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【雑感】誤診されてバラを育てるようになった話

おはようございます!

けさも福岡は雨。
きのうも雨だったけれど
きょうのほうが暖かいかな。

バラを育ててかれこれ20年ほどになる。
ドアを開けて外に出ると、まずバラのようすをたしかめる。
きのうは、葉っぱについていた水滴がきれいだった。
鉢植えだから、いちばんに心配になるのは
枯れていないかな、ということだ。

バラというのは
なんの理由もなく、いきなり枯れてしまうことがある。
病気で枯れることもある。
まるで人間みたいだと思う。
けれど、水切れで枯らしたことは
いままで一度もない、と思う。

バラを育てるようになったのは
落ち込んでいるぼくを見かねた友人から
育ててみないか、と持ちかけられたからだった。

関節リウマチを神経症と誤診された。
自己免疫疾患の膠原病ではないかと
その方面の医師のもとに行ったとき
膠原病ではないと言われた。

当時、会社に勤めていて
あまりの体調の悪さにもう会社を辞めると言ったぼくに
とても親切な先輩が
とにかく診断書をもらってきなさい、とアドバイスをくれた。
なんでもいいから、休職できる診断書を、と。

病気の診断がくだらなければ、診断書を書いてもらうなど不可能だ。
目の前が真っ暗になり、泣きだしたぼくに
いやむしろ、ぼくの背後に立っていた看護師に
あの医師はこう言い放ったのだ。

「この人、精神科に連れていって」

看護師はなぜか
「はい!」と元気に返事をして
ぼくの手を引いて歩きだした。
泣きながら、手を引かれながら
心のどこかでわりと冷静に
この手際の良さはなんだろうかと不思議に思っていた。

しばらくして気がついたのだが
当時の大人気ドラマのメインキャラクターのひとりが
難病という設定だった。
膠原病ではないか、という話になっていた、と思う。
ぼくのほかにも、膠原病ではないかといってやってくる人がいたのだろう。
ほんとうに膠原病だった人も、そうではない人も、いたのだろうけれど。

向精神薬というのは
必要な人には劇的に効く。
だがそうでない人にとっては、ただの毒だ。

不幸にして、ぼくは「そうでない人」だった。
関節リウマチは、もう少しくわしい病名は
膠原病グループ関節リウマチという。
だが当時の医療技術では診断がつかなかったはずだと
のちに関節リウマチの診断をくだしてくれた医師は話していた。

関節リウマチに向精神薬は効かない。
使うべきは、べつの薬だ。

だがとにかく当時は
関節リウマチからくる体調の悪さに加えて
向精神薬の副作用で身動きがとれなくなった。
精神科から休職の診断書を出してもらえはしたけれど
家に閉じこもって落ち込んでばかりいるぼくに
庭をオープンガーデンにしてバラを育てている友人が
声をかけてきのだ。

「星の王子さまみたいに
 バラを一本だけ育ててみるのも、すてきだと思うよ。
 やり方は教えるから」

たしか、こんな言葉だったと思う。
ぼくが『星の王子さま』が好きなのを見越して餌を投げてきたのだ。
バラの布教がライフワークの人だったから。

ぼくはまんまとひっかかった。
オンラインではあったけれど
友人は、手取り足取り教えてくれた。

バラの苗はここで買うように、とオンラインショップを教えてくれた。
植木鉢は10号のものを用意すること。
日当たりさえよければ、ベランダでもいい。午前中に日が当たれば大丈夫。
初心者には10月以降に出てくる大苗がいいのだけど
いまは6月だから新苗を買うように。
新苗は秋まで花を咲かせてはいけない。
だから、花芽がついたら上から5節目の葉の根元の5ミリ上を斜めに切ること。
水平に切れば雨水がたまって病気になるから。
アブラムシがついたらガムテープで退治せよ。
芋虫は箸でとるべし。
株の根元から大きな茎が生えてきたら
次の年に花を咲かせてくれるベーサルシュートだから
お祝いしていいことなんだよ。

そんな調子で、まる1年。
芽が出た、蕾がついた、なんか虫がついてる、白い粉があるんだけど
そんな、ほんとうにささいなことで大騒ぎをするぼくに
経験者ならではの知恵と余裕でたくさんのことを教えてくれた。

そしてある日、ちょっと入院してくるね、と言ったきり
連絡がとれなくなった。

ホームページと、メールアドレスしか知らない人だった。
電話番号もわからないし
もちろん住所も家族の連絡先も知らない。

どこかで元気にしているといいな、と思う。
そしてバラを育てていると、きっと
どこかで見ていてくれるよね、とも思うのだ。

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