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#コロナ下だからできたこと 「ペルーの刑務所で作られた服を、なぜ僕が日本で届けるようになったのかをお話します」

新型コロナウイルスの影響で、当初描いていた計画を大きく変更せざるをえなくなったとき、あなたならどうしますか。Webイベント「#コロナ下だからできたこと」に登壇する横浜国立大学4年の林佑紀(はやし・ゆうき)さんは、ペルーの刑務所で囚人がつくった服を日本に届けるという新しい形の国際協力を実践していますが、まさにコロナの大波を受けてしまいました。そこから林さんが取った行動とは? 登壇に先立ちインタビューしました。(聞き手はU22桜井陽)

Q 新型コロナウイルスの流行は、林さんの学生生活にどんな影響を及ぼしましたか?

A ペルーに半年、ベルギーに半年、あわせて1年間留学していまして、2020年2月に帰国しました。コロナで帰国を早めたわけではなくたまたまなのですが、もし帰国が数週間遅かったら2週間の隔離が必要になるという、そういう時期でした。日本に帰ってきて、さあこれから活動しようときに、コロナがあって動けなくなってしまいました。

Q 当初はどんな活動を考えていましたか。

A ペルーの刑務所の囚人がつくった服をポップアップストアを中心に、対面で様々な人に届けようと思っていました。

Q えーっと、「ペルーの刑務所」「囚人」って、いきなりパワーワードなんですけど(笑)

A そうですよね(笑)。話はペルーに留学していたころにさかのぼります。もともとアフリカや南米で活動をしていたり、青年海外協力隊として大洋州(オセアニア)に派遣されたりもしていました。その中で国際協力を徹底的にやり切りたいという思いを強く持つようになりました。

Q なるほど、国際協力の実践のためにペルーに行った、と。

A はい。2019年の春にペルーに渡ったのですが、現地に到着して4日目に友人に連れて行ってもらったショッピングモールで運命の出会いがありました。こぢんまりとしたショップに目がいって、そうしたら、ペルーの刑務所で服役中の人がつくったTシャツなどの服を売っていたんです。

Q もともと見たことがあるブランドとかではなくて?

A いえ。全然知りませんでした。でも、上からの一方通行の支援ではなく、雇用や働く場を提供しながら、服というプロダクトを世の中に出していくという循環の形がすごいなと思ったんです。これぞ新たな国際協力の形ではないかと。

Q それで、どんなアクションを取ったんですか。

A まずはスペイン語を2ヶ月間ほど必死に勉強してから、ブランドのホームページやフェースブックにメッセージを送りました。反応はなかなかなかったんですけど、何回もコンタクトしていたら、2週間後ぐらいに創設者から返信がありました。すごくフランクで「ぜひオフィスにおいでよ」みたいな感じでした。

Q 行ってみてどうでしたか。

A 創業者の彼はフランス人で、フランスの大学院で経営の勉強をしていたときにペルーにインターントリップで来たそうです。彼の友人がたまたま刑務所でフランス語を教えていて、その縁で刑務所の人と話す機会あって、囚人たちの「働きたい」という情熱に触れたんだそうです。

Q へえ〜、しかし、囚人がフランス語を習うんですね。

A 向こうの刑務所はすごくオープンでいろんな勉強ができるんです。創業者の彼は犯罪を犯した人の更生とかに特に関心があったわけではなく、それより、たまたま出会った囚人の働きたいというパッションに感銘を受けた、と。かわいそうだから助けたいということではなくて、もっとポジティブなとらえ方なんですよね。「ペルーの刑務所で世界に唯一のものをつくれるって、すごく面白くない?」と熱く語っていました。衣類メーカーでの就業の経験もフランスであったので、2〜3年かけてブランドをつくったということでした。

Q そういう熱い思いを聞いてどうでした?

A 彼の思いを聞いたり、囚人のインタビュー映像とかも見て、僕にできることはなんだろうと考ました。単に情報を伝えるだけでなく、日本でも商品そのものを届けたいと伝えました。そうしたら「ぜひやってよ!」となって。

Q とんとん拍子だったんですね。

A はい、まさにとんとん拍子で。商品を日本で届けるにあたって、クラウドファンディングで寄付を集めました。支援してくださった方にはTシャツやパーカーをお返ししました。2019年の8月に募集を終えて、11月ぐらいに皆さんの元に届けることができました。

Q クラウドファンデイングを終えてからは、どうしていたんですか。

A ちょうどペルーからベルギーに移ったころで、いろいろ慣れないこともあって結構大変でした。ベルギーではマーケティングなど幅広く勉強して、留学期間を終えたのですが、まさに帰国するというタイミングでコロナが流行り始めたんです。

Q なるほど、それで冒頭の話に戻るわけですね。本当は帰国して、コロナがなければポップアップストアで対面で服を売ろうと思っていたんですね。

A そうです。でも、緊急事態宣言も出される中でいったん断念しました。

Q まさに、コロナの影響ですね。

A はい。そこで、プランBとしてクラウドファンデイングで支援してくださった方々にZOOMなどを通じてブランドに対する思いをヒアリングすることしました。

Q プランA、つまりポップアップストアがだめになったので、プランBというわけですね。

A そうです。ヒアリングは本当に大きな気づきがありました。ブランドのストーリーや囚人の更生といった背景もさることながら、そもそもデザインが格好いいからとか、生地がいいからという、商品そのものに力があるということもわかったんです。愛知の人や京都の人など、全国の人に聞けたのも、コロナでオンラインミーティングが普及したおかげです。

Q ポップアップストア(プランA)は結局どうしたんですか。

A コロナが落ち着いた12月に、消毒や検温といった対策を万全にして、東京の表参道で開催することができました。支援者の思いをたくさん聞いたうえでの開催だったので、当初描いていたポップアップストアの試みよりもはるかに実りが大きかったです。

Q それは素晴らしいですね。

A 対面とオンラインと、両方経験できたというのは大きいです。

Q まさに「コロナ下だからできたこと」ですね。では最後に、今回のイベントはどんな人に来てほしいと思っていますか。

A 大学1年生や2年生で、どうしたらいいんだろうという漠然とした不安を抱えている人ですかね。先日も、今度大学3年生になる子と話をしていたんですけど、就職活動が早期化したということで、すごく焦っていたんです。でも、僕もここに至るまで本当に紆余曲折で、これをやった、あ、違うな、あれもやってみよう、やっぱり違った、ということの繰り返しだったんです。そしてたまたま国際協力という、自分がやりたいことに出会えて。そしてペルーに行って、ところがコロナでいろんなプランが狂って。就活も就活も留学中は全くしていませんでしたが、なんとかなりました。あ、こんな人もいるんだな、というぐらいの気軽な感じで来てもらえればうれしいです。


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