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私の弟は知的障害者 その1 〜弟の特徴や生い立ち編〜

こんにちは、内ノ宮 基です。

前回の記事で知的障害者についての事前情報をお伝えしました。
前回の記事:◤軽度知的障害者とは?

今回は実際の知的障害者のリアルをお伝えします。
今回はその1として、弟の特徴や生い立ち、さらに弟の件から思ったことを書きます。
※本記事は私の弟について書いています。知的障害者の方が全員同じということではありません。

  • 軽度知的障害者の人のリアルに興味がある。

  • 家族が知的障害者なので、他の知的障害者の人がどうなのか気になる。

  • 他の知的障害者の家族がどう考えているのか気になっている。

といった方にオススメの記事です。

私の弟は知的障害者 その1

弟はこんな人

まず、弟の行動の前に基本的な部分を話します。
私の弟は2024年1月現在で30歳の軽度知的障害者です。
もうすぐ3月で31歳になります。
IQは70以下で療育手帳も取得しており、グループホームで暮らしており、仕事は派遣社員を続けています。
弟を一言で表すならば、
想像力が乏しい
です。

これは知的障害者の方や境界知能の方によく見られる傾向だとよく耳にします。
弟も例外ではなく、様々な面でこの様に感じています。

例えば、弟の場合

  • すぐに嘘を吐く

  • 金銭管理ができない

  • 相手の気持ちを考えられない

などが見られます。

これらは想像力が乏しいことが要因だと言えます。
なぜなら、「これをこうしたらこうなる」という予測が足りないからです。
その結果、想像力の乏しさが顕著に出るのです。
言い換えると未来を想像する力が弱いとも言えます。

それぞれ具体的に見ていきます。

未来を想像しないからすぐにバレる嘘を吐くのです。
スパイファミリーという人気漫画の主人公の一人であるロイドこと黄昏のセリフ(心の声)で「己を偽装するならばもっと戦略的に・徹底的にやるんだ!」「ディテールを詰め…」というものがあります。
これは全くその通りで、嘘にストーリー性が無ければ暴くのも比較的簡単になります。
バレない嘘というのは、「こう返されたらこう返す」というシチュエーションを念入りに頭の中で組み立てられたものが第一条件です。
すぐにバレる嘘というものは想像力の乏しさをそのまま表しているとも言えます。
そもそも嘘というのは、心理的に仕草などに出やすいものなので、隠すというのはそれだけで技術が必要なものなのです。
創造性の無い嘘は素人レベルの嘘を見破るテクニックで看破できます。
この話をし始めると記事の主旨から完全に外れるのでこの辺にしておきますね。

金銭管理ができないことも未来を想像しないからで説明がつきます。
金銭管理とは、広い意味の言葉になりますが、一般的に考えると
手元にあるお金+収入として入ってきた(くる)お金-出費として出るお金=X
とした時に、解であるXがプラスのまま維持することだと定義されるはずです。
このXがマイナスであれば、借金しかありませんよね。
マイナスにしないためには、欲しいものを我慢するとか収入を上げるという方法を考えて実行するなど、未来を想像する必要があります。
これができないということは、未来を想像する力が欠如していると言えるのです。
または我慢できないという面では忍耐力がないなども言えるかもしれませんが。

最後の相手の気持ちを考えられないというのも想像力が乏しいことが原因です。
相手の気持ちを考えるということは想像することです。
「これを言ったら傷つくかな?」「これをしたら喜ぶかな?」と言った事を考えることは、想像しなければできません。

嘘を吐くことと相手の気持ちを考えられないということは、人間関係においても大きく関わってくる部分です。
軽度知的障害者というものに理解がなかったり、その人がそういう人だと理解がなければ、無意識に世間一般の常識や認識で測ります。
そういった中で想像力が乏しい弟と接した場合、接点が増えるに連れて違和感や時には怒りにも発展する確率は高まります。
接点が増える事で見えてくることも多くなるからです。
最初は上手く隠せてた事も接点が増えれば見え隠れするものです。
ネット上でも似た様な状況で、軽度知的障害者だと認識していても、その人に怒りを隠せない投稿も目にします。
ですが、想像力が乏しいことが悪い事とは言い切れません。
先天的あるいは後天的な障害が理由であれば、それのどこに悪いと言えるでしょうか?
仕方のない事です。
そう、仕方のない事なのです。
しかし、頭では分かっていても怒りが湧いてしまいます。
それもまた感情なので、仕方のないことです。
出来ることはなるべくアンガーマネジメントなどで自分のストレスを溜めないことぐらいです。

軽度知的障害者である弟の生い立ち

続いて、弟の生い立ちを話します。

弟は私が4歳の頃に生まれました。
後から知ったことなのですが、3歳になるぐらいまで歩けなかった様です。
そのことを心配している様子が母の日記に残っていました。
私と年齢はそこまで離れていないのですが、話が合いませんでした。
強いて言えば一緒にゲームなどをした記憶はありますが、コンピューターと戦う方がやり甲斐があったぐらいの記憶しか残っていません。
趣味なども合わないため、大人になってからも近況の話ぐらいしか話すことがありません。
私から見ると、実年齢と比べて少し幼稚な印象を受けていました。
後から聞くと、伯父も同様の印象を受けていた様なので、主観だけではない印象だと思います。

幼少期、少年期と知的障害であることを知りませんでした。
ですので、高校まで普通学級で過ごしています。
その後、高校卒業後は母や祖母から薦められるままに、福祉系の専門学校に通っていました。
後から聞くと、福祉には興味がなく、行きたくなかったようです。

ちなみに、その福祉系の専門学校は中退しています。
その中退のきっかけは体験型の授業でした。
授業の一環で実際の福祉現場に行きお手伝いをするという体験学習で、勤務態度を施設の担当者から注意されたそうなのです。
私も又聞きなので、詳しいことはわからないのですが、やる気がない様に思われた様です。
その頃は誰も知的障害などと疑っていなかったため、普通の学生として接したのでしょう。
きっと一度の注意では、退学するほど凹まないでしょう。
施設の担当者も相手は学生です。
学生の1人がやる気のない態度を一度見せたぐらいでキレるほど沸点が低くないと思います。
とは言え、預かっている人の命に関わる様な重要なことを学生に体験させるとも考えにくいです。
以上のことから、想像でしかないのですが、何度も注意されたにも関わらず進展がないため、少し強く注意した可能性はあります。
結局、このことがきっかけで専門学校を中退しました。

専門学校中退後、なぜかデイサービスのアルバイトを始めました。
いや、ホントになぜかなんですよ。
専門学校で注意されて中退するぐらいなのに、同じ業界でアルバイトするんですから。
驚きました。
ただ、そのアルバイト先も数ヶ月ほどでクビになった様です。
利用者やスタッフとのコミュニケーションが上手く取れずに、クレームや注意が多かったことが原因とのことでした。
その後は工場のライン作業のアルバイトとして、長年フリーターとして働いていました。
物事を複雑に考えることが苦手で、想像力が欠如している弟にとっては、決められた事を淡々とこなすライン作業は天職だった様です。
そしてフリーターとして働いている中で、母が亡くなり、それがきっかけで知的障害者ということが判明します。
それはまた別のお話しです。

その後、派遣社員という形ではあるものの一般企業の工事で働いています。
現在、派遣先の会社も2社ほど経験しています。
この2社の内、最初の1社目では知的障害ということを話しませんでした。
そのため、所属した班の班長からは覚えが悪いということで何度も怒られ、その結果パニックになり、またミスをして怒られを繰り返していた様です。
結果的に派遣期間の更新はありませんでした。
2社目では予め知的障害者であることを伝える様に話し、弟もその通りに動いたため、企業側の理解もあった様です。
とは言え、現在の派遣法では同一派遣先・部署では3年というルールがあります。
「あった様です。」と過去形になっているのは、先日3年を待たずに派遣期間打ち切りになってしまったからです。
それでも2年働けたことは大きいと思います。
つい昨日のことですが、新しい派遣先も決まり一安心です。

弟の件で思うこと

書籍化をきっかけに弟のことを改めて考えました。
その時に思ったことは、
違和感を感じたら現状を把握して、その人に合った環境を整えることが大事
だということです。

たらればの話になりますが、学生時代から知的障害を疑って受診して、子供の頃に手帳を取得できれば、また違った人生になっていたでしょう。
知的障害を持っている弟にとって、普通の子と同じ環境で育ってきたことは幸か不幸かわかりません。
世間体を気にするのであれば「普通学級で育ってきたことは幸せだったのでは?」とも言えます。
軽度知的障害者の弟は一見、普通に見えます。
深く付き合わなければ気になることもありません。
一見、皆と同じように普通に学校行って、勉強して、卒業できました。
この一行だけ見ると、ごく一般的な学生生活を送った人生でしょう。
一般的に通ったせいで偏見的な目で見られずに済みました。
何の問題も無いように見えます。
良かったですよね?

しかし、これは本人というより家族のエゴかもしれません。
本人にとっては、どうなのでしょうか?
想像力の欠如が原因かどうかは定かではありませんが、実際に嫌な思いをしたこともあったり、イジメの様に感じたこともあった様です。
さらには、時には怒られ、場に馴染むことも出来なかったこともあった様です。
それは学校生活だけではなく、大人になってからも続きました。
自分に適していない環境で育った事が、生き辛さにも繋がっている部分もある様に感じます。
病院では軽度知的障がいの他にうつ病と診断されました。病院の先生と話した限りでは、今までの人生で感じた生き辛さがうつ病の原因になっている可能性もあるとのことでした。

この件について別に本人が悪いわけではないです。
それでも周りは知的障害者の特徴などを知りません。
普通の人だと認識して接すると、覚えが悪く、時にはやる気のない態度に見えてしまい、苛立ってしまうこともあるかもしれません。
仮に理解しても、手を差し伸ばすことは勇気と覚悟が必要です。
適正な距離を保って接すること、それが一番リスクの少ない付き合い方です。
これは別に知的障害者の方との接し方に限ったことではありませんが‥

兄である私ですら、弟に怒りを感じることは多々ありました。
と言っても、その大半は母の死後ですが。

知的障害については誰も悪くない問題ですが、理解がないと印象が悪くなることは避けられないでしょう。

ここまでの話を聞いて、仮に本人の立場であれば「良かった」と言えるでしょうか?
もちろん、こういった逆境を自分の力でチャンスに変えることができる人なら「良かった」と言えるでしょう。
ただ、周りからの支援が必要な弟にとっては、「良かった」と言える結果とは言い辛いと思います。

ただ、あるがままを受け入れて、理解してくれる人が近くにいる環境を用意できたのなら、少しでも本人にとって生活のしやすい環境になるのではないでしょうか?
もちろん、子供のころから本人に適した環境を用意できれば、それは本人のためになると思います。
では、大人になってからでは遅いのでしょうか?
遅くはありません。
むしろ大人になってからの方が仕事や生活で困ることが増えるでしょう。
実際に弟がそうでした。

ですから、違和感を感じたら、放置ではなく対応することが大事です。
その結果、私は弟の犯罪リスクを下げることにも成功しました。
家族としての不安からも解放されました。

次回は、弟が軽度知的障害者であることの不安や実際にあった事例を紹介します。

書籍の紹介

本記事の内容など私の経験談まで書いた書籍が下記です。

私と同じ様に家族に軽度知的障害者を持ち不安という方に向けて、
手帳取得へ向けた案内
・検査の仕方
・面談時のポイント
離れていても情報を手にいれる方法
・おなじみのツールの意外な使い方
家族以外からサポートを受けるという手段
・グループホームの入り方
・家族が言ってもダメな時の方法
などの実用的な情報や
軽度知的障害者の可能性についてまで言及しています。

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