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進化する自治を構想する 13「公共のあり方を再考する」

「シン・アーケード」が公共を問い直す

 伴年昌さんが生まれ育った、岡山県真庭市での商店街再生の話は、ご本人が言うとおり、画期的で、コモンの可能性を示す事例だと思います。アーケードのある古い商店街。これまでのような高いアーケードではなく、高さの低い2階程度のデッキのような通路をつくることで、新しい公共のスペースをつくる。新しくできた上部の通路は、下の道路と同じ公道の扱いで、アーケード設置と同じように利用許可を行政に申請するかたち。新しく作った通路は、アーケードと同様、共同体(ここでは商店街の構成員)が設置し管理する。自店舗の部分については、自身が使い道を考え、活用するのであれば、自費で作成・設置し管理する。公と共同体、個人がそれぞれの立場で、お互いに納得するルールづくりの上に新しいコモンをつくる、とというスタイルを提唱しようとしている。

 提唱しようとされている「シン・アーケード」は、新しい公共スペースをつくる。そのために新しいルールをつくり、新しい合意形成をつくるという話でもある。商店街に新しい住人が入ってきて、商店だけではない新しい共同体として再編成・再構築する必要が出てきた。共同体の再編成を目的としたことから、これまでのアーケード(商店街を形成した構成物)に代わる共同で管理・利用する「何か」が空中の回廊となった。それが公共スペースの再構築となり、まちづくりの起点となっていくという物語という解釈をしてみた。
 公共地をその土地の利用・関係者がどのように使うか、という話し合いが行われ、行政もその場に入ってルールづくりをする。それは行政主導ではなく、住民、市民による自治の獲得というようにも見える。

「昭和」の公共から21世紀のコモンへ

 建築の一番おもしろいところは、コモンをかたちで見せられるところにあって、それを見た人が「あぁ、こういうもんなんだな」と理解されやすいところが大きい。いまある公共の、従来から考えられているとあり方を、行政も含めてどれだけ新しい形に変えられるか、ということが求められる。戦後の建築のルールであったり、いろいろな法律に縛られていることで、現在のような街になってしまっているという、反省のもとに始めることが必要なのではないか。

 先週彦根に行った際、妙に既視感があって、どこかで見たことのある街並みだなと思った。考えていると、去年行った赤穂にそっくりだった。
歩道の幅と道路の幅、それから灯篭みたいなのが建っているという、空間のプロポーションが似ているとすごく似てしまう。確かなことではないけれども、何かの国の枠や助成金で街が整備された場合、制約の中で設計されるとそうなっしまうのではないか。すごく残念というか、もったいないというか。まちの個性が活かされないのを感じてしまう。

 今後の伴さんの「シン・アーケード」、また「つくらない保養所」それぞれ楽しみです。

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