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白昼夢


庭で薄いピンクの掛け布団が、風にひらひらと揺られていた。

僕は焼き鮭をつつきながらその掛け布団を眺め、気持ち良さそうだななんて思っていた。

しばらく眺めていると掛け布団が大きく翻り、視界から消えた。そして掛け布団があった場所から紺色のワンピースのようなものを着た女性がいた。

その女性は私の視界の右側へ向かって、とてもゆっくりと歩いて行った。家の玄関がある方向だ。

女性は初老のように見えた。腰全体が曲がっていると言うよりは、肩から首のあたりを項垂れているような感じだった。

玄関の扉は開け放たれている。お客ならそろそろ入ってくるか、声を掛けてくるはずだ。

台所から母親が戻ってくる。一応、着ている服を確認するが、クリーム色のTシャツに膝丈のジーンズ。やっぱり母親ではない。

席を立って玄関を覗く。誰もいない。

居間へ戻り窓際に立ち、布団が揺れていた場所を見る。布団は落ちていないし、そもそも布団を掛けておくような物も置かれていない。

母親に訊ねる。

「庭に布団干してなかった?」

「いつもベランダに干すから、庭になんて干してないよ」

紺色のワンピースのようなものを着た女性ももう見あたらない。

この季節にしては爽やかな風が、庭の隅の紫陽花を揺らしているだけだった。

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