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考える材料が無い中で進むエンブレム変更の話

FC東京のエンブレム変更について、2回目となる私の“お気持ち表明”駄文へ「ようこそお越しくださいました」と言ったところか。

正直なところ、こんなことに頭を悩ませたくないというのが本音である。
ビールを飲みながら目の前の試合見て、「東京ブラボー!みんなブラボー!ブラボー!」って言うことだけに専念したい気分だ。誰も言ってないけど。

さて、今回は第一回目の説明を経て、SOCIOを対象に実施したアンケート結果の公表と寄せられた質問に対する回答をまとめた動画配信となっている。

アンケート結果とそれに対する考え

寄せられた質問に対する回答

記事だけを読んでしまうと細い機微を見逃してしまうため、できれば直接動画を視聴し、彼らの表情を見ながら言葉を聞き、各々自分の率直な考えを持つのが良いと思う。

その上で動画の結論としては下記の通りである。

「エンブレム変更に関するアンケートでは賛成と反対は拮抗していて反対がやや上回っていたが、FC東京VISION2030は80%を超える支持を得られたので、2024年から新エンブレムに変更する方針で進めていきます。」

私はどう思ったかというと、“もう苦笑うしかない“といったところである。

あくまでも個人的な感想だが、揚げ足を取りたくなるようなやり取りばかりだった。しかし一度その呆れ返った想いを封じ込めて、そもそも何が引っ掛かるのかを自分自身少し整理した方が良いと考えたので綴っていこうと思う。

材料が無い中で進むエンブレム変更の議論

今回の議論の中で私自身がモヤモヤする部分は2つある。

1つはやはり「変更の理由」である。
前回の記事でも書いたが、エンブレムを「変更する」ということは、やはり現行のエンブレムに於いて解決したい課題や不安が必ずあるはず。そこを明確に説明出来ていない。

割と昨今言われている理由として、「ブランドを確立していきたい」「視認性をよくしていきたい」などがある。

果たしてFC東京はどうなのだろうか。

FC東京VISION2030と紐付けて、何度も口にする「成長を加速させたい」「シフトチェンジをしたい」というのが理由だったとしても、現行のエンブレムで長年成長を応援してきた人間としては、現行のエンブレムだとこれから先どういった課題に当たるのか比較として説明することは必要だと思う。

サポーター感情に寄り添いつつ、論理的に理由を説明していく。
私自身は納得のいく説明がされるのであれば、時代に合わせた変更はしても良いと思っている。ただし、納得がいかなければバリッバリの反対派だ。

そして2つ目は、その変更後のエンブレムイメージが何も提示されていないことだ。

愛着あるものを変えるというのは非常に勇気がいることである。

エンブレムには様々な記憶や想いが詰まっている。
歴史の継承についても動画で触れているが、トピックスとして立てることができる年表のような歴史だけではなく、もっと細かいFC東京と接点を持った1分1秒単位の時間もまた歴史だと私は思う。

常にそこにあったのは、あのエンブレムと流れる血液にも例えられる青と赤のチームカラーである。

もちろん愛着が薄い人だっているだろう。それは個人の感覚なので全く否定されるべきものではない。
要は個人の感覚は千差万別であり、昨今のシンプルなデザインを嫌う人もいれば、逆に家紋風のエンブレムを嫌う人もまたいるということだ。

これに一つの道筋を付けるには、やはり変更後のエンブレム案を提示して考えを募り、丁寧に説明しながら議論していく必要がある。

だが現状はどうかと言うと、これもまたイメージが何も共有されていない中で話が進んでいる。
それなのに動画の最後で川岸社長は「2024年シーズンより新エンブレムに変更する方針で進める」と言い切ってしまっている。

新しいエンブレムデザインに対する不安や期待など様々な気持ちがある中で、その具体的なイメージを出さずに変更をほぼ結論付けてしまった。

これでどうして、石川CCが動画で熱く語っている「一つの方向にエネルギーを結集させていく」ことに繋がるのだろうか。

強い疑問でしかない。

コミュニケーションを重ねてこその信頼感

ここからは私自身の感想を少しまとめておきたいと思う。
「何言ってるんだコイツ?」という話なのは重々承知なので、このように考える人間もいるんだなという程度に飛ばし読みしてもらってOKである。

さて結局のところ、コミュニケーション不足と信頼不足に全て集約されると思う。

拮抗しているとは言え反対が上回るアンケート結果なのに、自分達基準で賛成が多かった点を強調し、別件としてアンケートを投じたはずのクラブビジョンの結果を以て、エンブレム変更の評価を得ていると流れを強引に持っていった。

これはもうエンブレム変更の賛成・反対関係なく、100%実施する決定事項であることを窺わせる。というよりも、動画の最後で2024年から変更の方針で前進すると言い切った。

これだと対話をしてもしなくても結論は変わらないだろう。

それなら議論は進めなくて良いと、動画を見終えて最初に思った感想である。決定事項に対して、議論をする必要性を感じないからだ。
そのようなスタンスの上で行われる対話は対話とは言わない。一方的な説得である。

寂しい言い方をするが、一番お金を出して経営している人には、運営として有無を言わさずに変える権利がある。意見を汲まずに進めるのも別に何の問題も無い。

ただし、その先にあるのは、クラブの進め方に賛成した人、反対した人という分断されたままのモヤモヤした事実が残るということ。
分断をさせるような意見や発信は控えてほしいと動画で語っているが、その原因となる進め方や提示の仕方をしているのは誰なのか胸に手を当てて考えてみることをお勧めしたい。

試合が始まれば、ファンは選手のために一丸となって応援するだろう。
だが試合とは別で今回のような意見や協力を求められても、疑心から入る人達が今のままでは確実に増えると思う。
今回の賛成・反対の数値化が、長年に渡って年間チケットを買って応援し続けるSOCIOの回答数値であることも重い。

石川CCは「ちょっとやそっとのことで崩れるような関係性は築いてきていない」と動画の中で話している。
確かにそれだけの関係性をクラブレジェンドである彼とファンは、長い時間を掛けて築いてきていると思う。
しかし信頼というものは崩れる時は一瞬である。果たして、この議論を通じて、信頼は深まるのか。それとも冷めたものになってしまうのか。

ちなみにその石川CCをダシに使うなというクラブに対する批判もあるが、彼は立場的にも使命感を持って対話にあたる意思を見せているので、この批判には当たらないと思う。
正直、彼もまた変更ありきのスタンスでいることが言葉から見えるので、本当にファンに寄り添って考えを吸い上げて接していけるのか不安は拭えない。クラブ職員である以上、仕方がないとは思う。

ファン全員の意見を汲み取ることは不可能なのは承知の上だ。だが、エネルギーを結集させて前を向いていきたいと言うのであれば、可能な限り寄り添う必要があるだろう。

今回はそれほどデリケートなものに手を掛けているのである。

できることなら変更ありきのスタンスをまずは解いた上で、フラットに材料と意見を並べて、このエンブレムに関する議論が進んでいくことを私自身は一人のファンとして望みながら今後の流れを追いたいと思う。


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