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日曜日のクルーメイト #0056 春が来る

ハロー、クルーメイト、いかがお過ごしですか?
冲方はやっと復活、と思いきや、またぞろ低気圧不調でダウン
目下、ラジオ体操と加圧ソックスの力で春の三寒四温を耐えております。
むしろ春のほうが、真冬よりも辛い思いをしている気がします。

低気圧不調の原因は、体内の水分バランスが崩れ、余分な水が体に溜まることだとか。人間は、ほとんど液体だということを実感しつつ、ぐにゃぐにゃのスライムな気分で匍匐前進する週末。
皆様におかれましては、どうか天候に負けず、元気に週末をお過ごし下さい。

さて。
先週も、お蔵ストック企画への投票ありがとうございました!
いよいよ企画が決定しましたが、選ばれなかった企画もいずれ形にしたいところ。

ではでは、今週の宣伝から参りましょう。

アニメ『RWBY』脚本参加

何年か前に、「アメリカの3Dアニメ『RWBY(ルビー)』って知ってます?」とバンナムさんのプロデューサーから尋ねられたときは存じ上げず、送られてきたBDで第四シーズまで拝見し、いろいろとビックリさせられました。

デザインやアクションなど日本風のテイストがありつつ、根本的に日本で作られるものとは違う。これは学び甲斐があると思ったものです。
実際、シャフトさん、バンナムさん、虚淵さん、Hukeさんとの会議も楽しく、願わくば、この素晴らしいアニメーションを作り上げた、故モンティ・オウムさんの言葉も直接聞きたかったです。

そして……と詳細を語るとネタバレになりかねませんので、そのうち頃合いを見て、当時の制作風景などご紹介したいところ。

ところで。
監督の鈴木利正さんとは、『蒼穹のファフナー』でずいぶんご一緒しているのですが、改めて確認すると、かなり大事な話数に参加されております。

『HEAVEN AND EARTH』のほか、『RIGHT OF LEFT』、『EXODUS』17話、『BEYOND』6話と、とりわけ重要人物が戻ったり去ったりする展開をピンポイントで担当されており、スタジオにおける信頼の高さが窺えます。

脚本作業はしばらく前に完了しており、みなさまとともにアニメの完成を楽しみに待ちたいと思います。

ツイートにつきまして

さて。その『RWBY』。
アメリカ側のキャストの一人が、冲方が過去に逮捕された件に関連してツイートしたのに対し、こちらもツイートをお返ししました。

その後、バンナムさんから、『RWBY』を制作しているRoosterTeethサイドふくめ、冲方へのお詫びの連絡がありましたので、以後、この件での発言は控えたいと思います。

また、アメリカのSNSは、日本以上に、政治的になりがち。
全く関係のないコンフリクト(紛争)に巻き込まれないよう、適切に距離を取りたいと思います。

ところで。
冲方が経験した、この国の刑事司法について、ご興味がおありの方はぜひ下記の『こち留』を御覧下さい。

刑事司法の是非を問う映画『それでもボクはやってない』の周防正行監督との対談や、担当弁護士の刑事事件Q&Aも載っており、「いざというとき」、きっとお役に立つことでしょう。

宣伝 『こち留』

実は。
今回のツイートの件がきっかけで、もろに留置所の光景のフラッシュバックに襲われ、昨日などは、朝から吐きっぱなしでした。

警察は、捜査や取り調べと称すれば何でもできますし、警察署内という密室の中では、実際何でもやります。
犯罪の証明はさておいて、有形無形の暴力で自白させることが最も手っ取り早いとし、平等に誰もかれも、いじめ倒します。

手足を縛られて24時間放置される人もいました。
貸し出し図書を枕にした、という些細な理由で、十人以上の警察官が集まってきて、延々と怒鳴られ続け、ひたすら詫びさせられる人もいました。
相手が、片言の日本語しか喋れない外国人であったり、認知症の兆候がある高齢者であったとしても、警察は気遣うのではなく、折れやすい相手とみて滅茶苦茶にいじめます。
もはや拷問施設としか言いようがありません。

目的は、逆らう力を奪うこと。裁判の前に、相手の心と体を可能な限り弱らせておくべきだと信じて疑わない警察・検察の態度に呆気にとられました。

そして、本当にとんでもない悪事を働いた人ほど、こうした環境にどんどん適応し、巧みに証拠を消したり、他人に罪をなすりつけたりするため、いたちごっこというより再犯防止能力の著しい低さを感じたほど。

こうしたことの背景には、「法律のゴミ屋敷」と言われる日本の法律全般の問題があります。
現代人の常識からかけ離れた様々な古い法律を、なんとしても変えたくない人々がいるため、警察・検察・裁判所そのものが前近代的な法に従って運営されざるをえません。留置所や入管を合法的な拷問施設にし、人が死んでも構わない場所にしているのは、「歴史ある」日本の法なのです。

それでも冲方の場合、徹底的に戦い、優秀な弁護士二人に助けられたおかげで、勾留期間も短縮され、9日間で不起訴となりました。
勾留は原則10日間で、最大20日間という建前ですが、半年だろうが1年だろうが閉じ込めっぱなしにもできることを考えると、最短で決着したといっていいでしょう。

それでも、自由を、通信を、尊厳を、睡眠を、栄養を奪われ、体力を根こそぎにされた9日間であり、7年経った今でも、何かきっかけがあると当時のフラッシュバックに苦しみます。
一晩中、眩しい光を浴びせられて顔を覆うことも禁じられ、浅い眠りにしかつけなかった日々を思い出すだけで、気持ちが悪くなってしまいます。

作家としては、ある意味で「かけがえのない体験」であったのだ。
そう強気に思い、地道にフラッシュバックを克服してゆきたいもの。

フラッシュバックといえば、先日の福島の地震
東日本大震災をきっかけに味わってきた様々な感情がどっとよみがえり、平静になるのに苦労させられました。同じ思いをされている方が大勢いることでしょう。

そういう意味で、『蒼穹のファフナーTHE BEYOND』における故郷への帰還のシーンは、書いている自分も救われたものです。

人間には、「心の復興」も必要であり、作品作りを通して、少しでもその復興に貢献したいと思う次第です。

第26回 プロミス・エッセー大賞

さて、だいぶ余談が過ぎました。

今週末は、エッセー大賞の授賞式に出席。
このご時世でも、人を集めて「式」を催せるほど、防疫知識やノウハウが積み重なっているのだなと感心。
とはいえ、まだまだ多くの受賞者がオンライン参加であり、対面でお祝いを申し上げられる日が戻ることを念願しております。

ところで、このエッセー大賞、応募作のレベルがおそろしく高い
しかも、年齢を問わない。みんな上手い。
これはやはり、ネットやSNSなどの発達の良い面だろうと思います。
とりわけ、日本語が省きがちな「主語」が、どの文章でもしっかりと骨格を作っていました。

文章で主語を省いて通じるのは、完全に生活と常識を共有している相手に対してだけです。
SNSなどによって、まったく常識が違う相手を日常的に知ることで、日本語における主語の扱いが変わってきたと感じます。

他方、誹謗中傷の文章などは、語り手であるはずの主語が隠されます。
いわば言葉の陰に隠れ、暗がりに潜む、非常に邪悪な態度が、主語の扱い一つからうかがえるのです。

主語がはっきりすればするほど、空気を読まなくてよく、忖度せずともよく、自由に語れる雰囲気が作られていくもの。
「みんな」という謎の主語に取り込まれず、「私」を大事にすることが、「あなた」と「彼ら彼女ら」と「人々」を大事にすることに通じ、ひいては言葉がより良いコミュニティの基礎となってほしい、と思いながら、お祝いの場に列席しておりました。

受賞者の皆様、改めておめでとうございます。

お蔵ストック企画 決選投票 結果発表!

投票ありがとうございました! 12作品のうち、最も票を獲得したのは、『五万年を旅する男の物語』という結果に!

『ドラゴン・ヴァンパイア』も『幽霊船』もだいぶ競りましたが、終始、『五万年~』がリード。

他方、これまで投票して頂いた、歴史ものやサスペンスなども一定の興味を集めたことから、どれもこれも書きたくなってしまっております

そしてなんと、さっそく早川書房の「塩」さんから「『五万年~』をやりたい」との連絡が。これは普通に仕事になってしまいそう

正直、『五万年~』は最も作るのが大変な作品ですが、お前ならやれる、とクルーメイトからお墨付きを得たと思い、奮起せねばなりますまい。

そのためにも、まずは、主題、世界、キャラクター、物語を、みなさまとともに構築したいと思います。

主題は「時の旅」であり「再会のための旅」であることが決まっており、主人公の男のキャラクターと、彼が旅する「様々な未来」が、作品の背骨になります。カウボーイがゆく、ガリバー旅行記という感じでしょうか。

五万年もスパンがあるのですから、どんなユートピアもディストピアも訪れておかしくありません。宇宙人が来ていたり、怪獣が暴れているかもしれません。パンデミック、隕石の衝突、世界大戦といった悲劇に見舞われていることもあるでしょう。文明が衰えてテクノロジーが失われていることも考えられます。
そこで、まずは世界について、クルーメイトにお尋ねです。

『五万年を旅する男の物語』で、主人公を通してどんな未来世界を体験したいですか?

あるいは、

『五万年を旅する男の物語』で、主人公を通してどんな未来の人間と出会いたいですか?


他にも、こんなアイディアを盛り込んでほしい、こういうのが読みたい、などありましたら、

#日曜日のクルーメイト

ぜひこちらのハッシュタグにて、ツイートをして頂くか、当記事へのコメント欄にてご投稿下さい!

ある程度、企画の傾向やアイディアが集まったら、最終的なブラッシュアップに関して、また投票ツイートを投稿したいと思います。

また、毎週この記事に企画書を貼りつけていると煩雑になるため、近々、創作塾用の個人noteに、この企画用のページを設けたいと思います。

コメント・トーク

では、ここからは恒例、クルーメイトのコメントをご紹介です!

森人さんからのコメントです!
すんごいアクションです。目が点になります。
これは作品に活かせますね!
『アクティベイター』の真丈太一も、自分から転がり回るファイター。地面を味方にするアクションをもっと追求したくなります。

cbxさんからのコメントです!
上手い。歌詞をクランチ文体にするのは面白いですね。
そういえば、クランチ文体も、だんだん歌詞っぽく韻を踏むようになっていきましたので、そもそも歌詞と相性が良さそう。

シシオリシンシさんからのコメントです!
おお、それはめでたい!
シシオリシンシさんの溢れるファフナー愛に大感謝なのです。
相変わらずの巧みなブロックに何度見もしてしまいます。
このブロック、キャラクターもそうですが、アルヴィスの制服であることがぱっとわかるって、すごくないですか。

そういえば、「最後の総士のセリフ」はその後、どこからかアナウンスはあったのでしょうか。
スピンオフが形になる頃には、ネタバレをしてもいいのかな、などと思っております。

再びシシオリシンシさんからのコメントです!
なんと、あの図を書き写されていたとは。よくあの短時間で書き込めましたね。すごい。

陰陽図になったのは結果的ですが、必然でもあったかな、と思います。
何しろ存在と無ですから。シリーズの結論として、ザインとニヒトが一体的になった瞬間でした。個人的にも感無量のシーンです。

kei.さんからのコメントです!
さっそくのリアクションありがとうございます!

アニメにおいて脚本は最初に仕事が終わるため、発表される頃にはとっくに手が離れて久しく、今は遠くからスタジオの戦いを見守っている気分です。

どこもコロナで大変な中ですが、誰もが健康であるよう祈りつつ、ともに完成を楽しみにしております!

新条拓那さんからのコメントです!
読んで下さってありがとうございます!
ぜひ何度も堪能して頂けるよう、引き続き鋭意執筆して参ります。

今巻、念願の地図を入れることができて、ぐっと手応えを感じました。
良いですよね、地図。
建物の図面なんかもそうですが、物語の想像を刺激してくれて冲方も大好きです。
ぜひ次号の連載もお楽しみに!

再び森人さんからのコメントです!
感想ありがとうございます!
バロットのウフコックへの愛情は、確かに、恋心のようなものではなくなってますね。バロットの成長に合わせて、盲目的な恋ではなく、観察的な愛に変わって来たのかなと思います。自分の欲求ではなく、相手の幸福を願うという態度ですね。
他方で、ライムに対しては、バロットの未熟な面が表に出まくりです。
そういう面を引き出させるという点で、ライムもどちらかというとお兄ちゃんポジションになるのか? と思いつつ、まったく予想できません。
これからどんな展開を見せるのか、冲方も書いていて楽しみです。

あとがき

改めまして、投票へのご参加ありがとうございました!
やはり何かを作り始めるときのワクワクは何にも替え難いですね。
ぜひぜひ、引き続きクルーメイトのご参加を願っております!

さて。
スケジュール表を見たところ、なんと3月は、現時点で元気だった日が4日間しかないという体たらく。残り五日間はせめて元気でいたい!

今年は健康に気をつけて、と毎年のように念じてはいますが、365日元気な1年を、なかなか手に入れられません。不調もまた体からのメッセージと思って、今後の健康に役立てるべきでしょう。

クルーメイトにおかれましては、ぜひ健やかに、楽しい日曜日をお送り下さい!
冲方丁でした。

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