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作文AIより上手に「求められている文章」を書くための、誰にでもできる5つのコツ

先日、記事のコンテストでちょっとした賞金を頂きました。手前味噌ですが、私はこうした「企業の主催する賞金型のコラムコンテスト」的なものが得意でして、今まで4回出して毎回入賞してきています。

こういう話をすると文章を書くのが上手いのだろうと思われがちですが、実のところ、コンテストにおける最大のポイントは 「相手が求めていることを察し、それに沿った文章を書く」こと です。

先日、会社で若手の文章添削をする機会があり、なんとなく自分の中でそのあたりの「コツ」について明文化できてきたので、これを機に一つ記事にしてみるかと筆を取るに至りました。
「求められている文章」を書く大きなコツは5つ。

  1. 読み手のことを調べる

  2. 目を惹く文章の書き方を知る

  3. 他の人には書けないことを書く

  4. 自分のための記事だと思わせる

  5. 敵を作る表現は避ける

この「コツ」は読んで欲しい相手が明確な記事であれば、なんにでも使えます。例えば就職活動のエントリーシートや、小論文コンテスト、バズらせたいブログ記事の執筆、スカウト文の作成にも役立つかもしれません。

私自身が意識していることについて簡単にまとめましたので、興味があればご笑覧下さい。

1. 読み手のことを調べる

コンテストやエントリーシートの文章を書くとき、多くの応募の中で目を惹くためには、「これはまさしく自分のための文章だ!」と思ってもらう必要があります。彼らが書いてほしいことを知るために、まずは相手のことを調べ、何を求めているのか知りましょう。

1-1. Metaタグで「相手が世間に見せたいイメージ」を知ろう

読んでもらいたい相手が企業の場合、公式ページのMetaタグは必ず確認しておきましょう。

「Metaタグ」という言葉に馴染みのない方は多いかもしれませんが、実は誰もが日常的に目にしています。Googleのような検索エンジンでキーワードを検索すると、検索結果としてページタイトルや、ページの簡単な説明が出てきますよね。これがMetaタグに書かれた情報です。

検索結果に表示されたメタ情報のスクリーンショット

Metaタグは「このページが何であるか」を説明するため、各企業がWEBページに設定している情報です。検索エンジンは日々公開されたページを巡回し、その情報を拾って検索結果に表示しています。

検索による顧客流入は一大獲得チャネルですから、企業は「こういう検索キーワードの、上位〇番目までに表示したい」という明確な思いを持って、注意深くMeta情報を設定しています。つまり、ここに書かれたタイトルや説明文は、「企業が最も見せたい自分達の姿」を端的に表してくれているわけです。まずはこれを確認しましょう。

Metaタグは本来HTMLコード内に書かれた情報ですが、コードに馴染みのない方でもTDK Meta checkerのようなchromeプラグインで簡単に確認できます。

例として、先日私が受賞したコンテストの主催者である、Figmaの公式LPのMetaタグをチェックしてみましょう。

Figmaのメタ情報をMetaCheckerで確認したスクリーンショット

タイトル(title) :Figma: コラボレーションインターフェイスデザインツール。
説明文(description):チームとしてより良い製品を作る。デザイン、プロトタイプ作成、フィードバック収集のすべてをFigmaで行えます。

https://www.figma.com/

Figmaは主にデザインに使用するツールなのですが、「コラボレーション」 「チームとして」「すべてを」のような、似たような傾向のある言葉がたくさん入っています。全体的に複数人で協力するようなニュアンスのワードで構成されており、単なるデザイン作業ツールに留まらないぞという意気込みを感じますよね。

この辺りの言葉を記事内に散りばめてあげることで、相手の見せたいブランディングに寄り添った文章を書くことができます。

実際に受賞した記事は以下から読むことができますので、どのようにこれらのキーワードを私が入れ込んでいるのか、ご興味があればご覧ください。


1-2. 公募の文章から「入れて欲しがっているワード」を拾おう

もし文章コンテストやエントリーシートを書くのであれば、もう一つの大きなヒントになるのが公募内のタイトルや説明文の文章です。

企業主催のコンテストは、受託企業のマーケターや広告代理店が間に入っていることがほとんど。採用媒体も同様で、人事担当者やリクルーターが、ヒアリングの上で代筆しています。

私たちが文章を書くより先に、彼らがクライアントの要望を聞き、それをタイトルや説明文にしているわけです。ここにはクライアントが「入れて欲しがっているワード」キーワードが使用されているはずですから、受賞を狙うのであれば上手く拾って文章に組み込みましょう。

例として、現在noteで開催されているコンテストを見てみましょう。

ねとらぼとnoteが主催する #私だけかもしれないレア体験 コンテストのランディングページ

タイトル :#私だけかもしれないレア体験 
説明文: 人間誰しも、自分でも「そんなことってある!?」と思ってしまうような変わったエピソードを持っているもの。ほんの小さな(でも忘れられない)出来事でも、人生の節目になった大きな出来事でも何でもOK。

この概要を見た時、パッと目に飛び込んでくるのは「レア体験」というワードですね。ただ、わかりやすいキーワードは誰もが使いますから、「レア体験」をそのまま使用するのは得策ではありません。

私がこのコンテストに記事を寄稿するなら、 「そんなことってある?」「忘れられない」 あたりの言葉を使用する気がします。このあたりをうまいことタイトルや記事冒頭に入れておくと、審査員の目に留まりやすいはずです。

1-3. Googleの検索ボリュームを見て、世間の需要を知ろう

企業など特定の対象がいない場合は、Googleなどの検索ボリュームを知ることで、世間のおおよその需要を測ることができます。

おすすめはUber suggestのchrome拡張機能。特定のワードを入力すると、そのワードと同時に検索されている言葉のリスト、それぞれの検索ボリュームを自動で表示してくれるツールです。この拡張ツールを入れた状態で、試しに「文章」とGoogleで検索してみましょう。

Ubersuggestを使用した「文章」というキーワードの検索結果

右に表示される表を見ると、「文章 作成」「ai 文章作成」「文章が書けない」などの検索は1ヶ月間の当該キーワードでの検索ボリュームが1000件以上あり、多くの人が同じ悩みや疑問を抱えていることがわかります。

Ubersuggestは本来、SEO対策などのマーケティング文脈で使われるツールですが、文章のヒントになる言葉を見つける上では役に立ちます。時間があれば軽く見ることをお勧めします。


2. 目を惹く文章を書く方法を知る

魅力的なパッケージのお菓子が買われるように、誰かに読んでもらうためには、一目で「これは面白そうな文章だ」と思ってもらう必要があります。

「目を惹く」という言い方をすると、センスなど真似しづらいところに依拠しそうに聞こえてしまいますが、実は読まれやすい文章には特徴があります。ある程度の型を踏襲すれば、誰でもそれなりに魅力的に見せることができますので、押さえるところは押さえておきましょう。

2-1. タイトルはラノベっぽく長めに書こう

ラノベ(ライトノベル)のタイトルの長さは揶揄されがちですが、非常に合理的だと思います。

例えば小説の名前だけを聞いたとして、『告白』というタイトルだけだと、恋愛における告白なのか、真実を告げるという意味の告白なのか分かりません。一方、『転生したらスライムだった件』であれば、まず間違いなくスライムが関係する話だとわかりますよね。

「告白」と「転生したらスライムだった件」のカバー画像

小説の場合はカバーや帯がタイトルを補完する役割を持っていますが、記事の場合はそうもいきません。そのため、 「タイトルを読んだだけでどんな内容が書かれているのかわかる」 ことが重要になります。

実際、こういった手法はインターネットメディアではポピュラーです。各種人気メディアを見ると、どこも記事タイトルが非常に長いですよね。プロのデスクは「読まれる記事」を日々研究しているわけですから、分かりやすいタイトルがいかに閲覧数に直結するのか、よくわかると思います。

Business Insider Japanの記事タイトル
WIRED Japanの記事タイトル

ちなみに、紙媒体を母体にした日経などの新聞社では、もっと短いタイトルが付けられています。これは印刷時の組版の都合で上限文字数が決まっているからなのですが、自由にタイトルが付けられるWEBメディアと比較してみると面白いので、興味のある方はぜひ見比べてみてください。

日経新聞電子版の記事タイトル


2-2. 見出しはその段落の結論を書こう

タイトルに次いで大事なのは大見出し・小見出しです。見出しで大切なのは、その段落の結論が端的に書かれていること。

特に目次が最初に表示される形式のメディアでは、目次だけ読んでブラウザバック、というようなことも儘ありますから、記事の内容がざっとわかることは非常に重要です。

受験などで小論文を書いたことのある方なら馴染み深いと思いますが、「結論(見出し) → 根拠 → 結論」という構成の文章は、根本的にわかりやすく好まれます。古くからのお作法は守っておきましょう。


2-3. リズムが良い文章を書くコツを知ろう

読みやすい文章と呼ばれるものの多くは、一文の長さが適切で、かつリズム感の良い文章です。

単純なノウハウとして私が気をつけている点は以下の二つ。
・句読点は一文に二つまで。それ以上になりそうなら文を二つに分ける
・不安な部分は音読して、文章のリズムを確認してみる

ストレスなく読んでもらうため、可能な限りリズムの良い文章を心がけましょう。


3. 他の人には書けないことを書く

ここまではコツさえわかれば誰にでもできるポイントを書いてきましたが、どうしても汎化しにくい部分があります。それは「他の人には書けないもの」を書くこと。

どれだけ相手が望んでいるキーワードを入れて、整った文章を書けたとしても、本質的な価値は内容の特異性です。他の誰かが同じものを書けないからこそ、その文章を読む価値が産まれます。

とても難しいことですが、それでもある程度のコツはあるので、簡単に説明していこうと思います。


3-1. 「自分にしか書けない文章」を知るための三つのポイント

自分にしか書けないものとはなんなのか、色々な考え方があると思いますが、私は以下の三つのポイントを指針にしています。(これはある編集者の方からの受け売りです)

  1. 極めて専門的な知識がある

  2. 切り口・語り口などが優れている

  3. 単純に稀有な体験をしている

この全てを満たす必要はなく、どれか一つに特化する、あるいは複数の要素を組み合わせている記事が、巷で「良い記事」と評価されているもののように思えます。

このうち、「極めて専門的な知識がある」に関しては、完全にプロフェッショナルな領域です。例えば新聞の囲碁・将棋欄の記者などは、これらの競技に対して深い造詣を有し、知識に裏打ちされた価値のある記事を書くことができます。

ふたつめの「切り口・語り口などが優れている」に関しては、センスが求められる領域です。著名なエッセイストの書く文章などがこれにあたると思います。その人の視点、哲学、語り口などのユニークさが読者を魅了しますが、これは一朝一夕で身につけられるようなものではありません。

ですので、一般人はどうにかして残りひとつ、つまり「単純に稀有な体験をしている」を探し出すことが第一関門になります。私も、ここがピンと来ない限り、文章を書き始めることすらできません。


3-2. 属性の掛け合わせで、自分にしか書けないことを探そう

自分にしか書けないような体験をする、というと難しく聞こえますよね。実際はそうでもありません。全人口のうち10〜50%を占めるメジャーな属性でも、それぞれを掛け合わせれば、最終的には1%以下まで減ります。

「十人十色」という諺があるように、同じ人生を送っている人は一人としていませんから、自分の属性を組み合わせていけばどこかに「自分にしか書けない」に至る落とし所があるはずです。

ありがちな属性でも、掛け合わせれば人数は減っていく

例えば、私が自分のことを属性で表すとします。
・結婚している
・会社員

この二つの属性で何か記事を書くことを考えてみましょう。

これだけだと、そこら中に同じような人が溢れています。特に目を惹く文章は書けない気がしますよね。もう少し詳細にそれぞれの属性を書いてみましょう。
・共働きのパートナーと結婚している
・IT企業勤務の会社員

少しは絞れてきたような気がしますが、まだ面白いトピックは見つからなそうです。いくつか要素を深掘りしてみましょう。

共働きのパートナーと結婚している
→お互いに忙しいので家事を効率化している
IT企業勤務の会社員
→ITリテラシーがそれなりにあるので、ロボットやツールで自動化ができる

この辺まで来ると、かなり対象人数が少なくなってきました。もうそろそろ面白そうな記事タイトルが見つかりそうです。

このように、ありがちな属性でも深掘りと掛け合わせを繰り返していくことで、どこかのタイミングで「自分にしか書けないこと」が見つかるはずです。諦めずに自問してみましょう。


4. 自分のための記事だと思わせる

さて、多くの記事の中で注目を得るには、「まさに自分のための記事だ!」と思ってもらうことが重要だ、と冒頭で書きました。「自分(書き手)にしかない個性」を出しながら、他人に「自分(読み手)のための記事だ」と思わせるためには、どうしたらいいのでしょうか。

4-1. 相手が求めているキーワードを文中に入れよう

求めているキーワードのテクニカルな拾い方は、「1. 読み手のことを調べる」章で既に説明しました。企業が設定したMetaタグを読んだり、公募の文章を読んだり、検索ボリュームから需要を類推したり、方法は様々です。

大事なのは相手のことを知り、潜在的に求めているキーワードを入れること。意図的に情報を入れる書き手は多くないので、それだけで他より一歩秀でることができます。


4-2. 本旨に関係ない属性情報は徹底的に削ろう

意図的に情報を入れるのと同じくらい、意図的に情報を隠すことも大事です。突然ですが、私の性別は男女どちらだと思いますか?

正解は女性ですが、間違えても問題はありません。この記事では意図的に、性別に関連する情報を制限しているからです。

文章の面白いところは、相手に与える情報を意図的にコントロールできるところです。例えば私が会社で対面プレゼンテーションをするとき、年齢・性別を隠すことはできませんが、文章であればいくらでも隠すことができます。

自分を構成する要素のうち、関連するところだけを選んで見せる

わざわざ隠す必要があるのか、とお思いになるかもしれませんが、言葉にはそれに紐付くイメージがあります。仮に相手が「女性の話は聞くに値しない」と考えていた場合、冒頭で「女性です」と名乗ることで悪戯に読者を減らす可能性があります。 

性別以外にも、職業、立場、年齢、地域性、価格、それら様々な固有の情報は、本旨と関係がないなら単なるノイズです。本旨に関係のない余計な情報がないか今一度精査し、必要のないものは徹底的に削りましょう。


4-3. 言葉が持つバイアスを理解しよう

これはコツというよりも、あくまで知識ですが、言葉の持つバイアスについても理解しておきましょう。私が女性だと分かった上で読むと、一つ前の章の一文に違和感を覚える人もいるのではないでしょうか。

共働きのパートナーと結婚している

男性のパートナーが働いていることを、女性側があえて「共働き」と表すことは、逆の場合よりも少ないのが現状です。この一文だけで「書き手は男性のはずだ」と判断する読者もいるかもしれません。

これは男性側が主に働くことが多かったという歴史的経緯からくる傾向ですが、文章の中にはこうした「バイアスのある言葉」がたくさん入り込んでいます。

たかが言葉、されど言葉。言葉の中には言外のニュアンスが数多く秘められており、書き手はそれを理解し、読者のバイアスをコントロールする必要があります。

  • この言葉は言外のニュアンスを含んでいないか?

  • 読み手の認識のノイズになる可能性はないか?

を意識して、できる限りスリムな文章を心がけましょう。


5. 「べき論」など、敵を作る表現は削る

最後に、作った文章が「意図せず」誰かを攻撃し、敵を作るものになっていないかどうかをチェックしましょう。

意図せずと強調したのは、書き手にそのつもりがなくても、読み手を傷つける表現というものがあるからです。

敵を作らない文章において、私が意識しているのは以下の3点。
•〜するべき、などの断定的な表現を避けること
•最高 / 最低 、などの極端な表現を避けること
•「怒り」のカードは切らないこと

怒りや断定、極端な修飾は、暴力的なまでに強い力を持つ言葉です。物理的な力ではありませんが、感覚としては「読み手に殴りかかっている」に等しいと言えるかもしれません

どうしてもこれらの言葉を使用したい場合、主語が自分であることを必ず明記し、「自分の場合は〇〇である」「そうでない人を否定するものではない」ということを強調しましょう。

これは別軸の話ですが、大量のビューを狙いたい場合には、あえてこうした表現を用いることもあります。「炎上マーケティング」と呼ばれるものですが、強烈な言葉は(善し悪しはさておき)強烈な反応をもたらしますから、効果は覿面です。

ただ、企業の主催するコンテストなどでは、こうした文章は敬遠されます。どんな企業もブランド価値を損なうようなリスクは回避したいですから、書き手も余程の理由がない限り、使わない方が無難です。

終わりに: 人間は作文AIに勝てるのか?

最近、chatGPTをはじめとしたAIによる文章生成が話題になっています。私も遊んでみましたが、どんな質問にも驚くほど整った文章を返してきました。「一見して整った文章を短時間で吐き出すこと」に関して、人間がAIに勝つのはもはや難しいかもしれません。

とはいえ、それは明確な指示があり、情報ソースが豊富に存在している場合の話です。

言外に求められていることを察する能力や、自分の体験の中からひときわきらめく要素を見つける能力、そしていらないものを削り取るバランス感覚は、まだまだ機械よりも人間が得意な部分ではないかと感じています。

chatGPTに同じ内容で文章を書いてもらいました。この記事と比較した時に、記事の方が役に立つものになっていることを祈ります。

これからは「〇〇というキーワードを入れて」「〇〇という言葉は使わないで」といった要件定義をする人間と、それに従って文章を書くAIとが組み合わさることで、素早く良質な文章が生まれる時代になっていくのかもしれません。

この記事が、これから自分の力で文章を書く、どなたかの参考になれば幸いです。

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