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台湾留学、パワフル原住民キッズと遊ぶ

パワフル原住民キッズと「遊んで」きた。

原住民が暮らす山あいの集落に足を運び、大学が企画してくれた地元小学生との交流活動に参加してきたのだ。この活動、基本的には台湾籍の本科生向けの課外活動みたい。一方で子どもたちに普段は接することのない「異人」に触れさせる狙いで外国籍学生の募集枠もあると聞き、手を挙げたのだった。

バスは最前列に陣取った。台湾の大型バスは2階建てのことが多く、一番前の席はかなり景色が良い。もしかして老師たちの指定席かなとも思ったが、注意される様子もなかったので図太くも着席

今回活動で訪れたのは屏東県。北東部に「三地門」という、原住民の集落がいくつか連なる山あいの地域がある。そのうちの小学校の一校を訪れた。

聞くからに交通の便は良くなさそう。実際のところ電車などあるはずもなく、大学キャンパスからみんなで大型バスに乗って向かった。大学生ご一行様なので車内はもっとワイワイするかと思ったが、朝7時集合と結構早かったからか、みんなぐっすり。

現地までの道程はこの季節の台湾南部らしからぬ大雨に見舞われた。

バスは1時間半ほどで目的地に到着した。

文字通り「山あいの集落」にある小学校という感じで、四方を山に囲まれている。山々は霧に覆われていて、どこか神秘的な雰囲気がした。校舎のあちこちにある原住民スタイルの(?)制作物が、普段接する漢族とは異なる文化の香りを感じさせてくれる。

この集落で暮らす原住民は「莎卡蘭shākǎlán族」と呼ばれるらしい。階段の踊り場に飾られている絵画もどこか独特の風格があった。

そうしているうちに小学生たちが続々と集まってきた。

土曜日だったので、子どもたちは親に言われてしぶしぶ参加する……的なノリなのかなと想像していた。が、そんなことはない。みんないつもの先生とは違う大人たちがやってくることを楽しみにしてくれていたみたい。屈託ない笑顔には一点の曇りもない。

わたしは5年生と6年生の合同クラスを担当した。台湾人の本科生たちと一緒に考えた時間割をもとに(といっても97%彼女らが準備しました。私はほとんど何もやりませんでした。すみません)、わんぱくキッズといろんなアクティビティに励む。

活動内容はおおむねこんな感じ。

異国文化紹介(日本、米国、トルコ、ニュージーランドの学生がそれぞれプレゼン)
科学実験(比重の異なる液体を混ぜてグラデーションを作る)
「スパゲッティ塔」建築大会
動物を探せゲーム(校庭に隠した動物カードを探す)

キッズたち、気づいたら私のことを「老師(=先生)」と呼んでいた。彼らからしたらなにやら教えてくれるオトナを老師と呼ぶのは至極当然のことなんだろう。しかしこっちからすると、日本でも先生と呼ばれたことなんてないし、ましてや自分の人生で中国語で「老師」と呼ばれる日が来るなんて、想像もしたことなかったよ。

6年生の教室にあった漢字練習帳。書き順があって、練習のマス目があるのは日本と同じだ。ただ繁体字なのでいくぶん難しくみえる
教室外の掲示板。どうやらこの四字熟語9連発は「今週の四字熟語」みたいな感じのようだった。学校のほかの場所にも貼ってあるのをみつけた。小学生に「不惑の年」を教えるのはやや早い気もするけれど……
低学年の教室近くには注音記号の暗記ポスターも。かわいい
6年生の時間割。結構きつきつで大変そうだ
子供たちの机の上のカッターマット。アルファベット・注音記号はいいとして、キーボードが印刷されてるのがいまどきらしい

楽しかったのは給食の時間だ。

台湾の小学校では給食係が給仕するのは普通のことらしいけれど、普通は各教室でやる。ところがこの学校は生徒数が少ないので、こうやって教室外で共同で給仕するんだって。だいたいは5〜6年生のお兄さんお姉さんたちが給食係になる。彼らに盛り付けてもらったご飯はとりわけおいしい。

こんなこともあった。

午後になると、もう子どもたちはこちらが用意したプログラムには飽きちゃったみたい。男女の別おかまいなしに、ボールは出すわよくわからない長い棒みたいなのは振り回すわではしゃぎはじめ、教室はもう完全に動物園と化した。

死んだふりするひょうきん女子にボールを落とそうとするわんぱく男子

おんぶをせがまれて一人をおんぶしたら、別の子も「ぼくもわたしも」と殺到してきた。最初におんぶしたこの男の子↑はわりと軽かったんだけど、その他の子は割と重くて、辛い。そりゃそうだ、小5〜6なんだもの。6歳息子のおんぶなら日本にいるときしょっちゅうしていたので慣れているけれど、やっぱり腰への負担が全然違ったよ。

職員室の雰囲気は日本と一緒
近視防止を訴える張り紙

そろそろ夕方というくらいで1日のプログラムが終了。異文化交流という名目ではあったけれど、70%くらいは「一緒に遊んだ」という感覚でした。ついさっきまであれだけにぎやかだった教室も、子どもたちがいなくなると本当に静か。木製の机と椅子がまたなんともいえないエモさなんだな。

それにしても立地の素晴らしい学校である。

同じく外国籍の学生として活動に参加したニュージーランド出身の女性と「本当うらやましいね、こういう環境は」と会話した。すると彼女はこう言う。「けど、とうの子供たちはきっと、ここがいかに贅沢な場所かは気づいていないんだよね」

ちょうど自分もそう思っていたところだった。

この日の夜は小学校の多目的室のようなところで簡単なマットを敷いて雑魚寝した。

女性用のシャワーはものすごく虫が出たらしい。男性用はそこまででもなかった。星がとってもきれい。山の中だけれどそこまで寒くもなく、ウインドブレーカーを羽織るだけで快適に寝られるような気温だ。

シャワーから帰ってくるときだったか、校庭のほうからなにやら弦を爪弾く音が聞こえてきた。

外に出てみると、活動に参加したトルコ出身の大学院生の女性が沖縄の「三線」を弾いていた。日本語をかなり流暢に話せる彼女、沖縄の文化に興味があって演奏法を習っているのだという。この日の活動でも小学生に披露したらしくて、わざわざ楽器を持参し、今またそれを弾いているのだった。

敷地外はほぼ真っ暗、しいんと静まり返る山あいの小学校に響く三線の音色。この場所・このシチュエーションにフィットしているのかはよく分からないけど、とってもきれいな音色だった。「涙そうそう」など、時折つっかえながらも一緒に歌った。


【2022/10/22の日記】

7時に学校集合。それ以降は上記の通り。机に向かっての勉強時間はゼロ。

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