歌会始2024 TEACHERS SING

近代日本の伝統では、年末の恒例行事として人間を主に生物学的性によって「紅」か「白」かに二分化し、「合戦」を行います。あまつさえ歌によって。
よりにもよって、2023年のテーマは「ボーダレス」だったそうで。ウクライナの平和だ、マイノリティの平等だといつも宣っているどの口がそれ言うとるんじゃ、と言うツッコミをを年末のどさくさで押し流す、大変日本的な光景が繰り広げられていました。
閑話休題、僕が言いたいのはSDGsとかLGBTとかそう言うことじゃなくて、
歌でボーダレスでピースなイベント、とっくの昔から年始にやってるんですよ、しかも天皇家が!

というわけで、今年もやってきました!
文化によって達成された調和、
立憲民主主義を象徴するもっとも静謐な祝祭、
しかし詠唱の声は高らかに響け!
宮中歌会始2024!

歌会始の儀は毎年年始に皇居で行われる、平安時代からやっている優雅に和歌を歌い上げる会。
もともとは貴族の集まりだったのが戦後に平民も公募で参加するようになり、
まー、庶民的で素朴な「今年はうまいカボチャができたずら」みたいな歌が平安時代のムードで朗々と詠唱される会に変貌しました。
結果、雰囲気と内容の次元が歪んで「伝統ってなんだ?」という問いの果てに正月気分で誘う祝祭が誕生することになったのです。

今年のお題は「和」
選考対象は1万5270首(うち海外74首、点字12首)!
選ばれた10名の平民たちをご紹介します!

今年の最年少、
新潟県新潟市 高校生 神田の日陽里(17)
2年ぶり8人目の東京学館新潟高校からの入選。もう押しも押されもせぬ歌会始界の超強豪校です。歌会始に出るために東京学館新潟に入る子がいる未来が見える。
神田さんは2度目の応募にして初当選。自分の直したい葛藤を歌にしたとのこと。J-POPみたいな短歌になるか、否か。

京都府京都市、大学生 小池の弘実(21)
大阪大学の3年生だそうで、女子大生の入選は久しぶり。
この年代の女子、またどっかで見たJ-POPみたいなやつかなあ、と思いきや色々コンクールにも出して現代短歌やってる方だそう。歌会始は保守的な選歌が多く、今風の等身大口語調の短歌はあまり馴染みはない印象ですが、どんな歌が選ばれたか。ここで超モダンなやつが選ばれていたらちょっとエポックメイキングな出来事になるかも。

石川県かほく市、市職員 宮村の瑞穂(32)
女性続きます。また30代女性ってのも久しぶり、市の職員をなさってる宮村さん。歌会始を去年知り、趣味的に一年一首読んでみようと思い立って初年で初応募にして初入選です。これからもぜひ詠み続けてください。
特に短歌を長く嗜んでいると言うわけではないそうですが、それでも大学では日本文学専攻、しかもご専門は古今和歌集だそうです。市役所の規定的には、歌会始への参加は公休になるのかな?

千葉県印西市、主婦 小野の文香(61)
一気にどんと年齢層飛びます、いきなり60台の小野さん。
今年はとにかく女性が多く、年齢層も高めです。忖度しない選考の表れか。年号変わって6年目、だんだん平成の選考パターンと違いが出てきたのかも。

福岡県福岡市、元中学校教職 川添のさとみ(61)
歌会始あるある、元教員が今年も登場。日本において短歌ってのは初中等教育と切って離せないことの証左かもしれません。
この年代の方は大体短歌結社に入って長くやってる上手い歌が多いです。
川添さんも若い時からたくさん詠んで新聞などに投稿してきた方だそうで、仕事でしばらく離れながらもまた精力的に詠んでいらっしゃいます。

さいたま市、学校職員 高橋の祐子(71)
学校の先生続きます。元中学校の国語教師の高橋さん。ただ、本格的に歌を始めたのは定年退職後に和歌教室に通い始めてからとのこと。日常生活を読むことにこだわり、今回の題材は「母の遺品整理をしていた時に蘇ってきた思い出」だそう。しばしば出てくるテーマですが、平民の和歌の醍醐味ってこういう歌に出たりします。

香川県丸亀市、主婦 岩倉の由枝(72)
ひたすら女性が続きます。丸亀の岩倉さん、和菓子屋さんのおかみさんだそうで、「和」のお題を聞いた時に思いつくのは和菓子一択、趣味として詠んでいたけど世には出していなかった短歌を、初めて歌会始に応募し初当選と相成りました。いいですねー、シンデレラフィットのお題!

神奈川県横浜市、臼杵の喜行(75)
ラス3で今年初めての男性。会社を定年退職した後に歌を始めた臼杵さん。11回目の応募で初めて入選となりました。ということは、定年退職して毎年ちゃんと応募してたということですかね?律儀!
NHKのインタビューで「天皇陛下から庶民まで歌を詠み合うというのは本当にすばらしいこと」と語る臼杵さん。僕が言いたいのもそういうことです!歌合戦なんかしてる場合じゃないです。

米国カリフォルニア州、移民史研究者 川崎のハルコ(81)
稀にいらっしゃる海外勢、以前にはブラジル移民の方なんかが当選していたりしました。まだ完全な外国人は見たことないけど、今に現れるかも。
歌会始は基本的に入選者全員参加なので、当日はアメリカから来日でしょうか。海外ネタはカジュアルに英語や異文化を詠み込んできたりするので、日本文化ど真ん中の宮中とのギャップがいい感じになりがち。注目です。

栃木県宇都宮市 元教員・教育長、古橋の正好(88)
今年の最年長は9回目の応募で初当選の古橋さん。今年3人目の元教員、しかも教育長経験者です。
詠むのは当然、教員時代の実体験。しかも子供が伝統とともに健やかに育つように願ったそうです。
クッソつまんねえな!と思いそうですが、この年代の庶民の短歌ってもうそれだけで滋味があったりするのも歌会始ならではの面白さ。

平民10人の歌が読み終ったら、次はゲストと皇族方の歌
今年の天皇陛下からご指名のゲスト、召人は、歴史学者の栄原の永遠男(77)
歌人じゃない人が呼ばれるのは去年に引き続き。令和のトレンドでしょうか。

審査員である選者の歌も詠まれます。
去年、一部メンバーの交代もあり令和なって入選基準も変わってきた感じのする選者。そのメルクマールとしてどんな歌を出してくるのか。

皇族方からも何人か披露されます。
日本は世界で唯一、国家がラブソングな国。百人一首もつまるところラブソング集です。
マジで眞子さまのラブ短歌が聴きたいです。披露されたら1000年残る伝説になると思います。

ラストはやはり、皇后と天皇の歌。
天皇陛下の歌は「御製」という専門用語を使うと通っぽいゾ。
両者の詠唱は特別に、皇后は2回、天皇御製は3回繰り返して読まれます。ポップソングでもあるよね、最後に来るちょっと転調された大サビ。あれと同じ現象が起こります。その起源は和歌にありました。

1/19  10:30よりNHK総合で生中継です。

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