｢ねえ、マスター聞いてくださいよ｣

ミナミは店に入るなり私に不満げな表情で話しかけた。

｢まあまあ、落ち着いて。とりあえず何か飲みなさいよ｣
私はそう言いながらも、彼女がいつも注文するピーチウーロンの支度にとりかかった。

｢彼ったら酷いんです｣
興奮する彼女を宥めつつグラスを彼女の前に置き、私は話を聞いた。

要約すると彼女の話は以下のようなことだった。

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先日、久しぶりに会った彼氏から、次の休日に会社の後輩の悩み相談を受ける事になったのだが、その女の子(Ｃ子)と２人だけで会うのは君に申し訳ないから君にも一緒に来て欲しいと言われた。

ミナミはそんなことに付き合うのはイヤだと断ったが、彼氏がどうしても来て欲しいと言うので渋々ではあるが承知した。

いざ当日、彼氏と一緒にＣ子と会って話を聞いてみると、Ｃ子はひたすら自分の彼氏(Ｄ男)の愚痴を語った。
あまりにもどうでもいい話だったので帰りたかったが、彼氏は真剣にＣ子の話を聞き、同調している。
ミナミはそんな彼氏にも腹を立て、先にひとりで帰ろうとする。
彼氏は引き止めようとするが、Ｃ子は平気な顔で
｢どうぞ先にお帰りください｣
｢先輩(Ｄ男)に聞いてもらえればそれでいいので｣
｢これまでも昼休みに先輩にはいろいろと話を聞いてもらっているし、仕事中もLINEで相談したりしてるんですよ｣
｢ホント先輩はやさしいし頼りがいがあって信頼しているんです｣
などと生意気な口調で言ってきた。
頭にきたミナミはひとりで店を飛び出した。

その日の夜、彼氏から電話があり、先に店を飛び出して行った事を咎められた。
大人げないとも言われ、口論になった。

それからミナミは数日間、彼氏からの電話を無視している。

ミナミ  25歳　　彼氏  27歳
ミナミと彼氏はつきあい始めて約１年
Ｃ子  19歳　　Ｄ男  19歳
彼氏とＣ子、Ｄ男は同じ会社勤め

ミナミの怒りポイント
①　同じ会社の後輩とはいえ、女と仕事以外のLINEのやりとりをしたり、ふたりで昼食をとっていること
②　はじめは彼氏がＣ子とふたりきりで休日に会おうとしていたこと
③　Ｃ子のそんなプライベートな話に彼氏が付き合い、わざわざ休日にまで相談にのること
④　彼氏がＣ子とふたりきりで会うことはやっぱりミナミに悪いと思い直したのは良いが、そこに何故かミナミを巻き込むという無神経な判断をしたこと
⑤　Ｃ子のミナミに対する無礼な振る舞い、言動
⑥　Ｃ子が彼氏を誑かそうとしているのではないかという疑念
⑦　そんなＣ子に対し、彼氏が下心を持っているのではないかという疑念
⑧　彼氏が自分のしている事に何の悪気も感じておらず、正当化していて、更にミナミの方が大人気なく間違っていると罵倒したこと

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｢ねえマスター、どう思います？｣

｢あー、そりゃ酷いね！彼氏もＣ子もクズだね｣

｢そーでしょ、わかってもらえます？！｣

｢もう別れちゃいなよ、そんな男とは｣

｢わたしもそう思って別れるつもりで電話も無視してるんです｣

｢そう、そうした方がいいよ。でも別れるのならちゃんと伝えなくちゃね！｣

｢はい……でももう話をするのもイヤなんです｣

｢でもそこは頑張ってはっきりと伝えないと｣

｢わかりました……ちゃんと別れたいって伝えます｣

ミナミは３杯のピーチウーロンを飲んで帰って行った。

この時、私はミナミは彼氏と別れられないだろうと予想した。

そして５日後、ミナミは涙目でまた店を訪れた。

ミナミの相談(後編)へ続く