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アマノジャクスポーツ「高木美帆選手の活躍を科学的に見てみると」

最後の最後に金メダル。良かったねぇ・・
ほんとに良かった。

この大会、高木美帆選手は500mから3000mまでのレース、プラス、パシュートに出場した。
それはすごいことだと誰でも思う。なぜそんな事ができるんだろう?

スピードスケートは筋力の使い方が独特である。自転車によく似ていて、陸上競技より、どちらかというと水泳に似ているかもしれない。アイソキネティック・等速性運動の要素が多いのだ。
陸上競技は短距離から長距離までアイソトニック・等張性運動がメインである。

そして陸上競技とスピードスケートの一番の違いは、バウンズの有無である。
陸上で走る時、一歩ごとに着地がある。細かく言うと次の通り。
着地の時には筋肉が伸ばされながら力が入っている状態のエキセントリック収縮であり、同時に筋伸展反射が起こることで、次の蹴りへのコンセントリック収縮が瞬時に起こる。スピードの早い走りほど足が接地している時間が短くなるわけだ。
スピードスケートにはバウンズはない。軸足の上に重心を乗せたまま、蹴り足で氷を後ろに押す。その足をスーッと重心の下に戻す。だから、蹴る足は筋伸展反射や骨や関節の反発力などを利用することができず、常に0から出力を初めなければならない。

これくらい筋肉の使い方が違うのだから、陸上の100mの早い人がスケートの500mが早いとは限らないし、その逆も同様なのだ。
陸上競技を席巻するアフリカ系の選手が、スピードスケート、自転車、水泳に少ないのは、住んでいる地域や環境の違いだけではなく、そういう筋肉の使い方は向いていないのではないかと推測できる。

スピードスケートは最短でも500mである。時間にして35秒前後。それは陸上競技で言えば、時間的には400m走よりちょっと短いくらいで、最長の短距離走というか、中距離走の入口みたいなところだ。陸上競技で言うところの”短距離”とはちょっとニュアンスが違う。
そして、スピードスケートの筋出力はアイソキネティックだし、水泳のように呼吸を制限されないので、距離の融通が利くということなのだろう。
短距離が得意の小平選手でさえ、500mと1000mという500mも差のある種目に出ているのだから、もともと1000m~1500mが得意の高木選手が500m~3000mをこなすことは不思議ではないと言えるのかもしれない。

もう一つスピードスケートが水泳と似ているところは、身長が高いほど有利だということ。
水泳では180cmの人と200cmの人では、ヨーイドンで飛び込んだところで、身長プラス腕の長さですでに20cm以上の差ができてしまう。ターンでも同じことが言えるので、距離が伸びれば伸びるほど身長差の影響が大きくなる。
スケートでも、脚が長ければ1歩ごとに進む距離は長くなるので、距離が伸びるほど有利になるというわけだ。スケート王国オランダ人の平均身長は男性で180cm超、女性で170cm超。さぞ脚も長いことだろう。高木選手はそこまで大きくないが、日本人の中ではまあまあの身長であることも良かったのだろう。
余談として、じゃあ陸上のマラソンも背が高いほうがいいんじゃね?と思うかもしれないが、身長の高さは重さにつながるので、走る場合には完全に有利とは言えないのだ。オランダのスケート選手、重そうでしょ?


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