのにそう響いたのは、仕掛けによって生み出され刻々と変動する文脈によってその瞬間の風味を醸し出したからだろう。定番曲は定番曲だけど定番の味ではないところが、足繁くライブに通っても尚またライブに行きたくなるDIALOGUE+の魔性といえる。

個人的にはバラードが中盤に配置されてるのが好きだ。ライブを感動的に〆るなら本編またはアンコール最後に配置するのが望ましいだろう。だけどそれではまるで今回で終わってしまうような気がして、次も来たい気持ちが半減してしまいそうで。しみったれを嫌うかのようにバラード曲を中盤に配置されてくれるのは、彼女たちの上がり調子と少しの感傷を表してるかのようでわたしは好きだ。

ここまで具体例をあげながらライブの楽しみを語ってきたが、ここで抽象的な話をしたい。

今回パシフィコ横浜には5000人超のお客さんが来場した。このユニットのお客さんはみんな音楽が好きなのは会場の様子からとてもよくわかる。サイリウムを振りかざしたり、身体を揺らして踊ったり、ヘッドバンギングしたり。音楽を聞いた時に湧き上がる衝動が抑えきれない様子が背中から伝わってくる

それなのに大多数が楽器を弾くことができないことだろう。かくいうわたしも去年からドラムレッスンに通いしてるけれど、1曲だって満足に叩くことは叶っていない。音楽にノることはできても音楽を発生させる手段は持ち合わせていない。こんなにも好きなのに

DIALOGUE+のライブに参加すると不思議と楽器を弾いて音楽を操ってるような感覚がする。握りしめたサイリウムから、咲かせた手のひらから、振りまわした頭で音楽を操ってるような気がしている。

DIALOGUE+のライブの醍醐味は様々なアイデアによってその瞬間にしかない表情へ楽曲を千変万化させ、楽器を持たざる者がライブ参加という形で音楽を同期し、時に自分の想像をも超えた景色まで見ることができる遊び心にある。これは今回のライブタイトルが問いかけた「LIFE is EASY?」に立ち向かう武器であり、条件や環境が限られて生きていく中でで時には苦汁を味わうかもしれないけれど、その人生をどう遊ぼうか。遊んでしまおうか。遊び尽くしてやろうか。そんな野心をDIALOGUE+はわたしの両手で抱えきれないほど常に放出している。

こんな体験はなかなか味わえないし、いま・ここで・DIALOGUE+だから味わうことができる体験だとおもう。DIALOGUE+史上最大キャパシティでのワンマンライブDIALOGUE+LIVE 2024「LIFE is EASY?」は本当に素晴らしいライブだった。TVアニメ『弱キャラ友崎くん』に提供された『人生イージー?』、そのアニメの2期に提供された新曲タイトルが『イージー?ハード?しかして進めっ!』とは、なかなか言ってくれるじゃないか。

最後に、今回のライブタイトル「LIFE is EASY?」に対してライブに参加したわたしなりの回答を示して筆を置くことにする。ここまで読んでくださってありがとうございました。


「そうじゃないことはわかってる、でもDIALOGUE+がいるからなんとかなりそうだ」


おしまい。


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