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【初見感想】新『ガンダム』履修「UC+NT+F91」編

よくきたな、お望月さんダヨ。

令和開始からの1年間で初代ガンダムから逆襲のシャアまでを履修した俺たちは新たな宇宙領域に飛び出すためにアニマックスでのガンダムUC+NTの一挙放送を利用して新作シリーズに手を出し始めた。いわゆる「シャアとアムロ」の延長線上にある世界。そこではジオンとニュータイプの物語に決着をつける壮大なサーガが演じられていた。

ここでは作品鑑賞中の反応を鑑賞順に掲載していこうと思う。初見感想は最上の娯楽であるゆえに。

前回までのガンダム履修

機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)(2010-2014年)

シャアが死んで数年。小惑星アクシス墜落という大破壊を免れても人類に進歩がもたらされることはなかった。

とあるコロニーの高専生バナージは逃亡者オードリー(実はジオンの姫君ミネバ)と出会い、彼女を守るために守護者としてユニコーンガンダムへ乗り込む。しかし、ユニコーンガンダムには宇宙世紀をひっくり返す「ブラックボックス」を開く鍵であったことで、大変にややこしい事態を引き起こしていく。

ユニコーンへ乗り込んだバナージはその立場の特異性から各陣営を渡り歩き戦争の裏側にある「人間」と触れ合うこととなる。ジオンの姫君を守りながら戦い続けたアムロの足跡を辿るように冒険をしながら、シャアのせいで行き詰ってしまった先代を乗り越えるようにループはらせんを描き少しずつ新たな局面へ向かっていく。

一方で(ネオ・ジオン・残党)「袖付き」の"シャアの再来"フルフロンタルやガルマンクスがバナージに巨大感情を向けながらも「ブラックボックス」を確保するために、決して殺さずそれでいて甘くもなくゆっくり包囲していく。このためある一定段階までバナージの安全は保障されている=周りの関係者はどれだけ死んでもよいという緊張感(喪服の用意)が持続する。

(なおタイムラインのジオン残党は第4話のジオン同窓会で盛り上がっていたが、私はまるでピンとせず水中ロボの愛らしさだけに目を奪われていた)

物語は再び宇宙へ。ブラックボックスの座標が明らかになり人々が物語のスタート地点へ集結する。ゲスト出演のブライトさんがアムロの遺影に話しかける等の旧ファンサービスがある。

色々ありそれは宇宙。
ガンダムUCのメインヒロインであるマリーダさんがニュータイプ正気爆弾※ を発生させる。マリーダさん、ガンダムの負の歴史と救済を一人で背負わされた女。はやいよ、早すぎるよ。

※NT正気爆弾:ニュータイプの素質がある人間が爆発四散する際に感情や記憶を周囲数㎞に放つ精神爆弾の一種。ショック効果により周囲の人間は争いを止め正気を取り戻し、感受性の強いニュータイプであればこの時点で決着することもありうる。

一方でガルマンクスにも正念場が訪れる。シャアの幻影フルフロンタルへの幻想を理想化させ巨大感情を走らせる男。バナージ=ユニコーン=NTキラーが放つ近距離精神感応攻撃 NT有情拳※ により説得されそうになるも、あまりにも剥き出しの精神に触れられたことにより自害してしまう。

※NT有情拳:ガンダムユニコーンが全身のサイコフレームを駆動させて音を越えた拳。非接触の精神交換により相互理解とサイコ兵器の強制収奪を強制してしまう最終兵器。ユニコーンが覚醒(勃起)した状態では効果が拡大し菩薩のシルエットが浮かび上がる。

そして、最終こじらせ男のリリィ先輩が最終話にして大爆発を起こすが、それはそれとして和解した二台のガンダムが"シャアの再来"としてバンダイナムコにでっち上げられた男、フルフロンタルと対峙することになる。

シャアの器、フルフロンタルは「ガンダムの歴史」を背負わされ続けてきた木偶である。死んでいったモノたちやファンやスポンサーが戦争の終結を許さない……だが、やがて彼は自分の幽霊を見た。己はすでに死亡しており、が求めていた世界の最小単位の姿を見てしまった。そして、フルフロンタルは「熱」を感じて、成仏した。これが……心か……

アムロが去り、シャアが去り、新しい世代に残された宇宙で腹の底まで割あった若者たちが手を結び合い、これまで死んでいった者の心(スペースでブリ的に発生する残留思念 #宇宙世紀怪異 )を集めて宇宙を滅亡から救うのであった。

宇宙を滅亡から救ったもののユニコーン角が膨張しニュータイプの進化系、サイコフレームと一体化した宇宙七人ミサキになる寸前でバナージは現世への帰還を選択する。ミネバと手を取り合って対話を重視していこうと。ブラックボックスは開かれ、もはや宇宙世紀に後戻りはないのだから。

ガンダムUC総評

機動戦士ガンダムからの卒業を目指した本作はシャアを完全に葬り成仏させることによって新たな段階へ向けた舵を切った。報復の連鎖を断ち切り新たな価値観を浮上させるための十分な希望を持たせたエンディングは期待が持てるものだと思う。

本作で考えさせられたのは、初代ガンダムで高く評価したランバラルやドズル等の武人的登場人物たちについてだ。彼らの価値観は視聴者目線としても旧時代的であり、それゆえに理解しやすい。善悪は別として明確な価値観によって行動する人物は好感を持たれやすいものだ。

だが、彼らの価値観については理解しやすいだけで正しくない。魂を重力に引かれた者たちの立場だ。様々な宇宙世紀を旅することで無数の価値観を知り私もそれを理解することができるようになってきた。とにかく人々は対話しなくてはならない。そういう物語であったと思う。

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機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)(2018年)

ガンダムUCで開かれたブラックボックスは、宇宙へ一瞬の衝撃を与えたがそれは新たな複合企業体の勢力争いのきっかけでしかなかった。ユニコーンガンダム幻の三号機を巡り新たな戦争が幕を開けようとしていた。

ガンダムユニコーンには幻の三号機が存在していた。表向き廃棄されていたそれは補給もなく永遠に動き続け襲撃を行うことからフェネクス(不死鳥)と呼ばれ恐れられていた。物語はその捕獲作戦から始まる。

ガンダムNTを操るヨナはフェネクスの捕獲に失敗する。まるでわざと失敗したかのように。なぜならフェネクスには彼の思い人ミシェルが乗り込んでいるからであった。そしてそれを仕向けているのはヨナを想うリタの陰謀であったのだ。

ということで幼馴染のESP三角関係と宇宙ロボをダシにしたメロドラマに感情を失いかけていたのですが、ここで本命の悪役役が登場して潮目が変わります。その名はゾルタン。"シャアの再来"フルフロンタルと同じ釜の飯を食い、バンダイナムコによってシャア候補生として育てられた男。おい、バンダイてめえ!シャアを成仏させたのにまた問題を起こしてるじゃないか!!

このゾルタンさん、非常にこじらせた男であり根が非常にまじめ。エキセントリックな役回りが多いおかげか楽屋でのあいさつは欠かさないタイプ。シャアの再来という軛を解かれついに俺の時代だ!と調子に乗り、コロニー内部でビームを撃って穴をあけようとするなどはっちゃけ始めます。そして、ネオジオングダブルツインマークツーセカンド※を発動した途端に、ヨナのNTガンダムによってネオジオングダブルツインマークツーセカンドが寝取られてしまう。

嗚呼!!嘘っぽいほど空回りするセリフと実行力だけを与えられたゾルタン!その力を奪われて絶望し涙ぐむゾルタン!お前はなんて愛おしいんだ。

※ネオジオング:モビルスーツと合体して起動する大型モビル装置。発動直前にヨナに寝取られるが、本体の能力は触手によって他のモビルスーツを意のままに動かしたりガスタンクを爆発させたりする首のない起動仏像である。

悪役を真面目に演じるゾルタンの好演から、この作品が好きになってしまい終盤のニュータイプを集めるとサツガイ※や功徳兵器※のようにPOPするフェネックの習性やメロドラマもぐんぐん楽しめるようになり、最終決戦でのガスタンク轢殺や触手アタック、NT正気爆弾からのヨナのフェネック搭乗、宇宙七人ミサキ ※の完成、そしてバナージの再登場とフェネックスの昇天、後半部分は一気に楽しめてしまいました。

サツガイ:ニンジャスレイヤーに登場する謎の怪ニンジャ存在。リアルニンジャやニンジャ遺物の存在を感知して半自動的にPOPしてくる黄色い衣の男。
功徳兵器:黄昏のブッシャリオンに登場する衆生を強制解脱へ導く自律仏陀型兵器。徳の高い存在を発見すると徳エネルギーとするために捕獲する。
七人ミサキ:宇宙高知県等で知られる船幽霊の一種。常に七人で行動し一人を加えると戦闘の一人が抜け出して成仏することができるらしい。本作のフェネックの怨霊的行動原理に近い。

ガンダムNT総評

ガンダムNT、オカルト心霊科学とニュータイプ物理学を上手に折衷した娯楽作品だと思います。なんだかんだで良い感じに終わったのでは?悪役ゾルタンの熱量が高く、それに引き上げられるように三人+一人の主人公と殉死眼鏡が集うシーンは上がりました。結果的に、非常に爽快で爽やかなエンディングを迎えることができました。

メカにはあまり興味がなかったけどシナンジュは覚えたよ!(見比べて判定できるかわからない)

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機動戦士ガンダムF91(1991年)

ガンダムUCとNTの時代から数十年後。もはやシャアやアムロと同期の現役はもういない。腐敗した連邦政府と宇宙貴族の争いは宇宙海賊クロスボーンバンガードの介入により再燃しようとしていた。

というわけで少年や民間人が次々と死んでいくハードなテロ死が描写されていきます。腐敗しきった連邦軍と実行力として宇宙海賊を操る宇宙貴族の争いに心が痛んでいきます。ゾルタンですらやらなかったコロニー内のビーム掃射を撃っちゃうんだ、連邦政府は。

宇宙海賊の重役「鉄仮面」はヴァンプ将軍に酷似した男であり全宇宙人類の抹殺を託された強化人間です。彼はヒロインの父であり超でっかいモビルアーマー(全人類への弔辞としてお花型の)を操るなんかすげーやつです。

後に知ったのですが本作(F91本編)は、TVシリーズ24話分を115分に圧縮したものらしくどんどん新手の激重感情が登場しては爆発していきます。新ララアも猛スピードで戦ったり裏切ったりして愛憎の中で散っていきます。もうどうしたらよいの。

公開順では、90年代ですが時代設定的にはUC以降であるという展開。あれだけ頑張ったのに……と思いつつも、あいつらならやる。絶対腐敗させるという確信もあり、大河シリーズならではの説得力が逆に存在してしまいます。これはこの順番で履修していなければ感じ取れなかった部分かもしれません。

ガンダムF91総評

猛スピードで人が死に重みだけを残していく質量のある走馬灯のような展開。それでいてヌケのよいアクションシーンや最終局面のほぼリアルニンジャみたいな挙動にハッピーエンド的なイメージ。ガンダムの組み立てや戦艦の接地等、メカニックの描写をアップデートしようしたフェチズムもあり俺たちの戦いはこれからだ!という結末も含めてよい作品だったと思います。

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新鮮な質量をもった初見感想はこっちだ!!

以上です。
思ったより長引いてしまった。ガンダムっていうか、人間ドラマっておもしろいね!!

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