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国立西洋美術館「ゴヤ〈戦争の惨禍〉全場面」

けっこう長い間開催していた「キュビズム展」が終わり、常設展のみになった国立西洋美術館へ。

大規模な企画展が終わって常設展のみになった美術館/博物館はそこまで混雑することもなく居心地が良い。
(もっともこの日はおそろいの帽子をかぶった小学生の集団や修学旅行らしい学生たちもいてそんなに空いてはいなかったが)

単純に常設展を観に行くつもりで行ったのだが、小企画展として
「真理はよみがえるだろうか:ゴヤ〈戦争の惨禍〉全場面」
というのをやっていた。

〈戦争の惨禍〉は、スペインの芸術家フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828年)が制作した版画集です。1808-14年に戦われたスペイン独立戦争に取材し、戦いの光景やその中で苦しむ民衆の姿、そして政治風刺を主題としています。

「連作全点と連作外の2点を合わせた計82点を披露、版画集の全像をご紹介します」とのことだが、1点の大きさが絵葉書くらいのサイズ感なので、スペース的にはさほど大きくなく、常設展示エリアのなかで「版画素描展示室」という一室がこの小企画展に充てられている。

ゴヤといっても「我が子を食らうなんとかヌス」とかいう絵をぼんやりと思い出すくらいでほとんど知識は無かったのだがこの連作版画は良かった。

82点のうち前半は戦争を描いたもの。
ただ実際の戦争よりは戦火で苦しむ民衆を描いたものが中心となる。

「そのためにお前たちは生まれたのだ」
「辛い立ち会い」
「彼らはここまでむしり取る」
「何処でも同じことだ」

今これを観ることで、
200年経っても何も変わらないのかよ、という暗い気持ちになれること請け合い、である。

「戦争の惨害」

後半に入ると戦争が原因で起こった大規模な飢饉の情景が描かれる。

「彼らを救う者はいない」
「山積みにされた死体」

そして最後の4分の1くらいの作品は、やや幻想的な雰囲気が漂う寓意的な作品。
このパートが一番印象的だった。
実際には具体的な風刺の対象があるのだろうが、それがわからなくても惹かれるものがある。

「奇妙な信心!」
「結末はこれだ」
「行くべき道を知らない」
「残忍な動物!」

国立西洋美術館では、今は現代美術関係の企画展が開催されているが、
「真理はよみがえるだろうか:ゴヤ〈戦争の惨禍〉全場面」
は引き続き常設展の方で見ることが出来る。
5月26日まで。

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