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日曜日のクルーメイト #0049 『破蕾』重版出来、大感謝!!

ハロー、クルーメイト!

いよいよ旧暦でも新年となった日曜日、いかがお過ごしでしょうか?

豆は十分にまけましたか? 冲方は五色豆を酒のつまみに食べました! 美味い!

そして! 今年の節分を機に、ディズニー+に加入してしまいました! やばい!

もとからステイホーム気質でしたが、ますます外出しなくなりそうで我ながら怖い!

さっそく『エターナルズ』や『ミラベルと魔法だらけの家』、『モアナ』など、観る機会がなかった作品群を堪能しつつ、『ズートピア』などを再視聴し、スターウォーズは『マンダロリアン』から、スターチャンネルは『ウォーキング・デッド』の最新話を楽しんでおります。

加入して数日なのに、観すぎです。仕事中も流しっぱなしです。

感情の過剰摂取はいけない、などと数回前の記事で書いておりますが、かなりの過剰摂取。

それにしても。

まったくもって、ディズニー・ワールドの主人公は、冒険への動機が、シンプルかつ普遍的であるよう、きわめて入念に考えられています。

そして、その動機に全力で視聴者に共感させるための装置を、主人公が身を置く環境のいたるところに、これでもかと配置する。

のみならず、必ず息抜きとなるピエロ的なキャラクターも置く。

そんなディズニー作品を観るたび「コンソメスープ」を連想します。

コンソメの名は、「完璧に仕上がる」を意味するラテン言葉「consummatus」からきているとか。

様々な食材を投入し、念入りに手をかけ、透明度の高い、風味豊かだけれども、決してしつこくない、「完璧なスープ」に仕上げる。

他方で、コンソメにはフランス語で「消費する」という意味もあるそうで、現代の大量消費に耐えうる作品作りのヒントも、示してくれているように思えます。

学ぶにしくはなく、いずれ創作学習用の個人noteでも、記事を書きたいところ。

冲方も、いつかコンソメな執筆ができるよう願い、マンダロリアンのように「THIS IS THE WAY!(我らの道!)」と叫んでしまいそうな週末なのです。

そんなわけで、今週も、元気に参りましょう!

今週の宣伝① 雲居るい『破蕾』重版出来!

まずはこちらの宣伝を!

担当さんから急に連絡が来て、なんだろうと思ったら、なんと重版!

雲居るい、デビュー作にしていきなりか! すごいな! やるな!

などと、自分のことなんだか、誰かのことなんだか、よくわからない気分にさせられましたが、なんともめでたく、嬉しい!

こうなってくると、「雲居るいの第二作」が現実味を帯びる気もしており、楽しいような、戦々恐々とするような、不思議な気分。

いつか雲居るい名義の何かを新たに発表し、ひいては、冲方丁と対談してみたいものですね。

なんであれ。

こうした自発ではない、他発のインスピレーションを受ける貴重な名前を与えて下さった、新名義募集の応募者の方々には、改めて大感謝なのです!

今週の宣伝② 『ばいばい、アース』コミック掲載!

続いてこちら!

詳しくはすでに記事がありますが、『ばいばい、アース』コミック、最新話が掲載されております!

原作では、おどろおどろしい敵であるティツィアーノの、さまざまな姿が描かれていて、漫画ならではの展開に胸が躍る!

個人的に大好きなジンバックとギネスが、いよいよ合流するのも嬉しい。

ベルたちは、絶体絶命の危機から脱出できるのか? 

ぜひお楽しみ下さい!

今週の宣伝③ サブスク「WEB別冊文藝春秋」

さてお次はこちら!

別冊文藝春秋さんが、サブスクを開始!

連載中の『マイ・リトル・ジェダイ』も読むことができます!

文芸誌のサブスクの試みが、もっと広がることで、新しいメディアへと生まれ変わってほしい!

ぜひ、当マガジンにて、『マイ・リトル・ジェダイ』の連載をお楽しみ下さい!

今週の小ネタ 『マルドゥック・アノニマス』のキャラ作り参考ドラマ


『マルドゥック・アノニマス』第42回を、このほど無事に脱稿! やったー! つかれたー!

地図を作ったおかげで、素晴らしく執筆が順調でした。

やはり、下地作りは重要なのだと改めて実感。

ハンターの配下たちが、それぞれの立場を強めようとせめぎ合いつつ、シザース狩りという名の大抗争へひた走る。

8巻の冒頭となるシーン、ぜひお楽しみ下さい!

ところで。

物語や人物を考案するやり方はいろいろありますが、冲方の場合、自分の中から、あるとき、ぽん、と出てくる自発のものを重視します。

いろんな刺激がごった煮になった結果、結晶化した何かが転がり出てくるので、もともとの由来はよくわからない、ということがほとんどです。

既存の作品を参考にする他発的な何かを採用することは滅多にないため、BGMのように配信ドラマを流しっぱなしにしても、あまり執筆に影響はありません。

たとえば『ウォーキング・デッド』や『キングダム』を流しながら『剣樹抄』を書いても、突然、お江戸にゾンビがはびこることもないわけですし、うっかり作品の世界観にまったくそぐわない人物描写をしてしまうこともありません。

しかし。

ときに、まるで注意事項のように「あの作品のあれっぽい感じね」という但し書きつきで、ぽぽん、と脳内から出てくる登場人物もいるんですね。

脳内の「人物設定」担当者が、いつどのタイミングでそういう但し書きをつけるのか、いまだによくわからないのですが。

「あの作品の誰々のこういう感じでよろしく」と示されたものほど、なんというか、書くうちに、とんでもなく意外な動き方をするんです。

自発と他発というインスピレーションの違いともいえますが、他発のものほど自分ではやらないような要素があらかじめ混入されているため、予測不能なところが書いていて面白いのです。

そんなわけで。

ここでは、特に明白に「他発」であるといえる、三人のキャラをご紹介!

その1 ライム

フルネームは、トビアス・ソフトライム

ソフトライムは、「柔らかい霜」のこと。

果物のほうではなく、ふわふわした霜のほうです。

あのバロットと、突如としてラブコメ展開を始めるとは、作者ですら予想できず、次々に予期せぬシーンを生み出していく人物であったりします。

与えられた能力を「消したい」などと言いつつ、ちゃっかり現場指揮官として働くなど、マルドゥック・シリーズ屈指の自由な振る舞いをし、かつ死にそうにないとみせかけて、死ぬんじゃないかと作者をびくびくさせるライム。

そんなライムを描写するときの但し書きにあったのは、こちら。

『CSI』のウォリック・ブラウン

とにかく眼が綺麗

何かを見つめるときの表情が、やたら切なげ

ただ、役者さん自身が、麻薬所持などで逮捕されたりしたため、シリーズ途中でいなくなってしまいましたが、そのリアル人生もふくめて参考にすべし、と脳内の「登場人物」担当は言っております。

『マルドゥック・アノニマス7』のライムは、バロットに命令したり、無視したり、からかったりと、「こいつは次に何を言い出すんだ?」と、書き手すら戸惑わせる、希有な人物に育ってくれました。

「書いていて最も楽しみな人物」の一人、ライムの活躍をお楽しみに!

その2 マクスウェル

マクスウェル・ウィーバーこと、銃狂いの大ボスこと、元汚職刑事こと、自分を告発しようとした実の娘を射殺しようとしてレイ・ヒューズに片腕を吹き飛ばされ、逮捕された過去を持つ、変態カマキリ爺さん

『剣樹抄』の錦氷ノ介にならぶ、書きごたえのある悪党ですが、この人物にも「こういうふうに書くべし」という但し書きがついておりました。

それが、こちら!

Netflixのドラマ『ゴッドレス』の悪役のボス、フランク・グリフィン!

主人公に片方の腕を撃たれて失っており、隻腕のガンマンとなっております。

設定がそのまんまです。

なお、この『ゴッドレス』、炭鉱の事故で男たちが死んでしまい、女だらけとなってしまった町の人々が、なんとか生き延びようとしているところに、育ての親のグリフィンを裏切った主人公が逃げ込む、という物語。

随所に工夫があって面白く、登場人物一人一人の丁寧な作り込みが素晴らしい。

眼の病気で、失明寸前の保安官が、そのことを誰にも言わず、なんとか職務をまっとうしようとして悪戦苦闘するなど、個々人のドラマのひねり方が大変良い。

そんな『ゴッドレス』で、驚愕のひとこまが。

ネタバレになるので詳細は避けますが、悪党のボスである、隻腕のフランク・グリフィンが、いきなり服を脱ぎだし、半裸で決闘するシーン

これがまた、原始的かつ神話的ですらある、美々しい決闘シーンとなっていて驚愕しました。

その強烈な画作りが、さぞ印象に残ったのでしょう。

これを、マルドゥック市で、なぜ脱ぐか、ちゃんと意味づけしてやりなさい」と、設定の但し書きにあった次第。

銃撃戦に赴くときに、わざわざ服を脱ぐとか、本当に変態です。

原始的歓喜の表現として、おそろしく忠実な何かを感じます。

鞘を捨てて決闘に赴く侍を、棒高跳び的に超える何かではないでしょうか。

このような素晴らしいインスピレーションは、子々孫々にわたって全世界で受け継がれてゆくべきだと心から思います。

そんなわけで、3月刊行の『マルドゥック・アノニマス7』では、変態カマキリ・マクスウェルVSバロット+ウフコックの決闘を、どうぞお楽しみに!

さて。

三人の大トリです。

その3 ジェイク・オウル

ハンター配下となったエンハンサーの一人。

体内で生成される、塩を主成分とした物質を、自身を中心に高速回転させることで「光る電気ノコギリ」と化す人物

麻薬の運び屋を担う、バイカー集団のエンハンサー・チーム〈シャドウズ〉のリーダーでもあります。

カナダとアメリカの麻薬取引では、いわゆる「バイカー」が、その運搬に欠かせないとのこと。

日本の暴走族やバイカーとだいぶ印象が違います。

州をまたいで走り回る彼らが、越境ビジネスの筆頭たるドラッグ売買と結びつき、コミュニティとしての犯罪バイカー集団が形成されたとか。

そんなわけで。

非合法バイカーの参考になるものはないかしら、と調べたところ、すぐに出てきました。

素晴らしくヒロイック、かつ、良い子は真似をしてはいけないドラマ!

ドラマ初期はドラッグではなく銃器売買ですが、ほどなくしてドラッグにも手を出します。

主人公のジャクソン・テラーが、脳内の「登場人物」担当のお気に入りらしく、ジェイク・オウルを書くたびに、頭をちらちらよぎるのです。

ただ冲方としては、銃器とドラッグの売買には、100%共感できないこともあり、どうしても描き方が、悪党というより「悪党に利用されている末端の人たち」に傾きがちなところがあります。

正直なところ。

『サンズ・オブ・アナーキー』は、人間ドラマとして大変素晴らしいですが、人生のモデルロールとしては、『ブレイキング・バッド』や『ベター・コール・ソウル』などと並び、自分本位の人々が他人を巻き込んで盛大に自滅する話であり、反面教師という意味でのみ倫理的といえるでしょう。

そんなわけで。

『マルドゥック・アノニマス』42回では、ドラッグ売買という収入源を巡り、〈シャドウズ〉が他のグループを出し抜こうとしますが――

ぜひ、次号のSFマガジンでの掲載をお楽しみに!

コメント・トーク

実は。

今回の記事は、〆切の都合上 金曜日に書いております。

コメントの多くが土日にあるのですが、ぜひ次週のトークに引用させて頂ければ幸い!

では、今週のクルーメイトのコメントを見て参りましょう!

森人さんからのコメントです!

いつもありがとうございます!

これは素晴らしい! さっそくやってみたところ、体の軸をとても意識できます!

姿勢というのは重力に対する人の振る舞いそのもの。

『アクティベイター』を執筆する際、格闘についていろいろ調べたのですが、端的にいって、格闘とは姿勢と動作の研究だと思いました。

どのようにして自分は地面に対して垂直であり続け、相手を地面に対して平行に近づけるか。

上達者は、相手を見た瞬間、倒せるかどうか、だいたい姿勢から「わかる」そうで、突き詰めると、いろいろな眼力が蓄えられるものだと感心します。

ただ、物理的に誰かを倒したいと思わない限り、なかなか深く理解しがたいところがありますが。

さておき。

姿勢を意識する一週間を送ったのですが、どうも自分は、「つま先立ち」が多いことがわかりました。

若い頃にずっと陸上をやっていたせいか、爪先での瞬発に頼るところがあって、かかとでの支えを、おろそかにしがち。

まずは座り方だけでなく、歩き方も変えていこうと思います。

どうしても、一日じゅう座っていることが多い現代人。

「腰を据える」すべを、まだまだ学ばねばなりません。

黒井真さんからのコメントです!

そうなんですよね。

緊張に満ちた現場にいればいるほど、「どうしたら合理的に最悪の事態を避けられるか」を考えるのが人間というもの。

心理学的にいう「単純接触効果」もあり、たとえ軍事的行為だとしても、何度も接触することで、かえってだんだん警戒心が薄れ、親しくなっていくし、どんどん好意的になっていく、という人間独自の傾向もあります。

もちろん、どんどん嫌いになっていく場合もありますが、それは、威圧されたり悪口を言われたり、と様々な手段で攻撃されるからでしょう。

軍事的な緊張関係にあるとわかっていても、抑制された状態で遭遇を重ねれば、相手の特徴が見えてきて、結果的に交流しているような気分になるのかもしれません。

そんな物語を書きたいものですし、現実に最前線にいる方々が、様々な衝突の代償を払うためだけに、血を流し合うことがないことを願ってやみません。

あとがき

さてはて。

例のあれが猛威を振るっている昨今。

あれのそれに言及するだけで、「この記事には注意して下さい」みたいな注意書きが出るのも、昨今の風潮。

では、どうせよということが、棚上げとなったまま、かつてなく、一人一人、個々人の生活に差が生まれ、共通する言葉が欠けていくこの日々。

いつか、近い日に、全ての人々が、この体験をもとに、共感しうる、わかりあえる、理解し合える、そんな何かが生まれることを願って。

どうか。

健やかであることを大事に。

素敵な日曜日と、一週間を過ごされますことを!

冲方丁でした。


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