映画「PERFECT DAYS」で流れる曲についての独り言

ヴィム・ヴェンダース監督の映画「PERFECT DAYS」は、以前noteに書いたように、何か騙されているような気がする映画だった。
ただ、見た後も色々思い出したりするような、後を引く映画でもあった。
素直にほめる気には絶対になれないのだが、単純にけなす気にもなれない。

音楽の使い方にしても、ちょっとストレートすぎるような気がした。
でも、好きな曲が流れればやはり嬉しい。

引っかかる部分があり、良いなあと思う部分もある、どうにもおさまりの悪い映画だなあ、という印象。

まあそれはともかく、音楽映画といっても良いこの映画で流れる曲について、全く為にならない独り言をつらつらと書いていくことにする。

House of the Rising Sun (The Animals)
アニマルズの「朝日のあたる家」
オルガンが非常にカッコイイ。
「朝日のあたる家」というタイトルで、なんとなく朝の曲みたいな気がしてしまうが、実際には「Rising Sun」という名前の売春宿についての歌。
映画の中で石川さゆりが歌うのは浅川マキによる日本語ヴァージョンだそうだが、ここでもちゃんと「朝日楼」という女郎屋の歌になっている
オリジナルはアメリカの古いフォークソングとのこと。
もともとは女性の歌らしいが、男が歌うと歌の意味合いが違ってくるんじゃないかと思うのだがそこらへんどうなのだろう。

(Sittin’ On) the Dock of the Bay (Otis Redding)
オーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」
ソウルミュージックにはあまり詳しくないのだが、それでもこの曲は知っている。
とても有名な曲。
ぼくが最初に知ったのは、RCサクセションの「スイート・ソウル・ミュージック」という曲で、だったと思う。
RCの忌野清志郎がオーティスの大ファンで、この曲の中にthe Dock of the Bayの一節が歌いこまれている。

この映画で流れた音楽の中で、一番「良いなあ」と思ったのがこの曲だった。
知ってはいるけどあまりきちんと聴いたことがなかったので、映画の中でじっくり聴いて、あらためて良いなー、と。
オーティス・レディングが喉の手術をした後のレコーディングで、本来の力強い声が出ていない、という評価も見たことがあるが、でも良い曲だよな。
ホーンセクションが盛り上がっていくあたりが非常にエモーショナル。

(Walkin’ thru the)Sleepy City (The Rolling Stones)
ローリング・ストーンズの「スリーピー・シティ」
この曲は誰の曲か全然わからなかった。
後で調べてローリング・ストーンズの曲だと知ってびっくり。
まあ言われてみればミック・ジャガーの声なんだが・・・。
80年代くらいまでのストーンズの曲はだいたい聞いたことがあるつもりだったので、こんな曲があったんだ、と驚いたがアルバム「メタモルフォーシス」収録曲ということで納得。
「メタモルフォーシス」はオリジナルアルバムじゃなくて未発表テイク集みたいな感じのアルバムで、これは持っていなかった。
未発表テイクだけじゃなくて未発表曲も入ってたんだな。
まだ初期のストーンズという感じの曲。
しかし「メタモルフォーシス」もカセットで発売されていたのかねえ・・・。

青い魚 (金延幸子)
今回のラインナップの中で、曲もアーティストも全く知らなかったのはこれだけ。
日本のシンガーソングライターの草分けで、
ファーストアルバムは細野晴臣プロデュース、
フィリップ・K・ディックと親交もある、という人らしい。
自分の興味の範囲からしても、何故知らなかったのだろう、と不思議になるほど。
まあ歌の方は、あまり好みではなかったけれども・・・。

Pale Blue Eyes (The Velvet Underground)
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ペイル・ブルー・アイズ」
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの3rdアルバムの収録曲。
これは「破滅的な不倫の歌」というイメージ。
(ぼくは英語は全然ダメなので、歌詞の解釈にはあんまり自信は無いが・・・)。

君が結婚しているという事実は
ぼくらが親友だということを証明するだけ
でもそれは本当に本当に罪なんだ

みたいな歌詞があって、それが印象に残っている。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドといえばバナナのジャケットでおなじみの1stアルバム「The Velvet Underground and Nico」が有名だけれども、これはアンディ・ウォーホールがプロデュースしたアルバム。
この1stアルバムにのみ、ドイツの女優/モデルのニコという女性が何曲かでヴォーカルで参加しているが、これもウォーホールの提案によるものらしい。
映画にもニコという少女が出てくるのだが、これと関係があるのかどうか。

Perfect Day (Lou Reed)
ルー・リードの「パーフェクトデイ」
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを脱退したルー・リードの2ndソロアルバム「Tranceformer」の収録曲。
「ヤク中の白日夢」みたいな印象が自分の中ではあるのだが、歌詞に直接的にそういう事が書かれているわけではない。
最後のリフレイン

君は自分が蒔いた種を自分で刈り取ることになるだろう

みたいな歌詞が印象的。

Sunny Afternoon (The Kinks)
「ユー・リアリー・ガット・ミー」などに代表される初期のストレートなロックナンバーから、次第にスタイルを広げていったキンクスの、その変化を象徴するような、けだるく抒情的な名曲。
没落した貴族階級の怠惰な絶望の歌、という感じか。

Redondo Beach (Patti Smith)
パティ・スミスの「レドンド・ビーチ」
映画の中で、若い女の子が平山の車に乗って来て、「これ聴いていいですか」と言ってカセットをデッキに入れるのだが、それがパティ・スミスの「Horses」というアルバムで、おお、これはパティ・スミスの名曲「Gloria」が流れるのかな、と思ったが「Redond Beach」の方だった。
ま、それもそうか。
カセットを差し込んですぐ流れ出すのだからA面1曲目に決まっているよな。
軽快な良い曲だと思うがこの曲は歌詞カード読んだ記憶がないのでどんな歌詞なのかはわからない。

Brown Eyed Girl (Van Morrison)
パティ・スミスの代表曲といえばなんといっても「Gloria」だと思うのだが、この「Gloria」はパティ・スミスのオリジナルではなく、Themという北アイルランドのロックバンドの曲。
そしてそのThemのリードヴォーカルだったのがヴァン・モリソン。
ヴァン・モリソンがThemを脱退してすぐにシングルとして発表されたのがこの曲。
ということだが、この曲はあまりピンと来なかったな。
ああ、聞いたことあるかな、くらいな感じ。
ヴァン・モリソンはこれよりも少し後に出した「アストラル・ウィークス」というアルバムが本当に素晴らしくて・・・などという話を始めるときりがない。

ちなみにパティ・スミスの「Gloria」は、冒頭の、

「ジーザスが死んだのは誰かの罪のため・・・でも私のじゃない」

というフレーズがカッコイイのだが、これはThemのオリジナルにはない。

Feeling Good (Nina Simone)
ニーナ・シモンの「フィーリング・グッド」
ジャズの歌い手さん、ということで、これはもう自分の守備範囲外なので、なんとなく名前を聞いたことがある程度。
映画のラストでかかる曲なのだが、あのシーンはあまりピンと来なかったな。
あの映画を締めるのがあのシーンでいいのか、という・・・。

良く知らないのでちょっと調べてみるとこのニーナ・シモンという人、「悲しき願い Don’t Let Me Be Misunderstood」のオリジナルの歌手だと知ってちょっと驚いた。
「悲しき願い」と言えば「朝日のあたる家」と並ぶアニマルズの代表曲。
ここでアニマルズとつながる、というのはなかなか面白いな。

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