Emily Andras ワイノナ・アープ製作P インタビュー訳

「ワイノナ・アープ」番組ショーランナー/エグゼクティブ・プロデューサー、エミリー・アンドラス 「Tales of the Black Badge」インタビュー回(100回)(全体を通して意訳を含みます。ネタバレあり。)

ホスト:ケヴィン・バチェルダーボニ―・フェラー

画像1

(日本からは Wynonna Earp | Netflix でシーズン1が見られます。)
過去には「ロスト・ガール」今は「ワイノナ・アープ」(以下、「ワイノナ」)製作をとりまとめるエミリー・アンドラス プロデューサー、そのウィットとシャープなジョークで知られています。シリアスにもユーモアを忘れない彼女の「ワイノナ」ファンやコミュニティへの思い、仕事観について話しています。

 ケヴィン(K):今回は記念すべき100回目です!
ボニー(B):ジャーーン! ケヴィンから番組のポッドキャストに誘われたのがつい昨日のことのよう!あっという間ね!「ワイノナ」はNY Timesにも載ったし!
K:100回目が近いことに気づいて諸々調整したんだけど、計算してみると放送のない期間も含めて1週間に1話のペースで更新したことになるんだよ。僕たち「ワイノナ」の話をするのが大好きだよね。
B:ええ。でもここまで来られたのは、キャストのおかげ。この2年間インタビューにもよく応じてくれて、本当に感謝しているわ。ティム、メラニー、キャット、ドム、エミリー、ケイト、ボー、聞いてるかな?あなたたちのおかげよ。
K:僕らの思い出話はこのくらいにして、エミリーに振り返ってもらいましょう。

B:記念すべき100回目のポッドキャストのゲストはこの方以外に考えられません!我らがエミリー・アンドラス!来てくれてありがとう。
エミリー(EA):わー!おめでとう2人とも!「ワイノナ」で100回も配信するなんてね!すごいわ。まじで。びっくりしてる。若干ビビッてる。なんてね、誇りに思うわ。呼んでくれてどうもありがとう!
K:まだ始まったばかりだった頃の話をできるかな?
EA:もちろん。あなたたちは当時から応援してくれて、ポッドキャストを始め、様々な形で愛してくれている。番組の成功と同様にこのポッドキャストも誇りに思ってほしい。3シーズン目まで番組をやってこれたなんて。謙遜じゃなくて純粋に信じられないことよ。あなたたちを含め、ファンのおかげ。本当にありがとう。シーズン1の後、私は製作が楽しかったけど、誰が分かってくれるか未知数だったわけで。私とあなたたち以外にね(笑)
B:当時、思いの丈を詰め込んで実況ツイートしていたけど、業界も周りも「GoT(ゲーム・オブ・スローンズ)」とかに夢中で、「ワイノナ」は巨人と闘っている気分だった。その中で必死に実況ツイートして人気が出て、2が製作決定した時は飛び上がるほど嬉しかったのを覚えているわ。3が決定した時はさほど待たずに済んだよね。今やファンの数もコミュニティと呼べるほどの規模に拡大したし。
EA:そうね、驚異的だった。メラニーとドムが自宅に来て第1話を見たのをよく覚えているわ。みんなパジャマを着て、超楽しかった。2人はまだツイッターを未経験の頃。初回放送後にすべての#WynonnaEarpタグツイートを読み漁ったの。今や一瞬目を離すと気になったツイートが見つけられない状態じゃない? このファンダムは色々と達成してきた気がする。「ワイノナ」ならではよ。世界各地で新しい友達ができたり、恋人ができたり、結婚したり、チャリティも何種類かあるみたいだし。すばらしいコミュニティになっているじゃない。ファンアートを作るアーティストたちや#EarperSupport(些細なことからメンタルまで様々な面で支援がほしい人、支援できる人のためのタグ)から#EarperMeetup(各地域のオフ会)や#EarperGreet(番組の新規ファンなどが他のファンに挨拶しやすいタグ)などなど。これは全部ネット上のものね、だからソーシャルメディアをやっていない番組のファンの人たちで聞いてくれている人たち、ネットにいないあなたもEarperコミュニティの一員よ。番組を見てくれて、ポッドキャストを聞いてくれてありがとう。私たちも愛してます。応援どうもありがとう。(訳注:We love you, too.)でもね、実はここまで来てもまだ、いまだに、いまだに(番組が続いていることが)騙されてるんじゃないかって思っちゃうの。ばかげてるけどその感覚が拭えないのよね。でも、今、ここにいる。

K:僕たちも嬉しいよ。好きなことをやるために集まって、実況ツイートから何から、やり方を学んできて、放送後のWhiskey&Doughnutsも始めたり。そうやって拡大した。何百もあるTV番組が視聴者を獲得するのに苦戦して成功させる魔法を見つけたがっているなかで、エミリー、あなたが成功してATXやほかのコンベンションでパネルに登壇していることが僕にはすごく嬉しい。あなたとキャストがこれを築き上げたんだよ。このコミュニティを。番組の枠を超えたコミュニティになったんだ。
EA:ありがとう。そうね。あまり話題にならないことだけど、このコミュニティを体験したことのない人に説明するのって実は難しいことでね。Earperはやさしさ、インクルーシブ(訳注: kindness and inclusivity)でできているコミュニティでしょう。でも「ワイノナ」はインクルーシブについての番組だけど、必ずしも視聴者にやさしい番組ではない。とある女性が亡霊を銃で地獄に送り返してるって話だからね。でもキャストやクルーの番組のテーマに対する思い入れと尽力がすばらしいの。私たちの番組はニッチなジャンル系(SF系)だけど、視聴者の背中を押してあげたいと思っている。これも他の番組には真似できないこと。私も他の番組を応援しているけど(#NoChill、politely no chill:礼儀を忘れず大はしゃぎする)、これはチームのすべてが団結してこそ可能なこと。ファン、キャスト、スタッフ、すべての脚本家を含めて全員が番組の大ファンだからできる。あとEarperは番組の枠を超えたムーブメントになっているのも面白いと思う。Earperコミュニティが番組にとらわれることなく存在しているから、ティムと私はいつも驚かされるわ。

B:これまでにも話してきて、私自身、1000%信じていることだけど、Earperコミュニティの発端は、エミリーと脚本チームが創り上げた「ワイノナ」の物語とキャラクターがあったからよ。メインのキャラを対抗させなかったから。Ship同士の競争がなかったから。見知らぬ人の群れを1つのファミリーにしたのよ。世界各地にいる様々な生い立ちの他人同士を、番組を通して、実質found family(血のつながりも法的でもない家族)にしたの。それはあなたたちが作った番組の方向性のおかげだと思う。
EA:そう言ってくれて嬉しい。最初、ケヴィンと私がいたからこのコミュニティができたって言い始めるのかと思って「そうよね!ほんとにね!」って言うところだったわ(笑) (冗談)
でも、ほんと、幸運だと思う。ボニーの言うところのship競争とか、例えばWayHaughtがあるけど、私は視聴者をバカにしたくなかっただけなの。っていうか、ウェイバリーがチャンプと別れないわけないでしょ?(笑)って言っても、私はチャンプ大好きだけどね。彼、笑えるし、間合いも最高だし。でもこれまでの、特にSF系番組での経験から言ってこの層のファンはそれに飽きている。賢くて大人のファンが多い。「ワイノナ」はパーガトリーという町で亡霊退治してる崩壊家族の話だけど、この視聴層はそれぞれに生活がある大人で、リアルな人たちだから。夜10時のケーブル局の番組だから。その点はとても大事だった。そこに気づいてもらえて嬉しいわ。この番組の脚本チームは最高だし、本当に楽しく製作できる番組よ。すばらしい人たちに囲まれて仕事ができて、すごく恵まれている。ありがたい。
K:エミリーがシーズン1のすべての脚本と撮影をしたんだよね。
EA:そう。
K:その製作中、カルガリーを走り回ってたわけだけど、ファンダムが成長して認知度も上がった今、当時と比べてやりやすさはどう?
EA:うーん。そうね・・・シーズン1の時は番組の方向性を定めるのに苦労した。面白さやクレイジーさ、それぞれのレベルを決めなきゃならなかった。今は・・・ファンダムがこれほど情熱的で期待度も高いと、また違う意味でチャレンジね。撮影していない期間はファンの声を聞ける。執筆しながらの撮影期間はフィードバックを見て悩む暇もない。だから、そうね、今の状態は気に入っている。ヒントや意見や希望もメモして色々参考にする。まぁ、結局、大事なのは私たちが納得できる最高の物語を作っているか自問すること、そしてもちろんファンも驚かせられるか。放送中は番組を見て、ただその反応を楽しんでいる。2回味わえる感じね、執筆・製作する時期と見ながら実況ツイートする時期。

B:脚本チームと仕事する時は、人の構想に左右されていない完全オリジナルで最高のストーリーを書くために、ソーシャルメディアから一旦離脱しなきゃいけないと言っていたけど、今ではそれは辛いことなのかしら?
EA:それを辛くないと言う人は嘘ついてるよね?それか聞いていないか。まぁ、私は知っての通り、ツイッターのヘビーユーザーだけど(笑)一番の現実逃避よ!(笑)私はファンと話して彼らの声を聞くのが大好きなの。今後の予想やこれまでの議論や分析なんかをね。Earpersは賢いファンダムだと思うし、すごく楽しんでいるわよ。私にはいくつか守らなきゃいけない責任があるのも重々承知しているし、視聴者の特定の希望に沿っている面もあるけど、私が死守する1ルールは、可能なかぎり登場するキャラクターにはリアルでいてほしい。どんなに酷いことをしたとしても、なぜそれに至ったのか理解してほしい。そりゃね、番組の一部分しか見ない人がいるのも知っているわよ。でも見るきっかけはさまざまなのも知っている。何がきっかけで「ワイノナ」のファンになっても私は構わないのよ。WayHaughtでも、ワイノナでも、ドクとドルスのブロマンスでも、ワイノナのトラックでも構わない。番組自体を愛してくれたらそれで構わない。Earperファンダムで嬉しいことの1つは、何が好きでも居場所があること。「ワイノナ」では全員が同じものを同等に推す必要はないの。とは言っても、長く続けばその分ファンを怒らせる要素を避けられないこともある。
とにかく視聴者には、いい感じに感情を揺さぶられてほしくて。まるでジェットコースターみたいに。それでいて見終えたら続きが気になる番組を作りたい。キャラたちにはその欠点のある人物像を反映した生き方をしていてほしい。
K:それが楽しみな要素でもあるよ。暖かい家の中で和気あいあいとしている番組もいいけど、ドラマがあった方がもっと楽しめるからね。
EA:でしょ?亡霊退治の番組なのよ、「ブリティッシュ・ベイクオフ」じゃないんだし。あの番組、最高だけどね。私はみんなに感情を揺さぶられる体験を楽しんでほしい。大いに泣いて、笑って、驚いてほしい。それが私にとってのいい番組であり、エンタメだから。
K:それでこそ視聴者を引き込むわけで。
B:「ワイノナ」では自分のお気に入りの出番を待っているってことがない。どんな組み合わせでも見応えがあるから。例えば、ワイノナとニコール(WynHaught)なんて傑作で、大好評じゃない?それ以外にもブロマンスも、WayHaughtも、ドクとジェレミーも見応えがある。
EA:私にも1組のshipのためだけに見る番組はある。そのペアはお気に入りだけど友達なりたいとは思わない。それはカナダのTV製作で学んだこと。負け犬(underdog)のドラマで本気でかけがえのない番組だけど、「GoT」のような資金はないから必ずどの組み合わせでもキャラには説得力を持たせなきゃいけない。引き込まなきゃいけない。まだ未知数の組み合わせのキャラもいるでしょう?そんな考え方は、大好きだった「バフィ」に影響を受けたわ。狼男の衣装のファスナーが見えたとしても気にならないのは、そこにいるキャラ全員の関係性が面白くて引き込まれるから。だから、ボニー、そう言ってくれて嬉しいわ。もし、合わない人がいたらそれだけの理由で番組から外さざるを得ないでしょうね。手元の駒を効率よく使わなきゃならないから。

K:ボニーとブリジットと僕はセット見学時に見たのは、キャストのほかに、製作チーム、ファミリー全員が同じ気持ちで仕事をしていたことなんだよね。メラニーの妊娠の扱いについてもそう。僕らは口が滑りやしないか何ヶ月もヒヤヒヤしていたけど(笑)
EA:信用していたわよ、あなたたちもファミリーだもの。
K:尚更だよ。番組に関わる全ての人が同じ志で仕事しているのが分かるから。その一員でいられる気持ちを考えると。お互いに支え合う環境をエミリーは作ったんだよ。Earpersもそれと同じことをしているんだ。
EA:どうもありがとう。「ワイノナ」の関係者はとても優秀だと思う。いわゆる「嫌なやつに悩まされない」ってやつで。カルガリーの業界の規模は小さいから大都市でやっているようなことをする余裕はないのよ。最初に決めたことでEarperやクルーを見ていて思い出すのは、私に諸々を決定する権利があったってこと。わかる?私は本当にスタッフの意見を大事にしている。例えば、照明係を雇ったらその人を信用して仕事を任せる。私はWayHaughtを美しく書くことはできるけど2人の照らし方は知らない。その点、最高な人材を雇えば、仕事に当事者意識を持ってベストを尽くしてもらえると考えている。現場では切磋琢磨しているし、色々なアイデアやイノベーションを歓迎している。より良く仕事ができるようになるほど番組も良くなるから。それがファンダムにも反映されているのかな?このファンダムは当事者意識があって、それができる余裕もあるようにみえる。アート、ファンフィクション、チャリティ、多様なファンアカ、ブログやポッドキャスト、それら全部を私たちは歓迎しているの。やりたいことがやれる環境がある。みんなに居場所がある環境がある。負け犬の番組が成功するにはそれが不可欠。「雇った人材の意見を聞いても金はかからない」ってことが私が学んできたこと。みんないい仕事がしたいのは当然なのよ。だからファンダムに反映されているものがあるなら、それは「帰属意識(belonging)」。
B:それは見学中にまさに感じたこと。関わる誰もがこの番組をとても大事にしている。
EA:大事なのは、ファンは「ワイノナ」を製作こそしていないけど、私たちがこの仕事ができるのは、ファンがいてくれるからってこと。視聴率も稼がなきゃいけないドラマだけど、私たちは声が大きいし、そのおかげで続行できる。私たちはこのファンダムとコミュニティにとても感謝している。文字通り、ファンがいるからこそ続けられているのよ。本当に。

画像2

B:シーズン2でWayHaughtにインタビューした時にエミリーの話になったんだけど、ボボとワイノナの感動的なシーンで「いつからその構想を練ってたんだろう?」って。
EA:ストックはたんまりあるけど、せいぜい1年よ。10年先のことまで考えられない。洗濯物さえたまってるのに。と言っても、決めていた筋書きはいくつかある。ボボの過去、ワイアットとの関係、ウェイバリーとのつながりとかね。あのエピソードが好評で嬉しいわ。個人的に書くのに一番苦労した回だったから。奇抜すぎて周りの反応がこわかった。でも監督のパオロ・バーズマンが「すごくいい、気に入った。分かってもらえると思う」と言ってくれて。彼は正直に話してくれる人だから安心した。今後の構想はいくつかあるわよ、もちろん。だけど練るのも好きだから。
B:パイロット回に出てくるウィドーの箱についてなんだけ
EA:(食い気味に)ノーコメント!ノーコメント!・・・あれは意図的。あの回にはたくさんヒントがあるわよ。
B:ほんと見直し甲斐があるドラマ!
EA:後々に伏線を発見したりだとか、パズルみたいなドラマ作りがしたいからとても嬉しい。それってつまり視聴者が賢いからできることだけどね。その過程を楽しんでくれるんだから。
B:多忙な中、またインタビューに応じてくれて、この100回目を一緒に祝ってくれてどうもありがとう!シーズン3が楽しみ。
EA:こちらこそどうもありがとう!200回目のポッドキャストが楽しみだわ!

画像3

終わり

現地放映中のワイノナ・アープシーズン配信リクエストはこちらから。(c)Syfy (c)WynonnaEarpPod 

嬉しいです。ありがとうございます