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和ろうそくと洋ロウソク

「和ろうそくと洋ロウソクって何が違うの?」
和ろうそくの話をすると1番に聞かれる質問です。今回はこの質問に、ネットで「和ろうそくと洋ロウソクの違い」を検索するとよく出てくる「材料」「炎」「ゆらぎ」「スス」の4つの視点から深堀していきたいと思っています。まずは私なりに「和ろうそく」と「洋ロウソク」の違いをまとめた比較表を作ってみました。

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ちなみに前回は「和ろうそく」の比較対象である「洋ロウソク」の歴史をたどっていますので興味のある方はこちらの記事もご一読いただければと思います。それでは本題です!

■【材料】植物油とパラフィン

パラフィン。「洋ロウソク」の原料となる化学物質です。蝋燭を比較する際に必ずパラフィンの話がでます。結論から書くとパラフィンとは「石油を蒸留した残滓を精製してつくられる固体」つまり「洋ロウソク」の原料は石油ということになります。植物油を原料とする「和ろうそく」に対して、石油を原料とする「洋ロウソク」。分かりやすい違いですね。今後SDGsようなキーワードを考えていく上で現在の蝋燭のほとんどが「洋ロウソク」と言う事実は少し考えさせられるところでもあります。もっと言うと石油を原料とする「洋ロウソク」は時代的に転換期に来ているのではないかな?と考えたりもしています。

ここだけみると「洋ロウソク」が良くないように感じますが、「洋ロウソク」には「和ろうそく」にはない強みががあります。「大量生産できること」です。ですが、「大量生産できるから良い」は前時代的で、これから和ろうそく作っていく上で上で何をしていけばよいか?何を考えればよいか?のヒントがココにある気がしています。

■【炎】灯芯の違いが魅せ方を変える

次に「炎」です。これは「ゆらぎ」や「大きさ」にも直結していく話になるのですが、この違いを生み出しているのが「灯芯の構造」と考えられます。ちなみに炎の大きさ比較はこんな感じです。左が「洋ロウソク」右が「和ろうそく」です。タイミング見計らって撮ったとはいえ、全然ちがいますね。。

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まずは「和ろうそく」をみてみましょう。灯芯を作る工程としては①竹串に和紙を巻き付けて円筒をつくる。②和紙の筒にズイを巻き付け。③ズイがほどけないように真綿でしめる。の3工程になります。特徴は「ズイ」を使っている事、灯芯が大きくなる事、和紙の円筒が空気穴になる事です。この工程を今も手作りで行っています。ズイは多くの蝋を吸収し、和紙の空気穴は燃焼に必要な気流をつくりだします。結果「和ろうそく」最大の特徴ともいえる「大きな炎」が作られ、吸収する蝋の多さから風にも強いという特徴を持つと考えられます。江戸時代にはこの蝋燭に最適な構造を経験的に作り出していた事になります。先人の知恵の偉大さを感じます。

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次に「洋ロウソク」ですが、非常にシンプルな構造をしており、木綿糸をより糸にして灯芯としています。見た目は1本ですが、固めているロウをほどくと3本の木綿糸を使った撚り糸だとわかります(実はこれ画期的な方法なんですが、それはまた別の機会に)。空気穴は製造する際に人工的にあけてあります。木綿糸だけで灯芯が作れる事、灯芯が細く小さい事が特徴です。この結果、細い灯芯は吸収できる蝋も少なく小さく、風の影響を受けやすい炎になると考えられます。

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■【ゆらぎ】蝋燭だから創り出せる1/f

私も含め多くの人が蝋燭の特徴や好きなところを聞くと、この「ゆらぎ」と答える人が多いと思います。しかし「ゆらぎ」自体は「炎の特徴」だと思っています。では蝋燭の特徴はなにか?私は「揺れ方」こそが蝋燭の最大の特徴だと思っています。

どちらも「凄く優しいゆらぎ」だと思いませんか?焚き火やキャンプファイヤーの「ゆらぎ」は集まった人に暖かさや力強さを与えてくれます。一方で蝋燭の「ゆらぎ」はパーソナルな、優しい癒やしを与えてくれますよね。動画を見ていただければわかりますが、「ゆらぎ」はどちらの蝋燭にも共通する特徴とも言えます。

※動画のうまい差込み方がわからず…アプリでは見れないようなのでブラウザから見ていただければ。。すみません。

■【お手入れ】お湯で取れる「和ろうそく」

「すすが付きにくい」に関しては実は少し分からない部分があるので、最後に同じ「お手入れ」という観点での違いを紹介したいなと思います。「蝋燭が床や机に垂れてしまった!」(どんな状況!?)となった時に「和ろうそく」はお湯で拭くだけで落とす事ができます。「洋ロウソク」はお湯で溶けないため、削り落とすか砕いて剥がす事になります。

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こんな感じです。動画の方が分かりやすいですね。。。(重すぎて上げれなかった)お手入れのしやすさは「和ろうそく」自体の融点の低さも関係していると思われますが、元々木造建築や木製の仏像などが多かった日本ではこのお手入れのしやすさは良く活かされたと考えられます。「すす」の話に少し戻しても、お寺の仏像に煤汚れがないのことも「和ろうそく」を使っている可能性がありますね。

■「和ろうそく」から広がる世界

このnoteを書く前に久々に一冊の本を読み返してみました。マイケル・ファラデー著『ロウソクの科学』です。ノーベル賞を受賞した大隅良典さんや、吉野彰さんの「科学への興味の原点」というお話を聞いて手に取られた方も多いのではないでしょうか?『ロウソクの科学』は、1本のロウソクで起こる物理現象を通じて、科学の面白さを教えてくれる内容です。(読んでいない方はオススメです!)

今月は『ロウソクの科学』のように「1本の和ろうそく」から、そこにまつわる歴史や物語を掘り下げてみました。おそらくもっと色々な物語が隠れているはずです。さらに、今回最も大きな学びは「和ろうそく」が、「精油」「植物」「化学」「地域や歴史」「マインドフルネス」等様々なものへと派生して行ったことです。この世界の広がりは予想外でしたが、とてもワクワクしそうな匂いがしています!

次の更新からは「和ろうそく」の材料である櫨の木の育成や、和ろうそくの楽しみ方を紹介していこうと思います!今月のような長文にはならない予定ですので気軽に読んでいただければと思います!

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