車載スペック

車載スペックとは

車用品は基本的に高いです。

何故高いのでしょうか?

様々な要因がありますが、そのうちの1つに「車載スペックを満たしているから」という理由があります。

車載スペックを満たしていないとすぐに壊れてしまいます。


車は劣悪な環境で使われます。

冬は氷点下まで温度が下がり、夏はボンネットで目玉焼きができるくらい熱くなります。

ボンネットの中には燃料を燃やし、熱源となるエンジンもあります。

エンジンで燃料を燃やすためにはスパークプラグで火花を散らすので電磁波も出ます。

また外装は雨にも晒され、風が吹くどころか速く走ると強い空気抵抗を受けます。

走ると空気抵抗だけでなく振動も受けます。

長時間日光に照らされるため紫外線に対しての対策も必要です。

日本は多湿のため外装以外でも結露(水滴)に対しての対策が必要です。

中東では砂が多いので、砂が入り込まないようにしたり、入り込んでも耐えられる必要があります。

こんな中で壊れずに正しく動作するには普通の家電品(民生品と言われることが多いです)とは水準の違う性能を求められます。


【車載スペックとは】

明確な定義はありませんが、車載用途で使うために、民生品よりも高い耐久性を求められます。

適当に漁った資料を例にとって違いを見ていきましょう。


〈温度〉

車載品 -40〜157℃
民生品 0〜125℃

外で使われることがやはり影響が大きいです。

-40℃はガソリンに火がつく最低温度で、この温度までは使われる可能性がある為だと思われます。

157℃はエンジンの表面温度の上限です。

エンジンルーム搭載の部品はこの温度をパスしなければなりません。


〈振動〉

車載品 50G
民生品 5G

車は路面に追従しなければならないので振動が大きいです。

またエンジンは振動を生みます。

内装ならば振動は少なく感じるものだと思いがちですが、人が感じている振動はシート越しなので、シートのクッションである程度振動が減衰されています。

本来はとても振動が大きいです。

社外品のスポーツシートに座ったことがある方ならわかると思います。
(そういう車はサスペンションも固いことが多いので尚更激しい振動を体験していると思います)

ハブなどのホイールについているパーツは振動を減衰する部分がタイヤしかないので振動対策は大変です。

空気圧監視用のデバイスによってはエアバルブについているものもある為大変です。

ブリジストンのタイヤ内に装備して路面状況を推測するデバイスなんかはタイヤの裏に着くものなのでかなり大変だと思います。


〈静電気〉

車載品 15〜25kV
民生品 2kV

車は地面との接地にゴムを使っているので普通の電気は流れず帯電します。
(雷のような強いものはタイヤを通って地面に逃げます)

走行中には空気が車体の表面と擦れたり離れたりするので帯電しやすいです。

また屋外で雷を受けることもあるので静電気対策は必要です。

25kVは普通冬場に人が帯電する1kVの25倍で、家庭用コンセント100Vの250倍の電圧です。


〈湿度〉

車載品 95%
民生品 40〜80%

車は外で使われるものなので、雨を含むとても湿度の高い空間に晒されます。

当然湿度も雨の日の屋外を想定したものになる為90%以上もの湿度に耐えられなければなりません。


〈不良率〉

車載品 1ppm以内
民生品 200ppm以内

単位のppmはparts per millionの略で100万分の1という意味です。

車の故障は命の危険と隣り合わせなので高い品質を問われます。

生産に不良はつきものなので、同じく工程で産み出されたものは、厳しい検査の後に出荷されますが基準が民生品よりも厳しくなります。

自動車メーカーや部品メーカーでの組み立てに大きな工数はかけられませんから、納入する部品の品質は生産するところで保証することが多いです。


〈寿命〉

車載品 20年
民生品 10年

車は10年10万キロと昔はよく言われていましたが、これは販売促進のための方便です。

近年の車の寿命は昔よりもずいぶん伸びて平均使用年数は約13年です。

平均使用年数は事故なども含めた数字なので寿命にするともっと長いです。


〈供給〉

車載品 最低10年
民生品 1.5〜2年

生産が終了してから約10年間は部品の供給義務を部品メーカーに課す自動車メーカーが多いので、部品の供給は最低でも10年ですが、生産開始〜終了までの期間を足すと15〜20年くらいにはなると思います。

車のどの部品が壊れても車はうまく動きません。
車が長く使われる以上、長い間の供給が求められます。


〈サンプル〉

車載品 車両生産の3年前
民生品 1年前

前の方で言いましたが、車はとても幅広い環境で使われるものです。

車のテストは様々な季節に耐えうるのかを問われるので、最低でも生産の1年前からテストがされることが多いです。

そしてそれは車両本体の話なので、ASSY部品としても同じような環境を想定してテストすること、組み込んで様々な開発をすることを考えると3年くらい前には部品が手元にないと難しいです。


【あとがき】

純正品はこのような車載スペックを求められて開発されているので、当然民生品より高くなります。

社外品で安いものは十中八九民生品の転用なので、使ってると結構すぐに壊れることが多いです。

安物買いの銭失いとは正にこのことなので品質の良いものを選んで欲しいです。


出典:最近の車の電子化と車載部品の信頼性(DENSO)
http://www.oeg.co.jp/Exhibition/pdf/10oeg01.pdf

出典 自動車検査登録情報協会 主な車種の平均使用年数
https://www.airia.or.jp/publish/statistics/ao1lkc00000000z4-att/03_siyonensu.pdf

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