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コミュニケーションが熟した時こそ、エンブレム変更の機

昨年末から噂程度に聞いていたFC東京のエンブレム変更のお話。

2月22日に年間チケット購入者、いわゆるSOCIOに限定してクラブからは先行で下記のリリースと動画、そしてアンケートが共有されていた。

そして本日24日からは完全公開という形でリリースが出ている。

クラブ側は「アップデート」という言葉を用いているが「変更」であると感じる。
言葉に対する反応を気にして、少しでもポジティブな意味合いが含まれる単語を選んだのだろうと私は率直に感じた。

裏を返せば、それだけネガティブな反応が出ることがわかりきっていると彼らも感じているのだろう。

では実際リリース後はどうなったか。
SNSをやられている方であれば反応は見ての通りである。
賛成派・反対派による議論ならまだしも、論点の違いによるファンの分断、レッテルの貼り合いまで起きてしまっている始末だ。
(開幕戦勝利の余韻が完全に醒める最悪な週の中日である)

正直な話、今のままでは多くの支持を得た上での変更は厳しいだろうというのが私の感想だ。

それ以前に「変更しない」という選択肢も含めた議論ができないのだろうか?
いや、そもそも議論をする意思すらも本当は無いのではないか?

そんな考えが浮かぶほど、今回クラブから発信されたものは表面的で中身が乏しく、それでいて有無を言わさないSOCIOの意見収集方を取っているのが現状だ。

流石に思うところばかりなので、少し個人的な感情と共に整理しておきたいと思う。
決して理路整然としているわけではないので、軽く読み流して頂いて結構である。

私はマーケティングで東京を応援していない

動画を見るだけでも、エンブレムに対する考え方がクラブとファンで違い過ぎるのが読み取れる。

資料は今後のクラブの成長戦略を説明したものがメインである。
様々な数字や23区が抜け落ちた東京地図などのイラストを使い、マーケティングや経営の目線で簡潔に説明している。

だが正直なところ「なるほどね」「頭に入れておこう」という以上のものは無い。
なぜなら企業が成長戦略を考えるために行うマーケティング資料の域を出ないと感じるからである。
中にはもう長年言われ続けて目新しくもないトピックさえもある。
もちろん、頑張って達成してほしいものではあるが、本題のエンブレム変更の理由になりえるものではないと感じるのだ。

そもそもエンブレムの話なのになぜ成長戦略?と思うかもしれないが、動画の台本として、

FC東京を取り巻く現状の足りてないお話→自分達が辿り着きたい成長目標→そのための起爆剤としてエンブレム変更

ということである。

動画の中で川岸社長は「シフトチェンジが必要です」「エンブレム変更で成長を加速させていきたい」と語っているが、逆に「一定の認知度を得ている今のエンブレムでは何がダメなのか?」「なぜエンブレム変更が成長を加速させることに繋がるのか?」に全く触れられていないのだ。

個人的にはここが一番重要なポイントだと思っている。

エンブレムというのはそのクラブを表す象徴でありアイコンだ。他人の空似、ドッペルゲンガーの存在さえも許さない唯一無二の顔のようなものとも言える。
ファンでなくてもあのエンブレムを見ただけで「FC東京」という名前を出すことができる人もいるだろう。サッカーに詳しい人が見れば、どういった選手が所属していて、どういうクラブなのかまで話すことができよう。

それぐらいクラブを表す上で象徴的なアイコンの一つである。

クラブ25周年というように、あのエンブレムには25年分の喜びと苦い経験、FC東京を通じて出会い関わってきた人たちとの思い出が詰まっており、それがファンとしての愛着となっているのだ。

私はFC東京と出会って今年で20年になるが、東京ガス時代から応援する25年超えの人もいれば、今年から応援し始めた人だっているかもしれない。
大事なのはFC東京があのエンブレムの下に存在して様々な人々を受け入れ、サッカーを通じて様々なことにチャレンジをして歴史を築き上げてきたということである。

つまり「あなた方の愛着あるエンブレムでは、マーケティング的にもうダメなので変更させてくれ(形あるものとしては捨てるに等しいと思っている)」というのは、到底理解はされないだろうと思う。

エンブレムに対する扱い方、立ち位置が異なるのに、そこを踏まえた話し方をしなければ難しいということだ。

「ご理解いただきたい」と文中にはあるが、やはり今回のプレゼンでは「理解できない」というのが自分の率直な想いだ。

そもそもエンブレム変更の話なのに、成長戦略の話が大半というのはどういう配分設定なのだろうか。
実際のところはマーケティング的な理由ではなく、東京ガス色を消したいだけのプレゼンだと私は見ている。

コミュニケーション以上の近道は無い

現行のエンブレムではいけない理由が語られていない以上、変更の必要性を感じないというのが私の考えである。

それじゃ、エンブレム変更反対派なのか?というと、私はそういうことでもないと考えている。

成長を加速させたいのか、東京ガスっぽさが残る今のエンブレムが嫌なのか本当のところはわからない。
だが新しいエンブレムを策定するのであれば、シコリを残したまま進めていくのではなく、100%ではなくとも少しでも支持を得て前へと進んだ方が良くないですか?ということだ。

やはりそのためには対話、コミュニケーション以上のものは無いと思っている。

極端な話だが彼ら経営の立場的には、「明日から新しいのに切り替えま〜〜っす!」というのも鋼メンタルがあるのであれば可能だ。

しかし、例え強引に変更したエンブレムでもFC東京の新たな歴史を詰め込んでいく新しいアイコンになる。

週末の楽しみを飛び抜けて、FC東京は人生であるとまで言い切れる東京ファンも大勢いる。
そういった人達がFC東京と聞いて真っ先に思い浮かべるものの一つは、クラブの象徴とも言えるエンブレムやカラーである。

その大事なエンブレムの話をこのような変更ありきの選択肢のみで進めて、誰が納得して先に進めようか?

集めたアンケートは後日共有されるとのことなので、それに回答する形でコミュニケーションや議論が進むことも少しは期待している。えぇ、少しは。

理想を言うのであれば、クラブと様々な立場の東京ファンが直接対話をする場を設けて、「変更する・変更しない」両方の意見に対する議論を交わすのが良いと思っている。

だが現状、SOCIO限定アンケートの設問を見る限り、変更以外の意見を受け付ける気は無いという意思を私は読み取っている。SNSでも批判が出ているが、必須項目設定がされているQ8の部分だ。

私自身がこのクラブに求めるのは、東京が熱狂とか、フィロソフィーとかではなく、もっとシンプルな願いである。

今いるファンからも、未来のファンからも、FC東京が強く愛される形を経営の面からもっと寄り添ってしっかりと考えていってもらいたい。

そのために、より丁寧な説明や議論が進むことを祈りたいと思う。


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