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進化する自治を構想する 17「実践から得る新しい自治の学び」

UCO講座 「進化する自治を構想する」

 ucoのテーマである「進化する自治」。これまでの「自治」という言葉の定義や概念を一度見直そう、というところから始まったテーマ。自治のあり方は、それぞれの自治体によって行政の進め方や方向性はさまざまだが、私たちの地元である大阪市、大阪府、とくに現在、あるいは近年の大阪をモデルとしている。
 行政主導で進める自治、行政と市民との協働というあり方にしても、硬直化、あるいはロールモデルに沿った流れになっていて、多くの市民はそこに関与していない、という実感を持っている。例えば大阪市の区政会議などにしても、あらかじめ決められた事業があり、そのことについての方向性もある程度かたまっていて、その内容についての意見は求められるが、事業の根底は変わらず、意見も聞くだけに終わったりしているのが、議事録から見て取れる。
 例えば、市民の意見を収集し、検討するという目的であるパブリックコメントにしても、いつの間にか始まっていることが多く、注意深く市のWebサイトをチェックしておかないと、見逃すことが多い。また、意見を提出したとしても、それが事業に反映されることはほとんどなく、聞き置くだけで終わっている。そのような市民とのコミュニケーションの場を、事業を進める上でのアリバイ作りに利用しているとしか思えない進め方は、行政に対する不信感を募らせるだけに終わっている。
もう少し市民が事業計画の段階から参画できるような仕組みはできないものか。すべての事業ということではなく、市民、住民が利害関係者として関わることの多い公園事業であったり、教育事業などについて、関与できる幅が広く、深くなってもいいのではないか。
 とはいうものの、大阪以外の他府県や海外に目を向けてみると、さまざまな条例や制度設計などで、市民が参画できる仕組みを作っていて、行政やまちづくりに反映できている事例は数多くある。特に地方では、市民と行政が一体となって進めている事例はよく見聞きする。大都市部では難しいだろう、という地域差があることも理解できる。しかし、時代に即した、現代の多様性に対応した自治のあり方や、もっと市民の意見を反映させる行政のあり方があってもよいのではないか。
 本講座は、こうした海外、国内も含めた様々な市民が参画する行政の実践を通して学んでいこうというもの。

 すでに、大阪でも市民協働や行政に市民が関与するシステムはある。しかし、それについて、どれほどの市民が知っていて、また実際に関与しているのかといえば、大阪市民280万人弱のうち、10%とすれば約30万人程度になるが、実体とすれば、1%からせいぜい数パーセントの市民にしか行き渡っていないように感じる。(ここでいう自治については振興町会や地域活動協議会などのイベント等への参加は対象外と考えている)

 講座の第2回では、統廃合で廃校となった生野区の御幸森小学校の跡地利活用に公募し、まちづくりの拠点としてスタートした「いくのパーク」を訪ねた。公募に至った経緯をはじめ、地域の特性や事業の取り組み方、財政面に至るまで、さまざまな視点から学びを得た。
 第3回では、市民が行政の事業に直接関与することのできる「市民参加型予算」というしくみについて、その実際を複数の自治体の事例を自治体の方にお話を聞き、学んでいこうという企画。
 
 例えば、市民参加の象徴的な枠組みとして、震災後のまちづくりの事例がある。例えば阪神淡路大震災後の神戸や長田、あるいは東日本大震災後の岩手や福島の多くの市や町。行政主導で行ったものがすべてうまくいったかというと、そうでもなく、時間をかけ、住民と行政、また住民同士が納得のできるまで話し合い、合意形成を行えたかどうかで、その後のまちづくりの行方が決まっていったように思われる。だから、どういう合意形成を行ったか、といいうところに学びがあるのではないか。
 住まう人間の意見がどれだけ反映されるのか。予算の問題か、時間の問題なのか、市民としての意見が反映されないからあきらめる、というループを断ち切ることが必要だ。
 本講座ではこうした視点から、さまざまな実践事例を訪ねて、学びたいと考えている。


uco講座「進化する自治を構想する」パート1[全5回]

https://ucosaka.com/course_common_01/


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