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『Cool Struttin’』 Sonny Clark

1958年に発表された、ピアニスト、ソニー・クラークの代表作。

ドラッグのやり過ぎで、僅か31歳で他界してしまったクラークの、ハードバップ、ファンキー色満載の傑作だ。フロントメンにジャッキー・マクリーン(as)とアート・ファーマー(tp)、リズム隊に当時マイルス・バンドを支えていたポール・チェンバース(b)とフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)を迎えた、正に最強のメンバーによる珠玉の一枚だ。

不思議なことに、本国アメリカではほとんど無視されているともいえる扱いのアルバムで、日本だけで異常に人気が高いことでも知られている。日本のジャズ・マニアの間では、所謂『ジャケ買い』といわれる都市伝説がある。アルバム・ジャケットが素敵なアルバムは、それに惚れて購入しても絶対に外れないというアレだ。確かにこのアルバムのジャケットは素敵だ。クール・ストラッティンの意味が『気取って歩く』であるように、スリットの入ったタイトなスカートを履いた女性がマンハッタンを闊歩する足元のショットは、非常に魅力的だ。ボクもこのアルバムを初めて手にしたときには、何と恰好の良いアルバムだろう! と思ったものだ。

演奏自体はクラークのオリジナルを中心とした構成となっており、冒頭のタイトル曲から最後まで、フロントメンの強力な演奏と、それと対を成すようなクラークの酒が呑みたくなるような『雰囲気』を纏ったオーラ、当代きってのリズム隊による思わず身体が動き出すようなグルーヴが最高のコラボレーションとなっている。素直に耳に入ってくるメロディや血が騒ぐグルーヴは、ジャズ初心者にも度々オススメとして登場するほどだ。

何を隠そう、このアルバムのタイトル曲は、ボクが学生時代に最初に研究したブルースでもある。ゆったりしたリズムの中に、ポール・チェンバースのテクニックが、これでもかっ! と詰まったベーシストの登竜門的な曲である。

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