イモビライザーとは
車に詳しい人には割と常識ですが、車の盗難防止装置の一種です。
中には盗難防止装置=イモビライザーと勘違いをしている人も散見しますが、違います。
(車の説明書にも勘違いした記述があります)
イモビライザーはモビライズ(mobilize)の接頭辞に否定形の「im」を付けたものです。
モビライズは「動かす」という意味で、イモビライズで「動かさない」という意味です。
イモビライザーは「動かさなくするもの」という意味です。
名前から分かるように、警報を鳴らすものではありません。
【どうやって動かさなくするのか?】
鍵と車の間で通信を行います。
通信の内容に整合性があればそのままエンジンがかかりますが、整合性が無ければエンジンはかかりません。
このことにより、映画で出てくるようなキー周りの配線をゴニョゴニョいじってエンジンをかけることは出来ませんし、物理的なキーを複製してもエンジンをかけることは出来ません。
通信不整合時にはエンジンECUが動作を停止するため、現代の車では全くエンジンはかかりません。
この通信は暗号化されています。
また通信毎に通信内容を変える事で、車とキーの間の通信内容を読み取られても、利用することはできません。
【トランスポンダ】
最近はスマートキーがかなり普及しているため、電波を飛ばしてキーと車で通信を行いますが、スマートキー以前からイモビライザーはあります。
この場合トランスポンダという装置が通信を行います。
トランスポンダはトランスミッター(送信機)とレスポンダ(応答機)の合成語です。
仕組み的にはSuicaなど電車のICカードやFeliCaやNFCなどの非接触通信と同様に、コイルで電力を供給してアンテナで電力を受けた媒体が作動して通信を行います。
これによりキーそのものに電池を装備することなく通信が行えます。
スマートキーの電池が無くなったときに、プッシュスタートボタンに近づけてエンジンをかけることが出来るのは、電力が弱まって電波が弱くなるから近づけるのではなく、非接触通信用のコイルがボタンに装備されているからです。
【イモビライザーの弱点】
イモビライザーは盗難防止装置としてかなり効果を発揮します。
イモビライザーが装備されていなかったハイエースが装備とともに盗難件数を劇的に減らしています。
イモビライザーの有無により保険料が変わることからも効果は分かります。
前述のようにエンジンECUにより停止がされているのでイモビライザーとして機能しますが、エンジンECUを交換してしまった場合はイモビライザーは機能しません。
また、レッカー車などエンジンをかけなくても車両を動かす手段はあります。
2010年ごろからイモビカッターというものが出回っていて、イモビライザーを無効にしてしまう装置もあります。
イモビライザーも万能ではないということを意識しておいてください。
【イモビカッター】
イモビライザーは強力ですが、キーの紛失などで暗号通信が整合するキーが無くなってしまった場合にエンジンを始動するキーが無くなってしまいます。
メーカーはこのケースに応じた措置を用意しています。
キーとは別の通信を行い、ECUをキーの登録可能な状態に初期化します。
この操作はディーラーマンや中古車の整備士の方でも誰でも作業できるように配慮されています。
技術的な情報が流出したか、OBDの通信内容を解析されたかは分かりませんが、OBD2のソケットに刺すタイプのイモビカッターという製品がネット上に出回っています。
イモビライザーとはいえ電子キーが解除されてしまっては役には立ちません。
【リモートイモビライザー】
トヨタのT-Connectサービスなど、車両に携帯電話と同じ遠距離の通信機能を装備したものがあります。
通信により携帯電話やオペレーターからリモートで車両を停止させる機能がリモートイモビライザーです。
キーの盗難による盗難車など、通常のイモビライザーでは防げない盗難を防止出来ます。
ナビとセットであるサービスが多いので、GPSによる盗難車の位置も確認出来ます。
【セキュリティアラーム】
ついでに冒頭で登場した警報装置について説明します。
(※これはイモビライザーとは違います)
最近の車は警報装置が付いていることが多いです。
これはピッキングによりドアを開けたり、窓を割って内側から解錠して侵入することを想定した警報装置です。
リモコンキーを使った施錠やドアのボタンでの施錠をすると数十秒後にセットされ、上記以外の方法で解錠しドアを開けると警報が鳴ります。
鳴ってしまった場合はエンジンをONすることで鳴り止みます。
子供を車に置いたまま少しの用事を済ませようとした時、トイレなど何らかの要因で子供が内側から解錠してドアを開けたりすると鳴ります。
子供が車の鍵を理解できる年齢になっているならば、内側から鍵をかけてもらうなどの手段で回避できます。
【セキュリティインジケーター】
メーターのところにランプが付いていて、点滅してるけど大丈夫なのか?という質問があります。
これはセキュリティが機能していることをユーザーに示すもので、他の異常を知らせるものではありません。
イモビライザーの動作を知らせるランプもあり、セキュリティが機能しているランプと兼用になっている車種も多いです。
セキュリティが作動後に何が起こったかを点滅回数や周期で知らせてくれます。
どんな点滅方法がどんな意味を示すのかは直感では分からないので説明書をよく確認してください。
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