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BUMP OF CHICKENも人間だった

アメリカに留学していた19歳の頃、ルームメイトが“jupiter”というアルバムを貸してくれた。

その少し前にヒットしていた“天体観測”は知っていたけど、それ以外の曲は聞いたことが無かった。

歌詞カードを片手に、丁寧に聞き進めたくなるようなアルバム。

その中の“Title of mine”という曲を聞いた時、わけもわからぬうちに涙が溢れて、そのまま号泣した。

優しくて強い歌声と歌詞とメロディが、私の心の中の触れられたことがなかった部分、だけどきっと早く見つけて欲しかった部分を、突然わしづかんだ。

どうしてこんなに涙が出るのか、苦しくなるのか、ひとしきり泣いた後でたくさん考えた。

そして新しい気持ちが生まれて、それを言葉にしたり、行動したりもした。

そうやって前に進めた人生がある。

BUMP OF CHICKENは、私にそういう経験をさせてくれる。

私の人生のあらゆる場面に、彼らの音楽はいつもある。

アメリカで、東京で、大阪で。

それぞれの曲を聞けば、それぞれのシーンが生々しく蘇る。

先に書いた“Title of mine”と出会ったラスベガスの薄暗い部屋、毎日へとへとで運転したサンディエゴのフリーウェイ、初めて東京で住んだ狭いアパート、大阪の稽古場への道。

その時の天気やにおいや気持ちまで、体感を伴って思い出せるのが、音楽のすごいところだなと思う。

ライブには2回行ったことがあったけど、いずれも会場の後方から豆粒くらいの大きさの彼らを拝んだような感じで、それでも生の彼らの存在には心が震えた。

そんなBUMP OF CHICKENは今、結成28周年を記念して、16年前に開催した「ホームシック衛星」というライブツアーのリバイバルツアーを行っている。

その、北海道公演2日目。
2024年3月31日。

私はなんと、ステージ間近の前から4列目で、そのライブを観ることが出来た。

普段ドームツアーをしている彼らがアリーナツアーをするということは、そして16年前のリバイバルツアーということは、チケットは争奪戦どころの騒ぎじゃない。

もちろん私もBlu-ray Disc購入特典先行から一般先行から何から何まで挑んだけど、惨敗だった。

でも、このライブは絶対観なきゃいけないし、観られないなんて信じられないし、いや、やっぱり絶対に観られるはずなんだ!

と、私の謎の力が発揮され、あれよあれよと北海道公演の前から4列目に導かれたのである。

これである。

リセールに出してくださった知らないあなた
本当にありがとうございます…!


目の前に、まさに肉眼で見える目の前に、彼らがいる。

普通に歩いてるし、時折マイクを通さずとも笑い声や咳払いが聞こえたりする。

本当に存在してるんだ、と思った。

何より感動したのは、生で見るBUMP OF CHICKENは、ちゃんと歳を重ねていた。

目尻も下がるし、しわも出来るし、息も上がるし、それはメディアで見る写真や映像では分からないことだった。

同じように、生で聞く藤くんの歌には、昔と変わらない荒っぽさがあることに驚いた。

どの楽曲も難しく、それらを生で、時に即興で歌詞やアレンジを変えながら歌いこなすのも、そうして2時間ぶっ通しで歌い続けるのもすごすぎるのだけど、それ故の荒さが編集無しで伝わってきたことに感動した。

その荒さこそまさに藤くんの想いで、情熱で、それを受け取れることが嬉しかった。

BUMP OF CHICKENは人間なんだ、と初めて思えた。

同じ人間が、こんなにたくさんの素晴らしい音楽を作って、それを届けてくれてるんだなと、28年間続けてくれてるんだなと、当たり前だけど当たり前じゃない、そんなことに打ちのめされた。

同じ人間として、私は何が出来てるだろう?

何がしたいだろう?

そんな風に考え出すと果てしなくて、途方に暮れてしまうけど、そういう時にこそBUMP OF CHICKENの音楽はとてもいい。

生きてきてよかった、と思えた夜だった。

生き方に正解もなにもないってのは大前提で、それでも、これまでこうして生きてきたことは正解だったと思えた。

16年前の私と、今の私。

奇しくも似たようなセットリストのライブを観た私たち。

住む場所も、生活も、考え方も、何もかも違っていて、でもこの同じ身体で生きている私たちが、BUMP OF CHICKENのリバイバルツアーのおかげで繋がった。

あの頃の私や、ラスベガスで号泣していた19歳の私、いろんな過去の地点の私に、そのままで大丈夫だよと伝えたくなるけど、きっと伝えない方がいいんだと思う。

だってそれでも自分でどうにかするんだもん。

そういう奇跡が繋がって、北海道公演の前から4列目にたどり着けるんだもんね。

これからも彼らの音楽と共に、新しい日々を楽しく重ねていって、その先でまた同じ人間として再会したい!☺︎

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2022年に大切な仲間たちと、“Title of mine”を使わせていただいた映像作品を創りました。

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