オートマ車のレンジ選択ミスについて

オートマ車のレンジ選択ミスについて

【はじめに】

オートマのレンジ選択ミスによる事故が発生しています。

TVCMでもトヨタやダイハツがアピールしています。

この選択ミスや事故にはどんな特徴があるのか深掘ってみたいと思います。


【なぜレンジ選択ミスが起こるのか?】

一般的なオートマのレンジ選択は上下方向にレバーを動かしてレンジを選択します。
(ゲート式含めて)

レバーを上下方向のどの位置で止めるのかで、レンジを選択します。

レバーには誤操作を防止するための仕組みが付いています。

詳しくは下記のノートを参照ください。

しかしDとRを間違ってしまう誤操作を防ぐようには出来ていません。


DとRの誤操作を防ぐように設けられた仕組みはRに入れたときのブザーです。

しかし、バックする際にブザーが鳴ったことを確認する人はとても少ないと思います。

ブザーを確認する人は、おそらくメーター内のレンジ選択も確認するでしょうし、シフトレバーの位置も目視で確認するでしょう。

確認しない人はレバーもブザーもメーターも何も確認せずに感覚で操作していると思います。

特にDに入れてブザーが"鳴っていないこと"を確認することはないでしょう。

一事が万事といった感じですね。

慣れとは怖いものです。


【構造的欠陥】

これはオートマのセレクトレバーを初めに設計した人が悪いと思います。

レバーをどの位置に止めるかで選択するのは、人間工学的に正確性を欠きます。

人は絶対的な尺度感覚が苦手で、相対的な感覚が得意です。

私ならMTのレバーを流用し、同じようなレンジを同じ位置に割り当てます。

例えば、MTの2速の位置にD、1速の位置にL、Rの位置にR、レバーを入れなければN、5速の位置にP、残りの位置には入らないようにする。
といった形です。

MTと差別化したかったと思われますが、おかげでブザーを鳴らさなければならないし、メーター内にレンジの表示をしなければならなくなっています。


【ミスを防ぐ操作方法】

ブザーが装備されていますし、選択されたレンジはメータ内に表示されますし、最近の車はインパネシフトが多いので、少し目線を落とせばレバーがどのレンジを選択しているかはすぐに確認できます。

オートマはブラインドタッチでの操作を許容していないので、確認することでミスは簡単に防げます。


【ミスが事故に繋がりにくい運転】

例えばレンジ選択を正しく操作出来ていたととしても、急の付く操作はミスのもとです。

ハンドル、ブレーキ、アクセル全てにおいて急の付く動作はよくないですが、レンジ選択ミスが事故に直結するときの操作で大事なのはアクセル操作です。

Pから発進のためにレンジ選択を行った時に、トランスミッションの中で空転していた駆動力はトルコンを介して車輪に伝わります。そしてブレーキで止めている状態です。

まずその時に駆動系の遊びのぶんだけ少し回り、ブレーキに止められたときに少しだけショックがあります。


この状態でブレーキをゆっくり離すとジワリと駆動力が伝わりますが、少しでも抵抗があると進行方向には転がっていきません。

タイヤが転がるのに必要な必要最低限の駆動力がかかるギリギリを狙ってブレーキを開放します。
それでも進まなかったらアクセルをジワリと踏み、駆動力が伝わるまで待ちます。
待つのはアクセルを踏んでから駆動力がタイヤにかかるまでタイムラグがあるからです。

必要最低限の駆動力が伝わるまでアクセルをジワリと踏んで待つを繰り返します。

このように操作すると、レンジ選択をミスした場合、進行方向への駆動力のかかり方に違和感を覚えるためミスに気が付きやすくなります。

ジワリと車が動き出すため同乗者の快適性も高くカーノックも起こしません。

カーノックについてはこちら


【マニュアルだと起こらないのか?】

マニュアルでもシフト操作ミス自体は起こりえます。

MTのシフトはHパターンと呼ばれ、左右方向には自由に動き、上下に入れることでギアポジションを選択します。

基本的には左上が最も低速で上→下、右→左に向かって速度レンジが上がっていきます。

多くの割合を占める5速MTだと右下にあります。


ブラインドタッチで操作して誤る場合だと、リバースと間違う可能性が高いのは、4速です。

停止状態からリバースに入れるつもりが4速に入った場合は、相当シビアにクラッチ操作をしないと発進できません。
その時点で気づくでしょうし、焦るとクラッチ操作をミスってエンストします。

走行中に4速に入れるつもりがリバースに入れてしまう場合は、ギアははじかれて入りません。

1速と間違う可能性が高いのは3速です。

また、MTの発進にはデリケートなクラッチ操作が必要なので、車両の挙動の違いに気が付きやすいという特徴もあります。

このように構造上ミスが事故に繋がりにくくなっています。


【多段MTの場合】

MTが多段化するにしたがって右下にも前進の変速段が占めてしまうことで、リバースの位置はバラバラです。

その多くは、より力を入れてHパターンのより外側にレバーを倒すか、レバーに備え付けられたリング操作とともに下に引くか、レバーを垂直方向に下に押し込んで下に引くかです。

リング操作やレバーを押し込む操作を伴う場合は誤操作の可能性はかなり低くなります。

Hパターンのさらに外側にレバーを倒す方式の場合、配置によりミスが事故に繋がりやすいか繋がりにくいかが変わってきます。


5速側の外側にリバースが配置されている場合、間違っても高速側のギアとの選択ミスになるので、5速MTと同様の理由で事故に繋がりにくいです。

1速側の外側にリバースが配置されている場合、間違った場合低速側のギアとの選択ミスになるので上記よりは事故につながりやすくなります。

おそらく1速とリバースが近いほうが駐車時などの方向転換でレバーの移動量が小さいことを狙ったものだと思います。

個人的には事故に繋がりにくい高速側のギアに近いところにリバースを配置してほしいと思います。

どのみち1速とリバースの選択の間にはニュートラルをはさむので操作の距離を縮めてもあまりメリットは無いと思います。


【レンジ選択ミスから事故を防ぐ装置】

残念ながらレンジ選択ミスそのものを防ぐ装置はありません。

レンジ選択ミスをしたときに加速を抑制したりブレーキをかけたりしてくれる装置があります。

誤発進抑制装置という名前が付いています。

詳しくは下記のノートにまとめてますので見てみてください。


【あとがき】

レンジ選択ミスは確認をするだけで簡単に防げます。

また、普段の運転習慣を改めるだけでミスに気がつきやすくなります。

それに最も大きな貢献をするのは、運転の作法よりも心理的な要素かも知れません。

車でお出かけの際には時間に余裕を持ちましょう。

時間に余裕のないときには運転で取り戻そうとは思わず、出発が遅れてしまったことを反省しましょう。

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