カーノック

カーノックの原因

【はじめに】

よくノッキングと言われる車体が振動する現象があります。

本来のノッキングはエンジンの異常燃焼のことです。

詳しくはこちら

このノートでは車体の振動のことをカーノックと呼び、このカーノックの原因を説明します。


【カーノックの主な原因】

主な原因はパワートレインの揺れです。

パワートレインというのはエンジンやトランスミッションなどの車を動かす動力源のことです。

車の重量は1500kgほどありますが、パワートレインの重量は250kgほどあり、車の重量の17%ほどもあります。

この重量物が揺れると大きな力が働きます。

この力が車体の振動になります。


【パワートレインはなぜ揺れるか?】

エンジンは動かすと振動が出るので車体にそのまま括り付けると乗員に振動が伝わって来てしまいます。

なので、振動が出来るだけ伝わらないように、主にゴム製品を使って車体との間にかませます。

このゴム製品はエンジンマウントと呼ばれる部品です。

パワートレインはアクセルを踏んで加速したり、エンジンブレーキをかけて減速すると路面の反力を受けます。

路面から受けた反力をある程度受けるとパワートレインはエンジンルーム内で動きます。

動くといっても跳ねまわったりするわけではなく、ある軸を持って回転運動をします。

この回転運動が「パワートレインの揺れ」です。


【パワートレインが揺れるとなぜ車体が振動するのか?】

パワートレインが揺れると車体が揺れます。

これはパワートレインの揺れが車体に伝わるということが主な原因ではありません。

パワートレインの揺れがタイヤから路面に伝わることにより起こります。

パワートレインが路面からの反力を受けると反力を逃がす方向に回転します。

この間車体の動きは少しパワートレインの出力よりも小さくなります。

路面からの反力が落ち着くと、回転したパワートレインは逆回転をして元に戻ろうとします。

その元に戻ろうとする動きは路面に反力を与えます。

路面に反力を与えると車体が前後に加減速します。

パワートレインが揺れると揺れに同期して車体が加減速することになります。

これがカーノックです。


【カーノックとパワートレインの揺れの例】

例えば加速時を考えると以下のようになります。

①アクセルを踏む
②エンジンが加速する
③路面からの反力を受け、パワートレインが回転する
④車体が加速する
⑤パワートレインが元に戻ろうとして逆回転する
⑥⑤を受けて車体が加速する
⑦パワートレインは元の位置を過ぎてもまだ回ろうとする
⑧パワートレインは回転の限界からまた元に戻ろうとする
⑨⑧を受けて車体が減速する
以後、⑤〜⑨をパワートレインの揺れが収まるまで繰り返す


【パワートレインの揺れ以外の原因】

〈低回転時のエンジン振動〉

エンジンの振動が強い時にも乗員に振動が伝わって来ます。

エンジンはガソリンを爆発するときのエネルギーを運動エネルギーとしています。

ガソリンの爆発は連続では行われません。

4気筒のエンジンでは1回転で2回爆発します。

ミクロ的に見ると爆発する時に加速し、爆発していない時には様々な抵抗により減速しています。

爆発と爆発の間の時間は回転数が低いと長くなります。

このためエンジンにはフライホイールという重りが付いていて、爆発間隔による加減速振動を吸収しています。

普通に運転している時にはアイドリング回転数以下にならないためフライホイールが働いて加減速振動は出ませんが、MT車の場合クラッチのつなぎ具合とアクセルの空け具合の関係でアイドリング回転数を下回る可能性があり、下回ると加減速振動が出ます。


〈クラッチの伝達不連続〉

MT車を運転する人はイメージできると思いますが、クラッチ操作による伝達は車によって異なり、食いつく位置が浅かったり深かったりします。

食いつきの連続性も車によって異なり、奥のほうで急に食いつくものもあれば、手前のほうから徐々に伝達力が強くなる車もあります。

クラッチが急に食いつくと、エンジン車体の慣性に負けてパワートレインが大きく揺れます。
このとき車体が揺れるためカーノックが起きます。

びっくりしてクラッチを急に切っても、それまで路面からの反力を受けたパワートレインが元に戻ろうとするためパワートレインが揺れます。

パワートレインが揺れている間は、カーノックにならないようクラッチを丁寧につなげようとしてもなかなかうまくいきません。

パワートレインの揺れがなかなか収束しない場合はエンジンマウントの劣化を疑ったほうがいいでしょう。


【カーノックが起こりやすい車】

〈古い車〉

古い車ほど起きやすいのはエンジンマウントが古くなって能力が衰えているからです。

ゴムは劣化すると柔軟性を失い、潰れたまま戻らなくなったりします。

潰れたエンジンマウントは減衰力を失います。

減衰が少ないと振動のエネルギーが発散されず、揺れが収束しません。

液体封入式のエンジンマウントの場合、破れて液体が漏れて減衰性能を失ったりします。


〈MT車〉

クラッチの操作不良はそのままカーノックにつながります。

クラッチ操作が手動のMT車は運転操作をミスるだけですぐにカーノックが起きます。

パワートレインの揺れを感じ取ることができれば、揺れを起きにくくする方法もあります。

加速時にパワートレインが大きく傾いてしまうのは構造上仕方がないのですが、戻りを緩やかにすることで振動を少なくできます。


【カーノックが起こりやすい運転】

発進時にアクセルを多く踏むとそのぶんパワートレインが揺れやすいので、カーノックが起きやすくなります。

そーっと踏んで発進すると良いです。そのほうが燃費も良いです。

最近の車はエコランプがついていて、エコ運転中はランプがつくようになっています。

交通環境にもよりますが、エコランプができるだけ消えないように発進時だけでも注意してみるのが良いでしょう。


【あとがき】

カーノックは乗員、特にドライバー以外の快適性を損ねます。

車が古くなると起きやすくなることから、自分の車がポンコツに思えて悲しくなりますし、他の人を乗せているときは恥ずかしくなります。

メンテナンスが基本ですが、パワートレインの揺れを感じ取り、パワートレインの傾きを緩やかに収束させる運転を身につけるのもまた一興です。

MT車ではより顕著に車の挙動と対話することになり、とても楽しいです。

エンジンマウントの劣化具合を測ることにもなるので、メンテナンスの指標にもなります。

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