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製造されてないものを製造する職業


今回のお題はこちらのカクテルバー・カート
▫️壊れてるタイヤのゴム替え
▫️メッキ仕上げを綺麗にする
タイヤゴム替えって言われてもね、
修復で大変なのは、何しろ当時のパーツはもう作られていないのですよ。

まだ木材のパーツなら
種類やサイズによってなかなか難関ではあるものの、切ったり彫ったりしてなんとか出来ることがほとんどですが
これが金属やゴム製、プラスチック製だと
もうどうしようもない。

昔は今みたいに「スタンダード」なサイズ、デザイン、素材ではなくて
それぞれがそれぞれの目的のために好き放題作られていたのです。だからこそ、そこが魅力なんですけどね。
直す方は大変です。笑

特にアンティーク家具で多いのは蝶番。
ある一定の時代になると今でも使われている蝶番で対応できるけれど
それ以前は各家具ごとに千差万別。
さらに、解体作業で紛失する可能性が非常に高いので、いざ修復となってパーツが無くて真っ青、なんて日常茶飯事。

そのため、日頃から廃棄する家具や逆に新しい蝶番に替えた時に残ったパーツはすべて保管するようにしています。
いつどこで役に立つか分からないからね。
そして役に立った時、そのパーツは神パーツ!笑

タンスのドアの下部に埋め込み式で取り付けてピボットでドアが動く仕組みの蝶番。
紛失度No. 1なので友人の鉄工屋さんにスペアをいくつか作ってもらいました。



さて、今回の作業は大部分が素材探し。探して見つけていかに適応させるか。このカートのために作られたわけではないものを、このカートのためのものにするミッション!

こんなとき心強いのがバルセロナにあるSERVEI ESTACIOというお店。日本でいう東急ハンズです。
模型用品、工具、布、文具、木材、プラスチック、鉄、アルミ、ゴム、などなど奇妙な素材がいっぱいある。
専門性の高いものもいっぱいあって、趣味でDYをするためなら何でも揃う場所です。業者さんから直接買うよりは少し割高だけれど、大量に使うのでなければここで充分です。

スペインでは珍しい建物丸ごとショップ

以前行った時に、ゴム製品がいろいろあったのを思い出したので、早速行ってみました。
一言にゴム製品といっても、太いもの、細いもの、暑いもの、薄いもの時期が入ったもの、切り込みの入ったもの、一体これを何に使うんだろうと思うものまで山ほど種類がありました。
ありがたいよね〜。

ゴムゴムゴムゴム
これだけあった何か見つかるだろう、と期待高まる光景


それからメッキ加工はうちではできないので
特殊な業者さんを探さなければいけないんだけれど
お客さんは「なんとなく見た目綺麗になってればいいから」と、ローコスト修理希望なので
メッキ加工風に仕上がるスプレーも。

しっかりありましたよ、このお店に。
メッキ加工スプレー。
一番希望の色に近いものをゲット。

作業の大半は真鍮のパーツ磨き。
細かい部分が多いので根気作業です。

磨くこと何時間!?でも輝いてくると嬉しい。
主に湿気で傷んだメッキをカバー塗装。


タイヤは太さの違う丸筒状のゴムを組み合わせて接着。内側は業務用ホチキス留めでしっかり繋げてあります。

そしてガラスも掃除して緊張の嵌め込み。
できあがりです。

写真だとあまり変わり映えしないなぁ


なんとも一期一会な作業!
2度と同じ仕事をすることはないと思うのであまり今後の参考になりそうにないんすが、
一応詳細はわたしのデータバンクに記録されて「経験」として蓄積されていきます。
きっとどこかで何かの役に立つ日は来るのです。

仕上がりはお客様にもとっても喜んでもらえました。タイヤが欠けてて動かせなかったのが使えるようになるって大きな価値だよね。
お客様ご機嫌。
それが一番大事。
そしてわたしはまた一つ面白いケースを経験して、

さあ次行こう!

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