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【毛沢東戦略】中共軍の侵攻作戦5ー書かれなかった侵攻戦略

毛沢東「中国革命戦争の戦略問題」は、1936年12月頃に執筆された。
本論文では、国民党軍の包囲攻撃に対する中共軍の防御戦略について重点が置かれている。

しかし、一見したところ、この論文には「侵攻」に関する記述が見当たらない(※)

国民党軍との戦争に勝利するためには、敵の攻撃からの防御だけでは不十分であり、敵支配地域に軍事侵攻し、敵中枢地域を占領する必要があるだろう。
こういった「侵攻」戦略について、記述されていないようなのだ。

これは、執筆時期と関連があるように思われる。
執筆時期の1936年末は、西安事件が起きた時期である。
中共は、国共合作に向けて動き始めていた。
このような時期に、「侵攻」という攻撃的なテーマを扱うわけにはいかなかったのではないだろうか
つまり、国民党を刺激することを防ぐため、あえて「侵攻」戦略について書かなかった可能性が指摘できる。

※ 敵の包囲攻撃(の繰り返し)がいつ終わるのか、どのように反攻するのか、若干の言及はある(51項)。
しかし、記述量は極めて少なく、内容は詳細ではない。

参考文献

毛沢東「中国革命戦争の戦略問題」
(戦略研究学会『戦略論体系 毛沢東』芙蓉書房出版)


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