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日曜日のクルーメイト #0073 Paint the wall!!

アロハ、クルーメイト。
いかがお過ごしでしょうか。

冲方は、全ての連載の〆切が大集合する7月に、渡米や取材が重なり、かつ来月はお盆進行とあって〆切が早まるという、久々に超ハードワークとなっております。

ここで、「意外にこなせてしまうぞ」などと思い上がると、たちまち生活と健康が崩壊していくことは何度も経験済み。
それではかえって、執筆を遅らせることになってしまうのです。
航海士が適切な航路を策定するように、そろそろスケジュールを調整せねばなりません。

と、こう書いておくことで、担当編集者に、あらかじめ現状を示すことができるのも、このnote記事のよいところ。
どの作品を期日調整の対象にするか、賢明なる編集者諸氏においては、おのずと心得て頂けること間違いありませんので、きっと話が早いはず。

そんなわけで、「今とっても大変なんです」アピールを、さりげなくほのめかしつつ、今週も元気に参りましょう。

今週の一葉 ロサンゼルスの壁塗り師たち

さて、こちらは紹介し損ねていた、ロサンゼルスで大変驚かされた「壁塗り」職人たちの仕事の様子。

日本の銭湯の壁絵師たちも驚くに違いない、ハイクオリティな直描きの壁面広告。

でかいビル(ホテル)の壁に、ゴンドラを吊して複数人がせっせと色を塗り続けております。
ちょうど、イベント会場に行く通り道にこのホテルがあったため、たびたび通りがかり、そのつどちょっとずつ完成していくのを見守っておりました。

壁に描いたとは思えないクオリティの高さ。
緻密な計算によるものでしょう。定点撮影して動画にするだけで別の広告になりそう。
コロナと銃と貧困という問題を抱える一方、このように街角のいたるところでハイクオリティなエンタメ心を感じる都市でもありました。

今週のお題 タイムスリップ

今週の宣伝!

早川書房SFマガジンにて『マルドゥック・アノニマス』連載中!
オール讀物にて『剣樹抄』17話が来月掲載の予定!
別冊文藝春秋にて『マイ・リトル・ジェダイ』7話が次号掲載予定!

『骨灰』『RWBY』『蒼穹のファフナーBTL』(略すとサンドイッチっぽい)その他もろもろ、続報をお待ちあれ!

以上!
というわけで、〆切が大変という以上に、今週末は、あれもこれも解禁前のため、出せる情報があまりに少なく、いっそお休みしようか、とも思っておりました。

しかしそんなときこそ、日頃の思案や試行錯誤を、クルーメイトにお尋ねするよい機会となろうもの。
そういうわけで、久々に「お題」です。

ある人物が、あるとき20年後の未来にタイムスリップしました。

未来では、当然この人物は長いこと行方不明扱いとなっていたため、住居も仕事もなく、無一文になったかに見えます。

しかし実は、タイムスリップをする前に投資をしており、それが20年かけて、当初の何百倍もの資産となっていたのです。
この人物は、その資産を、自分のものとすることができるでしょうか?

一方で、実はこの人物、タイムスリップ前に罪を犯しており、服役することになっていました。
その刑期は、ちょうど20年
しかしタイムスリップしたため、一日も服役してはいません。
この人物は、未来において、服役するのでしょうか? それとも刑期を務めたとみなされて釈放されるのでしょうか?

以前、皆さんとの「一緒に作ろう企画」で票決された『さよなら、ブラック』にも通ずる、「未来に行ったらどうなる?」という、ちょっとした思考実験。
この人物が直面する未来は、四パターンとなります。

「資産を得て、釈放される」
「資産を得て、服役する」
「資産を得られず、釈放される」
「資産を得られず、服役する」


果たしてこの人物は、どうなるべきなのか?
のちほど、投票ツイートを投稿いたしますので、ぜひ、直感的にお答え下さい!

コメント・トーク

森人さんからのコメントです!
お題も何もないのに、いつもコメントを投稿して下さる精鋭職人に敬礼。

そういえば、『ヒロイック・エイジ』もまた、「誰も死なない」ということを、あえて謳っておりましたね。

作中の登場人物の「死」は、どうしても、物語上の「回答」として扱われがち。
最もわかりやすいのは、「善なるものは生き残り、悪なるものは滅んで消える」という勧善懲悪的な回答。
「善なるものが生き残れないのは、悪なるものが栄えるせい」という逆の回答も同様。
勧善懲悪は物語の強度を高めてくれるため、今も、代替品のない重要な骨格を担っています。

けれども現実は、単純な勧善懲悪で語れるものはほとんどありません。

とりわけ現代は、複雑な対立構造に、誰でもとりこまれてしまう危険に満ちています。
そんな時代に、作中人物の「死」を、単純な「回答」にしないためには、どのように描くべきか、ますます考えさせられるようになりました。

余談ですが、先日も仕事中、『ブラックアンドブルー』という映画を流しておりまして。
黒人・女性・新人」の警官が、「白人・男性・ベテラン」の捜査官と対立する、大変明白な、弱者救済と勧善懲悪が描かれておりました。

しかし結果、両者が和解して、ともにコミュニティを築くことは、途方もなく難しく、不可能に近い、という印象を受けてしまったのです。

もちろんそれが当作品のメッセージではない、とは思いますが、ともすると「対立は不可避であり、やるかやられるかだ」という態度を、人々に促しかねない。その危険を、ひしひしと感じさせられた次第。

むしろ今こそ『ヒロイック・エイジ』のような、対立は激しくとも、最終的に互いに善悪のレッテルをはらず共存しうる世界を(人々に好まれるかどうかはさておき)描くべきでは、などと思うのでありました。

あとがき

今週は宣伝ではなく、お題や雑想が主な記事となりました。
ときおりこういう遊びを入れることが、長続きするコツなのではなかろうかと書いていて思った次第。

いかにも混沌とする世の中においてこそ、自他の善意を信じ、おのれを健やかに保ちたいもの。
皆様におかれましても、世の趨勢に心を煩わされることなく、どうぞ晴れ晴れとした一週間をお送り下さい。

冲方丁でした。

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