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ブレーキングのコツ

【はじめに】

ブレーキングは運転が上手いか下手かが如実に現れます。

ブレーキングを鍛えると、快適性も安全性ももちろんのこと、速く走るのにも役に立ちます。


【ブレーキの前提知識】

ブレーキのコントロールは基本踏力(踏む力)で行います。

なぜなら減速度は物理的には以下の式から成り立つからです。

減速度=減速力=ブレーキの摩擦力

摩擦力は以下の式で表されます。

F = μm(F:摩擦力、μ:摩擦係数、m荷重)

荷重に比例するためペダルに加える力の強弱でコントロールします。

ペダルのストロークで制御するわけではありません。


【よくあるブレーキング】

停止目標を立てずに前方の状況に応じて曖昧にブレーキを開始します。

なんとなく踏んで減速していると、なんとなく速度が落ちていないことに気がつき、ブレーキを踏み増します。

近づいてきたら今度は足りなくなってきたのでブレーキを最小(クリープで少し進むくらい)にして前方の距離を調整します。

あまり能動的とは言えないブレーキングです。


【理想的なブレーキング】

全体的には減速度一定を心掛けます。

ブレーキング開始時にどこで止まるかをしっかりイメージし、そのために必要な減速度を見積もります。

〈ステップ〉

ステップとしては以下です。
・停止位置を見定める
・アクセルからそっと足を離す
(そっと離さないと減速ショックが出ることがあります)
・ブレーキペダルをそっと踏み始める
・一定の踏力になったらその踏力を維持する
・最後に少し緩める


【理想的なブレーキングのメリット】

〈安全性〉

これが出来るようになると(出来るように努力していると)安全運転に繋がります。

なぜならはじめの見積もり精度がとても大事なので、より遠くから正確な減速度の見積もりをしようと考えるからです。

仮にその時にうまくいかなくても、遠くの早い段階で減速度の過不足に気がつくようになります。


快適性〉

ブレーキングが上手に出来ると快適性が上がります。

車に乗っている人は車の速度を感じ取ることは出来ません。

感じ取るのは加速度です。

そして人は絶対的な感覚には鈍感ですが、物事の変化には敏感です。

加速度も加速度そのものではなく、加速度の変化に敏感です。

なぜなら人は加速度に対応するために筋肉を動かして踏ん張る動きをするので、加速度が変化すると変化に応じて筋肉の力の入れ方が変わるからです。

お盆でモノを運ぶのに重さが変わらなければ同じ力の入れ方で大丈夫ですが、お盆の上のグラスに水を注ぐと途端にお盆の位置を保つのが困難になることからも分かると思います。


〈速く走らせる〉

ブレーキングの精度が上がるので、コーナーでの適切な侵入速度を作れます。

コーナリングの基本はスローインファーストアウトですが、減速して侵入するときの速度が上手に作れないと、コーナリングの姿勢(荷重移動)が思い描いた通りに実現できません。

荷重がグリップに重要なことは摩擦円で説明できます。

詳しくは下記のノートを見てください。

自動車のメカニズム(タイヤの詳細編)
※執筆中です


【ツール】

車での水平加速度をロギングするツールがあります。

http://ifulsoft.com/G-Bowl

iOS版しかありませんし有料(2800円)ですが、非常によく出来たツールです。

自分の運転を可視化することが出来ます。

自分だけでなく、同乗した時にも使えます。

ただし、ロギング中は他のことにiPhoneを使うことは出来ません。

あとiPhoneが信じられないほど熱くなります。


【ブレーキングの予備知識】

ページに余裕があるので少し予備知識を書きます。


〈ブレーキ予備動作〉

後続の車両に対して「今から減速します」と知らせるための作法です。

教習所でも習ったかと思いますが、よくポンピングブレーキと混同されます。

減速を開始する前に、ブレーキが効き始めない、かつランプが点く程度にチョンチョンと操作して後ろの車にアピールします。

その後は普通にブレーキングします。


【ポンピングブレーキ】

ポンプを操作するように何度も踏む操作です。

近年の車であればメカ的な対策をされているので行う機会はほとんどありません。

目的は2つ
①ブレーキ液を何度も油圧経路に補充する
②ブレーキによるタイヤのロックを解除する

①ボンネットを開けると分かりますがらブレーキはブレーキフルードという液体をタンクから供給します。

何度も踏むことによってタンクの中のブレーキフルードを油圧装置に送り出す効果があります。

この操作の目的は2つあります。

①-1 不足するブレーキフルードの補充
①-2 ベーパーロック現象対策

①-1は最近の車ではありませんが、昔の車は設計的に上手ではなく、ブレーキング中にブレーキフルードが足りなくなるものがあったので、その対策です。


①-2はベーパーロック現象というブレーキが効きにくくなる現象の対策です。

ベーパーロック現象とは、以下の現象です。
1.ブレーキ装置によってブレーキ液が熱せられ。
2.液体中の水分が蒸発して水蒸気になる。
3.水蒸気がペダル踏力をクッションのように受け止める。
4.圧力が伝わりにくくなる。

蒸発そのものは止められないので、ブレーキ液を補充することでなんとか圧力をかけることになります。

似たような現象にフェード現象がありますが、こちらは要因が違います。

ブレーキ液ではなくブレーキパッドが蒸発して滑る現象です。


②は簡単に言うと人間ABSです。

ブレーキがロックしてタイヤが回転してないと、その間のハンドル操作が不能になるので、ハンドル操作を有効にするためです。

最近の車はABSが付いているので、気にせず踏んでください。

ABSが効くとペダルがガタガタします。
ビックリしてブレーキを緩めないようにして下さい。


【あとがき】

ブレーキングは運転操作の中で最も重要な操作です。

しかし、上手に操作できている人は少ないと思います。

良いことづくめなので、鍛えてみると良いですよ。


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