ジャニーズ事務所問題について一言

ここ数ヶ月、特に気にかけていた事案で、このままやり過ごすこともできただろうし、またその方が得策ですらあるような状況なのだろうけど、私は幸か不幸か音楽業界とは何の利害関係もない立場だし、一人の大人として言うべきことは言わないと前に進めず何度でもここに戻ってきてしまいそうなので、自分のためにも一言書き残しておく。
私自身も辛いので、できるだけ要点を絞って。

※具体的な詳述は避けますが、やはり主題は性暴力についてなので、心が苦しくなる人は無理して読まなくて大丈夫です。余裕があり落ち着いているときに、ご自身のタイミングでどうぞ。


まず、喜多川擴 (きたがわ ひろむ)氏の性加害疑惑について、こちらのBBCの報道がきっかけになっていると思う。

BBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」【日本語字幕つき】


これを見るまでは、私自身も確信があるわけではなく、多くの人たちと同じように「疑惑」という段階だったが、性加害はあったと確定していいと思う。

なぜ、私も含めて、噂程度で事実が共有されてこなかったのか。
報道されなければ、知るきっかけすらない。
ごく一部を除いて、日本の報道機関はこのことを伝えてこなかったし、今も伝えていない。
だからこそ、今回も海外(BBC=英国の公共放送)からの問題提起なのだろう。

性暴力はいかなる理由があったとしても絶対に許されるものではない、それが私自身にとっても大前提だし、その点だけは共通認識であってほしいと強く願っている。


しかし、絶大な権力と金銭的優位性を背景に、未成年の子どもたちが性被害に遭い、受益側として結託するメディアは不都合な面は黙殺し、支持者たちは綺麗なところだけを愛で実情は見て見ぬふりをする。
利益構造が完全に確立されていて、私を含むその他大勢の人たちも、わざわざリスクを負ってまで追及しようとは思わない。
誰も何も言えない構図が作り上げられ、完成されていた。

疑いを持たれている人物はすでに亡くなっているが、今からでもきちんと捜査したうえで裁かれるべきだし、そうした当然の手続きを取らなければ、この不健全で醜悪な体制は今後も持続するだろうし、第二第三の類似事件が起きても全くおかしくはない。

もちろん自分も純朴な振りをするつもりはなく、芸能という業界においても綺麗事だけでは済まされない場面もあるのだろうと想像はつく。
だが、名声と経済的成功を手にするためなら、繰り返すが未成年の子どもたちは性的虐待に遭っても容認すべきだ、ということなのだろうか?
ここは明らかに一線を越えていて、怒りを禁じ得ない。

ファンであれば、自分が応援している人が活躍の場を広げて、海外にも進出していく姿を見たいとは思わないだろうか。
もし事務所側もそうした意向を持っていたとしても、性加害問題をなかったことにする態度のままで、その芸能を受け入れる国なり社会があるだろうか?
日本の音楽/エンタテイメントが世界で羽ばたく大きな機会を丸ごと失っているのではないか?




もう一点。
30年近くの音楽好きであり、コミュニティFM内でヴォランティアで音楽番組を放送させてもらっている身から、山下達郎氏の言動とも向き合わざるを得ない。

公平を期すために記しておくと、自分は普段からほとんど日本のポピュラー音楽は聴いていない。
それでも、音楽に親しんでいると自然と耳に入ってくるものだし、一時的に日本の音楽ばかり聴いていた期間があり、山下氏と竹内まりや氏の録音も全てでは無いが聴き進めていた。
どれも掛け値なしに本当に素晴らしい内容で、音楽家としてこだわりを持ち、あそこまで質・量ともに圧倒的な結果を残している人は、少なくとも日本では数えるほどしかいないのではないか。

そのような尊敬を集める存在だからこそ、ご自身の積み上げてきた世界を頑なに守ろうとするのではなく、どんな特別な間柄であったとしてもいけないことはいけない、と彼自身の言葉で言ってほしかったし、またその原理原則を態度で示してほしかった。
しかし、それはただの私の願望だった。

前述した通り、もともと聴く機会はほぼなかったし、自分の音楽番組でも過去に一度も放送はしていない。
なので、これまでと全く何も変わらないと言えばそれまでなのだが、私自身が納得するまでは山下達郎氏が関わった楽曲を番組でかけることは一切ないだろうし、自分で聴くことも、CDやレコードを手にすることもないだろう。
残念で悲しいことではある。

ただ、人は変わる可能性がある。
養老孟司さんが言っていたように、変わるからこそ希望がある。
逆に言えば、今の現状が決して変わらないことこそが、絶望なのだろう。

山下氏が長年に渡り打ち立ててきた膨大な業績、加えて7/9のラジオ番組「サンデー・ソングブック」での発言を鑑みるにつけ、今から彼が被害者側に立って、共に問題の根幹を明らかにしていく方向に変わることはあるのだろうか?
そんな他人の内面までは分かりようもない。ただ、そのことを考える度に、限りなく絶望に近い感情を私は抱いている。

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